TREE DOCTOR EXAM · SYSTEMATIC REFERENCE V6.0.1

各論 第4章 樹木・樹林の生態

収録19問。ワイド画面では左に問題、右に正答・解説を表示し、狭い画面では縦方向に読み進められます。

各論 第4章 樹木・樹林の生態

各問題のランク・深度は詳細分析の正本です。学習状態は明示的に選択してください。

各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・1|森林生態系
C深度III手引き 各論4章・1節・1H30-03A|選択肢別判定型

01森林の物質循環

問題

森林の物質循環に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 細菌・菌類などの分解者によって、有機化合物は主に窒素ガスと二酸化炭素に分解される。
  2. 植物は光合成によって、水と二酸化炭素から有機化合物と酸素を合成する。
  3. 植物はアミノ酸など有機窒素化合物を合成するために、大気中から窒素ガスを吸収する。
  4. 動物は呼吸によって酸素を取り込み二酸化炭素を排出するが、植物は呼吸によって二酸化炭素を排出しない。
  5. 動物は、食物として有機化合物をすべて摂食するので、体内で合成しない。
H30-03手引き 各論4章・1節・1|森林生態系
設問上の正解2

植物は光エネルギーを使い、水とCO₂から有機物を合成し、酸素を放出する。これは森林の炭素循環の入口である。

  1. ×
    選択肢1

    分解者は有機物を主にCO₂、水、アンモニウムなどへ変える。窒素が主として窒素ガスになるわけではない。

    炭素の無機化と窒素の無機化・硝化・脱窒を分けて理解する。
  2. ○
    選択肢2

    植物は光エネルギーを使い、水とCO₂から有機化合物を合成し、光反応に伴って酸素を放出する。

  3. ×
    選択肢3

    一般の植物は大気中の窒素ガスを直接吸収できず、主に硝酸イオンやアンモニウムイオンを根から吸収する。

    窒素固定生物がN₂を利用可能な形へ変える過程を経る。
  4. ×
    選択肢4

    植物もミトコンドリアで昼夜を通じて呼吸し、酸素を消費してCO₂を放出する。

    昼間は光合成によるCO₂吸収が呼吸放出を上回りやすいだけで、呼吸が止まるわけではない。
  5. ×
    選択肢5

    動物は摂取した栄養素を分解・再構成し、体内で多様な有機化合物を合成する。

    食物中の有機物を全て完成品として得るのではなく、代謝により必要物質へ変換する。
基本解説

森林の物質循環は、炭素と窒素を別の経路として描いてから結び付ける

物質循環とは、炭素や窒素などの元素が、大気・植物・動物・土壌・微生物の間を形を変えながら移ることです。光合成は大気中の二酸化炭素の炭素を有機物へ取り込む入口であり、呼吸と分解は有機物の炭素を二酸化炭素へ戻します。窒素は別の化学形態をたどるので、炭素循環の説明へ窒素ガスを安易に混ぜないことが重要です。

炭素と窒素の基本的な流れ
元素植物への主な入口生態系内の移動再利用できる形への変化
炭素葉が大気中CO₂を光合成で固定有機物として植物体、動物、落葉・枯死物へ呼吸・分解で主にCO₂へ戻る
窒素多くの植物は根から硝酸イオンやアンモニウムイオンを吸収アミノ酸やタンパク質などとして生物体・有機物へ分解・無機化でアンモニウムなどへ戻る
選択肢を直す
  • 植物は水と二酸化炭素から有機化合物を合成し、光反応に伴って酸素を放出するため、選択肢2が正しい。
  • 分解者が有機物を分解した主な炭素産物は二酸化炭素であり、窒素が常に窒素ガスになるわけではない。
  • 一般の植物は大気中の窒素ガスを直接吸収できず、窒素固定生物などが利用可能な形へ変える過程が必要である。
  • 植物も動物と同様に呼吸し、二酸化炭素を放出する。

樹木医の手引き 第4版 p.156 ES版 39-40頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・1|森林生態系
B深度III手引き 各論4章・1節・1H30-09B|全体整理型

