TREE DOCTOR EXAM · SYSTEMATIC REFERENCE V6.0.1

各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存

収録11問。ワイド画面では左に問題、右に正答・解説を表示し、狭い画面では縦方向に読み進められます。

各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存

各問題のランク・深度は詳細分析の正本です。学習状態は明示的に選択してください。

各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存1|貴重な森林樹木の遺伝資源保存
AA深度III手引き 各論12章・1R5-27A|選択肢別判定型

01林木遺伝子銀行110番

問題

日本各地には、天然記念物等に指定された樹木や巨木、名木など地域のシンボル的な存在となっているものが多い。林木育種センターでは、これらの樹木が枯死の危機に瀕しているなどの理由で後継樹育成の緊急性が高い場合、苗木を増殖し所有者等に里帰りさせる「林木遺伝子銀行110番」という事業を行っている。この事業の説明のうち、正しいのはどれか。

  1. 所有者等の要請がない場合でも、公共性が高く特に緊急性が高いと判断された場合は、研究機関の判断でこの事業を行うことができる。
  2. 増殖は、もとの個体と同じ遺伝子を引き継ぐ必要性があることから、接ぎ木、挿し木といった無性繁殖による増殖法が主体となる。
  3. 天然記念物に指定されている樹木が対象となる場合、所有者の同意があり、かつ緊急性が高いと判断された時は、穂木の採取許可の手続きを採取作業の後に行うことができる。
  4. 老齢な樹木が自然枯死の危機に瀕している場合を対象としていることから、マツノザイセンチュウなどの病虫害により衰弱している樹木は事業の対象外である。
  5. 増殖した苗木は、所有権があるため全て所有者等に返却するのが原則である。
R5-27手引き 各論12章・1|貴重な森林樹木の遺伝資源保存
設問上の正解2

林木遺伝子銀行110番では、対象木と同じ遺伝子型を引き継ぐ後継樹を育てるため、接ぎ木・挿し木などの無性繁殖が主体となる。

  1. ×
    選択肢1

    事業は所有者等からの要請と後継樹育成の緊急性の判断に基づき、研究機関が所有者の意思を飛び越えて実施するものではない。

    要請、対象要件、所有者との調整を事業開始の前提として確認する。
  2. ○
    選択肢2

    接ぎ木・挿し木などの無性繁殖なら、原則として元の名木と同じ遺伝子型をもつクローンを育成できる。

  3. ×
    選択肢3

    天然記念物から穂木等を採取する場合、必要な現状変更等の許可は採取前に得なければならず、緊急性を理由に事後手続にはできない。

    所有者同意と文化財保護上の許可を事前に整えてから採取する。
  4. ×
    選択肢4

    病虫害による衰弱でも、後継樹育成の緊急性が高ければ事業対象になり得る。

    自然老衰だけに限定せず、枯死危機と増殖の必要性で判断する。
  5. ×
    選択肢5

    増殖苗をすべて所有者へ返却するとは限らず、系統保存・研究のため保存される場合がある。

    里帰り苗と、遺伝資源として保存する苗の役割を区別する。
基本解説

一本の名木と同じ遺伝子型を残すには、種子ではなく無性繁殖を用いる

種子は有性生殖で生じ、母樹と花粉親の遺伝子が組み換わるため、発芽した苗は元の名木と同一の遺伝子型にはなりません。接ぎ木、挿し木などの無性繁殖では、元の個体の体細胞から新しい個体を育てるため、原則として同じ遺伝子型をもつクローンを作れます。地域の象徴木の特徴を受け継ぐ後継樹を育てる林木遺伝子銀行110番では、この性質が必要です。

有性繁殖と無性繁殖
方法遺伝的結果後継樹育成での意味
種子繁殖遺伝子の組換えにより親と異なる種の多様性保全には重要だが、特定個体のコピーにはならない
接ぎ木・挿し木原則として元個体と同じ遺伝子型名木の形質を引き継ぐクローン増殖に適する
事業の手続と範囲
  • 所有者等からの要請と、後継樹育成の緊急性の判断に基づいて実施する。
  • 天然記念物から穂木等を採る場合、必要な現状変更等の許可を事前に得る。
  • 病虫害による衰弱でも、後継樹育成の緊急性が高ければ対象になり得る。
  • 増殖苗をすべて返却するとは限らず、系統保存・研究のために保存する場合がある。