02食物連鎖と個体数変動

問題

近年、日本の一部の地域で、120年に一度といわれるスズタケ(ササ類の一種)の一斉開花・結実・枯死が見られている。文献によれば、その実を食べて野ネズミが異常発生すると考えられる。この地域に生息する動物の食物連鎖のピラミッド(A~D)において、野ネズミがC、その下位にD、上位にAとBの動物種が含まれると仮定した場合、次のうち、A~Dの数がCの異常発生(増加)前の状態に戻る過程として、正しいのはどれか。

  1. (C増加)→D増加・B減少→C減少・A増加→D増加・B減少→A増加
  2. (C増加)→D減少・B増加→C増加・A減少→D増加・B減少→A増加
  3. (C増加)→D減少・B増加→C減少・A増加→D減少・B増加→A増加
  4. (C増加)→D増加・B減少→C増加・A減少→D減少・B増加→A減少
  5. (C増加)→D減少・B増加→C減少・A増加→D増加・B減少→A減少
H30-09手引き 各論4章・1節・1|森林生態系
設問上の正解5

DはCの餌、CはBの餌、BはAの餌なので、食物の流れはD→C→B→A。Cが急増した直後、Dは食べられて減り、Bは餌が増えて増加する。

基本解説

個体群の増減は、餌と捕食者の変化が時間差で伝わる連鎖として追う

食物連鎖の矢印を『食べる側→食べられる側』と曖昧に覚えると、増減を逆にします。この問題では、エネルギーや食物が移る向きでD→C→B→Aと置きます。DをCが食べ、CをBが食べ、BをAが食べる関係です。ある段階の個体数が急増すると、すぐ下位には摂食圧が増え、すぐ上位には餌が増えるという二方向の影響が生じます。

Cである野ネズミが異常増加した後
スズタケの実が大量供給され、Cが増加するCに多く食べられるDが減り、Cを餌にするBが増える餌Dの不足と捕食者Bの増加によってCが減るCの摂食圧が弱まりDが回復し、餌不足でBは減るBを餌とするAも時間差で減少し、元の状態へ近づく
動態問題の読み方
  • 全栄養段階が同時に同じ方向へ動くのではなく、繁殖や死亡を介して変化が遅れて伝わる。
  • 最初の一段で、Cが増えた直後にD増加・B減少とする選択肢は除外できる。
  • 個体数が戻る過程には振動や環境条件も関わるが、本問では単純化された食物連鎖モデルで順序を追う。

樹木医の手引き 第4版 p.156 ES版 39-40頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・1|森林生態系
B深度IV手引き 各論4章・1節・1R1-08B|全体整理型

03鳥の個体数増加

問題

ある一夫一妻制の鳥を、ケージ内で成体(1歳)1ペアから飼育を始めた。雌は1歳から2歳まで、毎年、初夏に4個ずつ産卵する。したがって、飼育1年目のこの時期に、最初の雌1羽による4個の卵が産まれる。卵は当年の晩秋までに成体となり、性比は1:1である。翌年、この新しい成体は、初春に兄弟姉妹でペアとなり、正常に繁殖する。この鳥の死亡要因はない。以上の条件において、飼育4年目の初夏における総産卵数として、正しいのはどれか。

  1. 32個
  2. 88個
  3. 96個
  4. 108個
  5. 138個
R1-08手引き 各論4章・1節・1|森林生態系
設問上の正解2

正答は2、88個。総個体数ではなく、その年に1歳または2歳である雌の数を世代別に管理する。

基本解説

個体数を一括で増やさず、『その年に繁殖できる年齢の雌』だけを世代別に追跡する

繁殖計算では、総個体数へ一定倍率を掛ける方法は使えません。本問では雌だけが産卵し、産卵できるのは1歳と2歳の二年間だけだからです。各年に何羽の1歳雌と2歳雌がいるかを別々に管理し、その合計に1羽当たり4個を掛けます。卵の半分が雌になるため、その年の産卵数÷2が翌年の新しい1歳雌になります。死亡はなくても、3歳以上の雌は生存するだけで産卵数には加えません。

年ごとの更新規則
その年の産卵雌数 = 1歳雌数 + 2歳雌数
その年の総産卵数 = 産卵雌数 × 4個
翌年の1歳雌数 = その年の総産卵数 × 1/2
翌年の2歳雌数 = その年の1歳雌数
4年目までの世代別計算
年1歳雌2歳雌産卵する雌の合計総産卵数
1年目開始時1011×4=4個
2年目1年目の卵から2開始時の雌133×4=12個
3年目2年目の卵から61年目生まれ288×4=32個
4年目3年目の卵から162年目生まれ62222×4=88個

一夫一妻制という条件は、繁殖する雌と同数の雄が必要という意味です。本問では毎年の性比が1対1なので、新しく生じる雌と同数の雄が生じ、ペア不足は起こりません。この条件を確認した上で、雌数だけを計算表へ載せられます。

誤算を防ぐチェック
  • 前年の卵すべてを翌年の産卵個体にせず、性比1対1で雌を半数にする。
  • 2歳だった雌は翌年3歳になるので、死亡しなくても産卵群から外す。
  • 各行で『1歳+2歳=産卵雌』『産卵雌×4=卵』を再確認する。

樹木医の手引き 第4版 p.156 ES版 39-40頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・2|樹木と森林の構造
B深度II手引き 各論4章・1節・2R5-02B|全体整理型

04森林の階層構造

問題

森林には階層構造が発達する。次のA~Dは、関東南部の暖温帯林を構成する樹種のグループである。このA~Dを上層から下層へ並べたものとして、正しいのはどれか。
A:アオキ、ヒサカキ、ヤマツツジ
B:アカガシ、ウラジロガシ、スダジイ
C:サカキ、シロダモ、ヤブツバキ
D:フユイチゴ、マンリョウ、ヤブコウジ

  1. B→A→C→D
  2. B→C→A→D
  3. B→C→D→A
  4. C→B→A→D
  5. C→D→B→A
R5-02手引き 各論4章・1節・2|樹木と森林の構造
設問上の正解2

B=高木層、C=亜高木層、A=低木層、D=林床層なので、上からB→C→A→Dとなる。

基本解説

樹種群を成木時の高さへ置き換える

整理表
階層この問題の樹種群役割
高木層アカガシ、ウラジロガシ、スダジイ林冠を形成する。
亜高木層サカキ、シロダモ、ヤブツバキ林冠直下を構成する。
低木層アオキ、ヒサカキ、ヤマツツジ数m程度の下層を構成する。
林床層フユイチゴ、マンリョウ、ヤブコウジ地表近くを覆う。
用語を押さえる
林冠
森林上部で、高木の樹冠が連続して形成する層。
階層構造
高さの異なる植物群が垂直方向に層をつくる森林構造。

樹木医の手引き 第4版 p.158 ES版 40-41頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・2|樹木と森林の構造
B深度III手引き 各論4章・1節・2R5-03B|全体整理型

05森林の立木密度

問題

次は、森林の立木密度に関する記述であるが、文中のA~Cの空欄を埋める数値の組み合わせとして、正しいのはどれか。
スギの苗木を[A]間隔の格子状に植えると、密度は2,500本/haとなる。すべての植栽木が成長したと仮定し、3列を残して2列を伐採する3残2伐の列状間伐を行うと、スギの密度は[B]となる。また、この密度のスギ林が4haあるとすると、間伐後のスギの総本数は[C]となる。

  1. (A)2m (B)1,000本/ha (C)4,000本
  2. (A)2m (B)1,500本/ha (C)4,000本
  3. (A)2m (B)1,500本/ha (C)6,000本
  4. (A)4m (B)1,000本/ha (C)4,000本
  5. (A)4m (B)1,500本/ha (C)6,000本
R5-03手引き 各論4章・1節・2|樹木と森林の構造
設問上の正解3

A=2m、B=1,500本/ha、C=6,000本。数値を一つずつ独立して出してから組合せを選ぶ。

基本解説

立木密度の計算は、『1本当たり面積・残存率・林分面積』を順に処理する

立木密度は1ha当たり何本あるかを表します。1haは10,000m²です。正方形の格子で植える場合、植栽間隔をa mとすると1本が占める面積はa²m²なので、密度は10,000÷a²本/haになります。間伐後はこの密度に残す割合を掛け、最後に林分全体の面積を掛けて総本数を出します。三つの単位を一度に混ぜないことが重要です。