樹木医の手引き 第4版 p.670 ES版 90-91頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
A深度IV手引き 各論12章・2H30-25B|全体整理型

02無花粉スギの遺伝

問題

近年、花粉症対策として様々な機関から「無花粉スギ」が創出されている。これらの無花粉スギの花粉を生産しないという性質は、劣性(潜性)遺伝する1対の遺伝子に支配されていることが明らかになってきている。劣性(潜性)遺伝子を2個持つスギ(無花粉スギ)と全く持たないスギを人工交配して子供個体を作り出し、それらの子供個体同士をさらに人工交配することで、新たな無花粉スギを作り出すことができるが、これらの新たな無花粉スギの出現頻度として、正しいのはどれか。

  1. 10%
  2. 25%
  3. 50%
  4. 75%
  5. 100%
H30-25手引き 各論12章・2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
設問上の正解2

正答は2、25%。無花粉を劣性ホモaa、正常ホモをAAとすると、子世代は全てAa。Aa同士の交配で孫はAA:Aa:aa=1:2:1となる。

基本解説

劣性形質の出現頻度は、親の表現型ではなく配偶子が運ぶ遺伝子を組み合わせて求める

一つの遺伝子座に、花粉をつくる優性遺伝子Aと、無花粉となる劣性遺伝子aがあるとします。無花粉になるにはaを両親から一つずつ受け取り、遺伝子型がaaになる必要があります。AAとAaは少なくとも一つAをもつため花粉をつくります。『劣性遺伝子をもつ』ことと『劣性形質が現れる』ことを区別するのが第一段階です。

親世代から孫世代まで
  1. 無花粉親はaaなので、配偶子にはaだけを渡す。
  2. 劣性遺伝子を全くもたない親はAAなので、配偶子にはAだけを渡す。
  3. aa×AAの子世代は全個体Aaとなり、花粉はつくるがaを保有する。
  4. 子世代Aa同士を交配すると、各親はAまたはaを1/2ずつ渡す。
  5. 孫世代はAA、Aa、Aa、aaの四通りが同確率で生じる。
Aa×Aaの組合せ
母親側\父親側Aa
AAA:花粉ありAa:花粉あり
aAa:花粉ありaa:無花粉
頻度
遺伝子型 AA:Aa:aa = 1:2:1
無花粉aa = 1/4 = 25%
花粉ありAA+Aa = 3/4 = 75%
問い方による答えの違い
  • 『無花粉個体』はaaだけなので25%。
  • 『劣性遺伝子aをもつ個体』ならAaとaaを合わせて75%。
  • 理論頻度は多数個体で期待される値で、少数の実測個体数は偶然にずれる。

樹木医の手引き 第4版 p.678 ES版 91-92頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
A深度III手引き 各論12章・2H30-26B|全体整理型

03林業種苗法と種苗の配布区域

問題

近年、樹木の遺伝的特性が地域によって異なることから、公園や街路樹用として植栽する樹種においても、広域な苗木の移動は制限すべきという考え方が広がってきているが、法的な規制は今のところ行われていない。林業用に使う一部の樹種においては、造林の適正かつ円滑な推進を図るため、林業種苗法により林業用種苗の配布区域が定められているものがある。次のうち、種苗の配布区域が定められている樹種の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. ブナ、スギ
  2. スギ、アカマツ
  3. アカマツ、カラマツ
  4. カラマツ、クヌギ
  5. クヌギ、ブナ
H30-26手引き 各論12章・2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
設問上の正解2

スギとアカマツは、林業用種苗について配布区域が定められる対象樹種に含まれる。

基本解説

種苗の地域性は、同じ樹種でも産地ごとに異なる適応をもつことから生じる

同じ樹種でも、長い世代を通じて地域の気温、降雪、乾燥、日長、病害などへ適応し、遺伝的特徴が異なる集団が形成されます。遠い地域の苗を移動すると、植栽地の環境に合わず活着・成長・耐寒性が低下する適応不全や、在来集団との交雑による遺伝的地域性の攪乱が起こり得ます。したがって植栽材料は樹種名だけでなく産地も重要です。