A~Cを一つずつ求める
  1. A:10,000m²÷2,500本=1本当たり4m²。正方格子の一辺は√4=2m。
  2. B:3残2伐は5列のうち3列を残すので、残存率は3/5。2,500×3/5=1,500本/ha。
  3. C:1,500本/haの林が4haあるので、1,500×4=6,000本。
  4. A=2m、B=1,500本/ha、C=6,000本を含む選択肢3を選ぶ。
類題へ使う式
正方格子の植栽密度(本/ha)=10,000÷植栽間隔²
間伐後密度=間伐前密度×残存率
総本数=密度(本/ha)×面積(ha)

樹木医の手引き 第4版 p.158 ES版 40-41頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・3|森林タイプの区分
B深度III手引き 各論4章・1節・3H30-14B|全体整理型

06太平洋側・日本海側の地域分化

問題

日本は太平洋側と日本海側では気候が大きく異なり、この気候に対応した樹種の分化が見られる。次のうち、太平洋側と日本海側の近縁種の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. 太平洋側:ユズリハ 日本海側:ヒメユズリハ
  2. 太平洋側:カヤ 日本海側:イヌガヤ
  3. 太平洋側:クロモジ 日本海側:ヒメクロモジ
  4. 太平洋側:イヌツゲ 日本海側:ハイイヌツゲ
  5. 太平洋側:モチノキ 日本海側:クロガネモチ
H30-14手引き 各論4章・1節・3|森林タイプの区分
設問上の正解4

太平洋側のイヌツゲに対し、日本海側にはハイイヌツゲが対応する。ハイイヌツゲは積雪下でも生き残りやすい低い樹形をとる。

基本解説

日本海側型の樹木は、冬の多雪環境という選択圧から理解する

日本列島では、冬の季節風が日本海から水蒸気を運び、日本海側の山地へ多量の雪を降らせます。積雪は低温を和らげる面もありますが、枝や幹を長期間押さえつける雪圧、雪解けの遅れ、短い生育期間などの条件を生みます。近縁な樹木でも、こうした環境に適した低い樹形、地をはうような枝、しなやかさなどが日本海側型にみられることがあります。

本問で覚える地域対応
太平洋側日本海側環境との結び付き
イヌツゲハイイヌツゲハイイヌツゲの低く伏す樹形を多雪・雪圧への適応と結び付ける
名称だけで選ばない
  • 『ヒメ』『イヌ』など和名の大小・類似を、太平洋側と日本海側の対応関係と決めつけない。
  • 選択肢の二種が近縁に見えても、実際の分布と多雪適応の組合せを確認する。
  • この設問ではイヌツゲ―ハイイヌツゲの組だけが正しい。

樹木医の手引き 第4版 p.160 ES版 41-42頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・3|森林タイプの区分
B深度II手引き 各論4章・1節・3H30-28B|全体整理型

07ブラキストン線と天然分布

問題

生物の天然分布を制限する要因の一つとして、高い山脈や海峡等の地理的要因が挙げられる。北海道と本州を隔てる津軽海峡は最も狭い部分でも18km以上あり、生物分布の境界線であるブラキストン線が設定されている。次のうち、ブラキストン線が天然分布の境界となっている樹種として、正しいのはどれか。

  1. ブナ
  2. ミズナラ
  3. ケヤキ
  4. シラカンバ
  5. オニグルミ
H30-28手引き 各論4章・1節・3|森林タイプの区分
設問上の正解3

選択肢3。ケヤキは北海道へ天然分布せず、津軽海峡を挟むブラキストン線が天然分布の境界になる。

基本解説

天然分布と植栽分布を分け、北海道まで自然分布するかを確認する

ブラキストン線は北海道と本州の間、津軽海峡に置かれる生物地理境界である。本問では各樹種が北海道まで天然分布するかを比較する。街路樹や庭木として植えられている場所は、天然分布の証拠にならない。

樹種北海道の天然分布判定
ケヤキないブラキストン線が境界
ブナ・ミズナラ・シラカンバ・オニグルミある本問の境界種ではない
分布境界を生む要因

分布限界は現在の気温だけで決まらない。過去の地史、海峡による移動制限、種子散布能力、更新に必要な環境が重なった結果として現れる。

樹木医の手引き 第4版 p.160 ES版 41-42頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・3|森林タイプの区分
B深度III手引き 各論4章・1節・3R1-01B|全体整理型