二つの運用を区別する
対象扱い
林業用種苗の一部樹種林業種苗法に基づき、造林成績などを守るため配布区域が定められる
公園・街路樹など一般の植栽地域性種苗を選ぶ考え方は重要だが、設問時点ですべてが同法の配布区域規制を受けるわけではない
本問で固定する対象樹種
  • スギは地域による品種・系統差が大きく、配布区域対象として覚える。
  • アカマツも配布区域が定められる対象樹種に含まれる。
  • ブナ、カラマツ、クヌギを混ぜた他の組は、本問の正しい二樹種組合せではない。

樹木医の手引き 第4版 p.678 ES版 91-92頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
A深度II手引き 各論12章・2R1-25B|全体整理型

04スギの在来品種

問題

林業のため山に植栽される樹木にも様々な品種が存在する。次のうち、スギの在来品種名のみの組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. サンブスギ、ナンゴウヒ、ボカスギ、メアサ
  2. アヤスギ、ツシママツ、ボカスギ、ヤブクグリ
  3. キリシママツ、サンブスギ、ナンゴウヒ、ボカスギ
  4. アヤスギ、サンブスギ、メアサ、ヤブクグリ
  5. ナンゴウヒ、ボカスギ、メアサ、ヤブクグリ
R1-25手引き 各論12章・2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
設問上の正解4

アヤスギ、サンブスギ、メアサ、ヤブクグリはいずれもスギの在来品種名である。

基本解説

スギ在来品種は、名称を地域群としてまとめる

整理表
スギ在来品種として覚える誤答を作る他樹種名
アヤスギ、サンブスギ、ボカスギ、メアサ、ヤブクグリなどナンゴウヒ、ツシママツ、キリシママツなど
試験で押さえる事項
  • 選択肢4は四つすべてがスギ。ボカスギもスギ品種だが、ボカスギを含む他肢には別樹種の名称が混ざる。
  • 組合せ問題は『正しい四語だけ』を覚えるのでなく、明確なマツ・ヒノキ系名称を除外点にする。
  • 在来品種は地域で選抜・維持され、成長、材質、発根性、病害感受性などが異なる。

樹木医の手引き 第4版 p.678 ES版 91-92頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
A深度IV手引き 各論12章・2R1-27B|全体整理型

05無花粉スギの遺伝

問題

近年、花粉症対策として様々な機関において「無花粉スギ」が創出されている。これらの無花粉スギの花粉を生産しないという性質は、劣性(潜性)遺伝する1対の遺伝子に支配されていることが明らかになってきている。劣性(潜性)遺伝子を2個持つスギ(無花粉スギ)と全く持たないスギを人工交配して子供個体を作り出し、それらの子供個体同士をさらに人工交配した孫世代で無花粉という性質を持つ個体が出現する。このような人工交配を行った場合、孫世代の(A)無花粉個体と、(B)無花粉でない個体の期待される出現割合として、正しいのはどれか。

  1. (A)3:(B)1
  2. (A)2:(B)1
  3. (A)1:(B)1
  4. (A)1:(B)2
  5. (A)1:(B)3
R1-27手引き 各論12章・2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
設問上の正解5

Aa同士の交配で無花粉aaは1/4、花粉ありAA・Aaは合計3/4。したがって無花粉:無花粉でない=1:3。

基本解説

遺伝子型比1:2:1を、問われた表現型の二群へ正しくまとめ直す

無花粉を劣性遺伝子型aa、花粉ありをAAまたはAaと置きます。最初の交配aa×AAでは、無花粉親はaだけ、正常ホモ親はAだけを配偶子へ入れるため、子世代は全てAaです。Aaはaを保有していてもAの働きで花粉をつくります。次にAa同士を交配すると、各親からAまたはaがそれぞれ1/2の確率で渡されます。