08樹種・気候帯・常緑落葉

問題

次のうち、(A)樹種、(B)主な分布域の気候帯、(C)常緑・落葉性の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. (A)エゾマツ・カラマツ (B)亜寒帯 (C)常緑性
  2. (A)タブノキ・ブナ (B)冷温帯 (C)落葉性
  3. (A)アカメガシワ・カラスザンショウ (B)暖温帯 (C)落葉性
  4. (A)ナツツバキ・ヤブツバキ (B)暖温帯 (C)常緑性
  5. (A)アコウ・ハゼノキ (B)亜熱帯 (C)常緑性
R1-01手引き 各論4章・1節・3|森林タイプの区分
設問上の正解3

アカメガシワとカラスザンショウは暖温帯に多い先駆性の落葉広葉樹である。

基本解説

樹種問題は、『気候帯』と『常緑・落葉』を別の二軸で照合する

日本の植生は、低緯度・低標高の暖かい地域から、高緯度・高標高の寒い地域へ、おおまかに亜熱帯、暖温帯、冷温帯、亜寒帯へ移ります。しかし、ある気候帯の樹木がすべて常緑またはすべて落葉になるわけではありません。常緑・落葉は葉を何年保つかという性質で、気候帯とは関連しつつも別の判定項目です。本問は、二樹種の分布帯と葉の性質をそれぞれ確認する問題です。

各組合せのどこが合わないか
樹種群気候帯・葉性の整理判定
エゾマツ・カラマツ亜寒帯系だが、エゾマツは常緑、カラマツは落葉針葉樹葉性がそろわない
タブノキ・ブナタブノキは暖温帯の常緑、ブナは冷温帯の落葉気候帯も葉性もそろわない
アカメガシワ・カラスザンショウ暖温帯に多い落葉性の先駆樹種正しい
ナツツバキ・ヤブツバキナツツバキは落葉、ヤブツバキは常緑葉性がそろわない
アコウ・ハゼノキアコウは常緑、ハゼノキは落葉葉性がそろわない
二軸照合の手順
  1. まず各樹種が主にどの気候帯へ分布するかを確認する。
  2. 次に、それぞれが常緑か落葉かを独立に確認する。
  3. 一つの選択肢に二樹種あるため、二種×二軸の四項目がすべて一致するものだけを残す。

樹木医の手引き 第4版 p.160 ES版 41-42頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・3|森林タイプの区分
B深度II手引き 各論4章・1節・3R1-26B|全体整理型

09樹木の天然分布北限

問題

樹木の天然分布は、気温や降水量といった気候的要因、高い山脈や海峡といった地形的要因等によって規定されているといわれている。次のわが国を代表する樹種のうち、最も北まで天然分布しているものとして、正しいのはどれか。

  1. スギ
  2. ヒノキ
  3. クロマツ
  4. ブナ
  5. シラカンバ
R1-26手引き 各論4章・1節・3|森林タイプの区分
設問上の正解5

シラカンバは北海道にも広く天然分布し、本問の候補中で最も北まで達する。

基本解説

北限比較は、北海道で普通に見られる樹種を先に探す

試験で押さえる事項
  • スギの天然分布北限は本州北部で、北海道のスギ林は基本的に植栽として考える。
  • ヒノキとクロマツはシラカンバほど北へ天然分布しない。
  • ブナは北海道南西部まで達するが、シラカンバはさらに北・寒冷域へ広がる。

樹木医の手引き 第4版 p.160 ES版 41-42頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・3|森林タイプの区分
B深度III手引き 各論4章・1節・3R3-12B|全体整理型

10太平洋側・日本海側の地域分化

問題

日本は太平洋側と日本海側では気候が大きく異なり、この気候に対応して近縁の樹木が生育している。次のうち、太平洋側と日本海側の樹木の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. 太平洋側:モミ 日本海側:ウラジロモミ
  2. 太平洋側:ヤシャブシ 日本海側:オオバヤシャブシ
  3. 太平洋側:ヤマアジサイ 日本海側:タマアジサイ
  4. 太平洋側:マンサク 日本海側:マルバマンサク
  5. 太平洋側:コブシ 日本海側:シデコブシ
R3-12手引き 各論4章・1節・3|森林タイプの区分
設問上の正解4

マンサクに対し、日本海側の多雪地にはマルバマンサクが分布する。葉形や枝の性質などの地域分化を、冬季積雪環境と結び付けて覚える。

基本解説

近縁種の地域分化は、冬の積雪条件と分布を一組にして覚える

太平洋側と日本海側では、特に冬の降水の形と量が異なります。日本海側の多雪地では、長期間の積雪、枝への雪圧、雪解けの遅れなどが樹木の生存と繁殖へ影響します。近縁な植物でも、こうした環境差の中で分布や形態が分かれることがあります。本問で問われるのは、名前が似た二種ではなく、太平洋側型と日本海側型として実際に対応する組です。

正しい地域対応
太平洋側日本海側学習上の結び付き
マンサクマルバマンサクマルバマンサクを日本海側の多雪地に分布する近縁群として対応させる
他の選択肢を切る考え方
  • モミとウラジロモミは主に標高などの分布差をもつが、本問の海側対応ではない。
  • ヤマアジサイとタマアジサイ、コブシとシデコブシも、名前や近縁性だけで日本海側型の対とはいえない。
  • 地域型は、樹種名・実際の分布・環境要因の三つを同時に保持する。

樹木医の手引き 第4版 p.160 ES版 41-42頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・3|森林タイプの区分
B深度IV手引き 各論4章・1節・3R4-04B|全体整理型

11ケッペンの気候区分

問題

次は、我が国の森林と気候に関する記述であるが、文中のA~Cの空欄を埋める割合の組み合わせとして、正しいのはどれか。
ケッペンの気候区分においては、まず、[A]未満は、寒帯とする。次に、[A]以上で乾燥限界値(r)が年降水量(mm)より大きいと乾燥帯とする。寒帯でも乾燥帯でもないその他の地域において、[B]以上は熱帯、[B]未満で[C]以上は温帯、[C]未満は亜寒帯とする。
なお、乾燥限界値(r)は、年平均気温(T℃)を用いて、以下の計算式で算出する。
年中多雨地方 r=2×(T+7)
夏雨地方 r=2×(T+14)
冬雨地方 r=2×T

  1. (A)最寒月平均気温が-24℃ (B)最寒月平均気温が18℃ (C)最寒月平均気温が-3℃
  2. (A)最寒月平均気温が-24℃ (B)最暖月平均気温が26℃ (C)最暖月平均気温が18℃
  3. (A)最寒月平均気温が-24℃ (B)最寒月平均気温が18℃ (C)最暖月平均気温が18℃
  4. (A)最暖月平均気温が10℃ (B)最寒月平均気温が18℃ (C)最寒月平均気温が-3℃
  5. (A)最暖月平均気温が10℃ (B)最暖月平均気温が26℃ (C)最暖月平均気温が18℃
R4-04手引き 各論4章・1節・3|森林タイプの区分
設問上の正解4

最暖月平均気温10℃未満を寒帯とし、寒帯・乾燥帯でない地域では、最寒月平均気温18℃以上が熱帯、18℃未満かつ-3℃以上が温帯、-3℃未満が亜寒帯となる。

基本解説

ケッペンの気候区分は、三つの温度を同時に覚えず『判定の順番』で理解する

ケッペンの気候区分は、植生と関係の深い気温・降水量を使って気候を分類する体系です。本問では、日本に関係する大区分を決定木として読めるかが問われています。重要なのは、すべての地域を一つの温度だけで分けるのではなく、まず寒帯を最暖月で判定し、次に乾燥帯を降水量で判定し、そのどちらでもない地域を最寒月で熱帯・温帯・亜寒帯へ分ける順序です。判定に使う月を入れ替えた選択肢が典型的な誤答です。