孫世代の遺伝子型から表現型へ
遺伝子型期待割合無花粉か
AA1/4花粉あり
Aa2/4花粉あり。aを保有
aa1/4無花粉
比を作る
  1. Aの無花粉個体はaaだけなので1/4。
  2. Bの無花粉でない個体はAAとAaを合計し、1/4+2/4=3/4。
  3. 両方を1/4で割ると、無花粉:無花粉でない=1:3。
  4. したがって選択肢5を選ぶ。
確率問題の読み違い
  • 『遺伝子をもつ』と『形質を示す』を区別する。
  • 遺伝子型比と表現型比のどちらを問うているかを確認する。
  • 期待比は確率であり、少数の子では必ず正確に1:3となるとは限らない。

樹木医の手引き 第4版 p.678 ES版 91-92頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
A深度III手引き 各論12章・2R3-27B|全体整理型

06樹木の遺伝的地域性

問題

樹木の遺伝的特性が地域によって異なることから、公園や街路樹用として植栽する樹種においても、広域な苗木の移動は制限すべきという考え方が広がってきているが、法的な規制は今のところ行われていない。林業用に使う樹種においては、造林の適正かつ円滑な推進を図るため、林業種苗法により林業用種苗の配布区域が定められている。次のうち、種苗の配布区域が定められている樹種の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. エゾマツ、ケヤキ
  2. クヌギ、エゾマツ
  3. スギ、エゾマツ
  4. カラマツ、コウヤマキ
  5. アカマツ、スギ
R3-27手引き 各論12章・2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
設問上の正解5

アカマツとスギはいずれも、林業用種苗の配布区域が定められている樹種に含まれる。

基本解説

配布区域の問題は、法定対象の固定ペアと制度が守る二つの価値を結び付ける

林業用種苗は、植えてから伐期まで長期間その土地で生育するため、産地と植栽地の適合が造林成績へ大きく影響します。林業種苗法の配布区域は、地域に適した種苗利用を促し、寒害・雪害・乾燥などへの適応不全を防ぐとともに、地域集団の遺伝的特性を無秩序な移動から守る意味をもちます。

本問の対象ペア
対象樹種覚え方
アカマツマツ類の対象としてスギと対にする
スギ地域品種・系統差と種苗移動管理を結び付ける
制度の範囲を広げ過ぎない
  • エゾマツ、ケヤキ、クヌギ、コウヤマキを含む肢は、本問の法定対象ペアではない。
  • 公園・街路樹で地域性種苗を選ぶ配慮は重要でも、すべてが林業種苗法の同じ規制を受けるわけではない。
  • 語順がスギ・アカマツでもアカマツ・スギでも、同じ二樹種として即答する。

樹木医の手引き 第4版 p.678 ES版 91-92頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
A深度IV手引き 各論12章・2R5-26B|全体整理型

07無花粉スギの遺伝

問題

スギ花粉症対策としてさまざまな機関から「無花粉スギ」が創り出され、植林用に使われるようになった。これらの無花粉スギの花粉を生産しないという性質は、劣性(潜性)遺伝する遺伝子が関与していることが明らかになってきている。劣性(潜性)遺伝子を2個もつスギ(無花粉スギ)と全くもたないスギを人工交配して子ども世代を作り出し、それらの子ども世代の個体どうしをさらに人工交配した孫世代で無花粉という性質をもつ個体が出現する。この孫世代が200個体ある場合、このうち無花粉個体の期待される個体数として、正しいのはどれか。

  1. 25個体
  2. 50個体
  3. 75個体
  4. 100個体
  5. 150個体
R5-26手引き 各論12章・2|樹木の遺伝、品種、種苗の流通
設問上の正解2

正答は2、50個体。孫世代で無花粉aaとなる期待割合は1/4なので、200×1/4=50。

基本解説

遺伝の確率を人数へ変えるときは、『交配図で割合を出す→最後に総数を掛ける』

無花粉となる劣性遺伝子をa、花粉をつくる優性遺伝子をAとします。無花粉スギはaa、劣性遺伝子を全くもたないスギはAAです。aa×AAでは、各子が無花粉親からa、正常親からAを一つずつ受け取るため、子世代は全てAaになります。Aaはaを保有しますが、優性のAがあるので花粉をつくります。

孫世代の無花粉割合
  1. 子世代Aaは、配偶子へAまたはaをそれぞれ1/2の確率で渡す。
  2. Aa×Aaの組合せはAA、Aa、Aa、aaの四通り。
  3. 無花粉になるのはaaだけなので、期待割合は1/4。
  4. 孫世代200個体に1/4を掛け、200×1/4=50個体。
  5. したがって選択肢2を選ぶ。
200個体の期待内訳
遺伝子型割合期待個体数表現型
AA1/450花粉あり
Aa1/2100花粉あり・aを保有
aa1/450無花粉
期待個体数
期待個体数 = 総個体数 × その表現型の確率
200 × 1/4 = 50個体
期待値の意味
  • 200個体なら実際に必ず50個体になるという保証ではなく、各個体が独立に1/4の確率で無花粉になる理論上の平均である。
  • 総個体数が多いほど観測割合は1/4付近になりやすいが、偶然変動は残る。
  • 『aをもつ個体』ならAa+aaで150個体だが、無花粉個体はaaの50個体だけである。

樹木医の手引き 第4版 p.678 ES版 91-92頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存3|後継樹の増殖
A深度II手引き 各論12章・3R1-24B|全体整理型

08挿し木

問題

挿し木は、樹木の無性繁殖技術として、一般に広く用いられている手法である。挿し木の成功率は、樹種によって異なるばかりでなく、同じ樹種でも樹齢、実施時期等によっても大きく異なることが知られている。挿し木増殖の難易度と、それに対応する樹種の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. 易:スギ 中:コウヤマキ 難:クロマツ
  2. 易:アカマツ 中:スギ 難:ヒノキ
  3. 易:ブナ 中:キリ 難:スズカケノキ
  4. 易:キリ 中:ブナ 難:トネリコ
  5. 易:ブナ 中:スギ 難:アカマツ
R1-24手引き 各論12章・3|後継樹の増殖
設問上の正解1

スギは挿し木容易、コウヤマキは中程度、クロマツは困難な樹種として整理する。

基本解説

挿し木難易度は、スギ易・コウヤマキ中・クロマツ難

整理表
難易度代表例実務上の含意
易スギ、スズカケノキなど挿し穂条件が適切なら発根しやすい
中コウヤマキなど時期・母樹齢・処理条件の影響が大きい
難アカマツ・クロマツ、カラマツ、ブナ等接ぎ木・実生など別法も検討
試験で押さえる事項
  • 同じ樹種でも若い母樹、適切な採穂時期、穂の部位、温湿度、発根促進処理で成功率が変わる。
  • 難易度は絶対値ではなく、標準的条件での相対的整理。

樹木医の手引き 第4版 p.681 ES版 92-93頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存3|後継樹の増殖
A深度III手引き 各論12章・3R3-26A|選択肢別判定型

09挿し木・接ぎ木・取り木

問題

樹木の無性繁殖法である「挿し木」、「接ぎ木」、「取り木」に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 挿し木は、同じ樹種であっても個体、挿し付けの時期、培地の種類が変わると発根が著しく異なることが知られている。一般に挿し木用の穂を採取した個体の樹齢が若いほど発根率が低くなる。
  2. アカマツやクロマツは、スギに比べ挿し木が容易であり、マツノザイセンチュウ抵抗性苗も主に挿し木で増殖されている。
  3. 挿し木、接ぎ木、取り木といった無性繁殖によって増やした個体は、元の個体と同じ遺伝的特性を受け継ぐことから、巨樹や名木などの後継樹を養成する場合にはよく用いられている方法である。
  4. 接ぎ木は、同じ樹種で同じ樹齢であれば、穂木の採取時期、接ぎ木の時期、接ぎ木の方法が変わっても、活着率はほとんど変わらない。
  5. 取り木は、空中取り木が一般に行われており、剥皮した部分から発根するので、この部分に湿った水苔等をまき付け、十分に日光が当たるように透明なビニールシート等で密封する必要がある。
R3-26手引き 各論12章・3|後継樹の増殖
設問上の正解3

挿し木、接ぎ木、取り木はいずれも無性繁殖で、親木の遺伝的特性を保った後継樹育成に用いられる。

  1. ×
    選択肢1

    挿し木の発根性は個体・時期・培地で変わるが、一般に母樹が若いほど発根しやすく、老齢化で発根能が低下する。

    前半の正しい条件列挙に惑わされず、母樹齢と発根率の方向を逆にしない。
  2. ×
    選択肢2

    アカマツ・クロマツはスギより挿し木が容易とはいえず、マツノザイセンチュウ抵抗性苗の増殖を挿し木だけに限定できない。

    樹種ごとの発根難易度と、採種・接ぎ木等を含む増殖体系を分ける。
  3. ○
    選択肢3

    挿し木・接ぎ木・取り木は無性繁殖で、原則として元の個体と同じ遺伝的特性を受け継ぐため、巨樹・名木の後継樹育成に用いられる。

  4. ×
    選択肢4

    接ぎ木の活着率は、採穂・接ぎ時期、接合法、台木と穂木の親和性、乾燥防止等によって変化する。

    樹種と樹齢が同じでも施工条件と管理が活着を左右する。
  5. ×
    選択肢5

    空中取り木では剝皮部を湿った水苔等で保湿するが、発根部へ光合成を促す必要はなく、乾燥防止と遮光が重要である。

    被覆材は保湿し、必要に応じて遮光できるものを用いる。
基本解説

無性繁殖は親の遺伝的特性を保つが、方法ごとに発根・活着の仕組みが異なる

挿し木、接ぎ木、取り木は、種子を経ずに枝や根などの栄養器官から個体を増やす無性繁殖です。遺伝子の組換えを伴わないため、原則として元の個体と同じ遺伝子型をもつクローンが得られます。巨樹・名木の特定形質を引き継ぐ後継樹、優良品種の増殖などに使われます。ただし、同じ遺伝子型を保つことと、どの方法でも容易に増やせることは別です。

三つの無性繁殖法
方法基本操作成功を左右する条件
挿し木親木から切り離した枝・根・葉に不定根や芽を形成させる母樹の若さ、採穂時期、穂の部位、培地、水分、樹種
接ぎ木穂木と台木の形成層を合わせ、癒合させる親和性、採穂・接ぎ時期、接合法、乾燥防止
取り木親木につながった枝で発根させ、発根後に切り離す環状剥皮、湿度、通気、遮光、処理時期
各誤答を直す
  • 挿し穂の母樹は一般に若いほど発根しやすく、老齢化で発根能が低下することがある。
  • アカマツ・クロマツはスギより挿し木が容易とはいえず、抵抗性苗の増殖を挿し木だけに限定しない。
  • 接ぎ木の活着率は時期・方法・台木と穂木の親和性・管理で変わる。
  • 空中取り木の発根部は湿った水苔などで保湿し、光合成させる場所ではないため遮光も考える。

樹木医の手引き 第4版 p.681 ES版 92-93頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存3|後継樹の増殖
A深度III手引き 各論12章・3R4-27A|選択肢別判定型

10取り木

問題

樹木の無性繁殖法には、「挿し木」や「接ぎ木」のほかに「取り木」と呼ばれている方法がある。一般的な取り木の方法に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 取り木による増殖は、一般に地面近くの枝を下方に曲げてその枝の上に土を覆って発根を促す「伏せ取り法」を指す場合が多い。
  2. 取り木の剥皮の適期は、樹木の成長が休止している冬期である。
  3. 取り木する部分のすぐ下側の全周を剥皮すると枯れてしまうため、一部分のみを剥皮する。
  4. 発根を促すため、剥皮した部分に水で湿らせた水苔などを巻き付ける。
  5. 剥皮した部分をビニール等の光を透す素材で密封し、光合成を促す。
R4-27手引き 各論12章・3|後継樹の増殖
設問上の正解4

一般的な空中取り木では、枝を環状剥皮し、湿らせた水苔などを巻いて乾燥を防ぎ、発根後に親木から切り離す。

  1. ×
    選択肢1

    伏せ取り法は取り木の一種だが、一般的な取り木全体を地面近くの枝を伏せる方法だけに限定できない。空中取り木も広く用いられる。

    伏せ取りと空中取り木を、親木につながったまま発根させる方法群として整理する。
  2. ×
    選択肢2

    取り木は発根活動を期待できる生育期に行い、成長が休止する冬を一律の適期とはしない。

    樹種と気候に応じ、新根形成に必要な温度と期間を確保する。
  3. ×
    選択肢3

    環状剝皮は師部の下降流を遮断するため、樹皮と形成層を全周にわたり帯状に除く。部分剝皮では師部連絡が残る。

    木部を残して水の上昇を保ち、師部のみ全周で遮断する。
  4. ○
    選択肢4

    剝皮部へ水で湿らせた水苔等を巻くと、乾燥を防ぎ、不定根形成に必要な湿潤環境を保てる。

  5. ×
    選択肢5

    剝皮部は光合成させる部位ではなく、透明材で光を当てることを目的としない。保湿と遮光を優先する。

    湿潤を保ち、必要に応じて遮光できる被覆で発根部を保護する。
基本解説

取り木は、親木につながったまま糖と水を受けながら剥皮部へ新根をつくらせる

取り木は、枝を親木から切り離す前に発根させる無性繁殖法です。一般的な空中取り木では枝を環状剥皮し、師部の下降流を遮断します。葉でつくられた糖や芽・葉由来のオーキシンが剥皮部の上側へ蓄積する一方、木部は残るため親木からの水供給を受けられます。この状態で剥皮部を湿潤に保つと不定根が形成され、十分に発根してから切り離します。

空中取り木の手順
発根能力のある生育期に枝を選ぶ樹皮と形成層を全周にわたり帯状に除去する剥皮部へ湿らせた水苔などを巻く乾燥を防ぎつつ、発根部を必要に応じて遮光する根が十分伸びてから親枝を切り、養生する
選択肢の誤りを区別する
論点正しい整理
伏せ取り法地面近くの枝を土へ伏せる取り木法の一種で、取り木全体をそれだけに限定しない
処理時期発根活動を期待できる時期を選び、成長休止中の冬を一律適期としない
剥皮範囲師部連絡を断つため全周を環状に処理する。部分剥皮だけでは効果が弱い
被覆材透明材で光合成を促すのではなく、保湿と遮光を重視する

樹木医の手引き 第4版 p.681 ES版 92-93頁

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各論 第12章 後継樹の育成と遺伝子保存3|後継樹の増殖
A深度II手引き 各論12章・3R5-25B|全体整理型

11挿し木の難易度と樹種

問題

挿し木は、樹木の無性繁殖技術として、一般に広く用いられている手法である。次は挿し木に関する記述であるが、本文のA~Dの空欄を埋める樹種の組み合わせとして、正しいのはどれか。
挿し木の成功率は、樹種によって異なるばかりでなく、同じ樹種でも樹齢、実施時期等によっても大きく異なることが知られている。挿し木の容易な針葉樹として[A]、広葉樹として[B]などがあり、困難な針葉樹として[C]、広葉樹として[D]などがある。

  1. (A)スギ (B)クリ (C)アカマツ (D)キョウチクトウ
  2. (A)カラマツ (B)スズカケノキ (C)クロマツ (D)トネリコ
  3. (A)スギ (B)スズカケノキ (C)カラマツ (D)ユリノキ
  4. (A)メタセコイア (B)クリ (C)アカマツ (D)ハリギリ
  5. (A)カラマツ (B)キョウチクトウ (C)スギ (D)ユリノキ
R5-25手引き 各論12章・3|後継樹の増殖
設問上の正解3

容易な針葉樹はスギ、容易な広葉樹はスズカケノキ、困難な針葉樹はカラマツ、困難な広葉樹はユリノキである。

基本解説

挿し木の易・難を、針葉樹と広葉樹で一組にする

整理表
区分本問の樹種
挿し木容易・針葉樹スギ
挿し木容易・広葉樹スズカケノキ
挿し木困難・針葉樹カラマツ
挿し木困難・広葉樹ユリノキ
試験で押さえる事項
  • クリは容易な広葉樹として扱わず、キョウチクトウは比較的発根しやすい側。
  • 挿し木困難種でも、幼若化、ミスト、底温、発根促進剤、採穂時期で改善する場合がある。
  • 親木と同じ遺伝子型を得たいのか、多様な実生を得たいのかで繁殖法を選ぶ。

樹木医の手引き 第4版 p.681 ES版 92-93頁

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