設問の定義による判定順序
  1. 最暖月平均気温が10℃未満なら寒帯とする。最も暖かい月でも樹木の成長に必要な暖かさへ届かない、という意味である。
  2. 寒帯でなく、年降水量が乾燥限界値より少なければ乾燥帯とする。乾燥限界値は年平均気温と雨の季節配分から算出する。
  3. 残った地域で、最寒月平均気温が18℃以上なら熱帯とする。
  4. 最寒月平均気温が18℃未満かつ−3℃以上なら温帯とする。
  5. 最寒月平均気温が−3℃未満なら亜寒帯とする。
境界値と使う月
区分本問で使う条件なぜその月を見るか
寒帯最暖月平均気温<10℃夏でも十分に暖かくならないことを見る
乾燥帯年降水量<乾燥限界値温度に対して水が不足することを見る
熱帯最寒月平均気温≧18℃冬でも高温であることを見る
温帯18℃>最寒月平均気温≧−3℃冬の寒さが中程度であることを見る
亜寒帯最寒月平均気温<−3℃冬の寒さが厳しいことを見る

樹木医の手引き 第4版 p.160 ES版 41-42頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・4|森林の構造の発達様式
B深度II手引き 各論4章・1節・4R4-13B|全体整理型

12陽樹

問題

次のうち、陽樹だけの組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. トドマツ・ブナ・ヒイラギ
  2. ヒノキ・カクレミノ・エノキ
  3. アカマツ・シラカバ・ヌルデ
  4. コウヤマキ・ヤマナラシ・カツラ
  5. アスナロ・スダジイ・センダン
R4-13手引き 各論4章・1節・4|森林の構造の発達様式
設問上の正解3

選択肢3。アカマツ・シラカバ・ヌルデはいずれも、明るい攪乱地へ早く侵入しやすい代表的な陽樹。

基本解説

陽樹・陰樹は、遷移のどの段階で更新しやすいかで理解する

陽樹は強い光の下で成長しやすく、裸地、伐採跡地、林冠の大きなギャップなどへ先に入る。陰樹は弱い光でも稚樹が生き残りやすく、林冠が閉じた林内で更新しやすい。名称の丸暗記だけでなく、攪乱後の遷移と結び付ける。

陽樹の代表陰樹の代表
アカマツ、シラカバ、ヌルデ、ヤマナラシ、センダントドマツ、ブナ、ヒイラギ、アスナロ、スダジイ、イチイ

樹木医の手引き 第4版 p.163 ES版 42-44頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・4|森林の構造の発達様式
B深度II手引き 各論4章・1節・4R5-13B|全体整理型

13陰樹

問題

次のうち、陰樹だけの組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. ケヤキ、コウヤマキ、ヤマナラシ
  2. カクレミノ、クヌギ、ヌルデ
  3. イヌツゲ、カシワ、ヒサカキ
  4. アカマツ、シラカンバ、トドマツ
  5. アスナロ、イチイ、ブナ
R5-13手引き 各論4章・1節・4|森林の構造の発達様式
設問上の正解5

アスナロ、イチイ、ブナはいずれも耐陰性が高く、林内の弱光条件でも稚樹が生残・更新しやすい代表的な陰樹である。

基本解説

陰樹は、林冠下でも更新できる耐陰性でまとめる

試験で押さえる事項
  • 陰樹とは暗所だけで育つ樹木ではなく、幼齢期に弱光下で生存できる樹種を指す。明るい場所でも成長できる。
  • 他の肢にはヤマナラシ、クヌギ、ヌルデ、カシワ、アカマツ、シラカンバなど陽性の強い樹種が混ざる。
  • 組合せ問題は、明確な陽樹を一種見つけた時点でその肢を除外する。

樹木医の手引き 第4版 p.163 ES版 42-44頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・5|森林の発達段階と機能との関係
C深度II手引き 各論4章・1節・5R4-03B|全体整理型

14日本の森林面積・人工林率

問題

次は、我が国の森林に関する記述であるが、文中のA~Cの空欄を埋める割合の組み合わせとして、正しいのはどれか。
我が国の森林面積は、2017年3月末現在で2,505万haであり、国土面積のうち[A]が森林となっている。我が国の森林面積のうち[B]は人工林で、終戦直後や高度経済成長期に伐採跡地に造林されたものが多くを占めており、その半数が一般的な主伐期である50年生を超え、本格的な利用期を迎えている。人工林の主要樹種の面積構成比は、カラマツが10%、スギが[C]、ヒノキが25%、などとなっている。

  1. (A)66% (B)41% (C)44%
  2. (A)66% (B)55% (C)20%
  3. (A)66% (B)41% (C)20%
  4. (A)81% (B)41% (C)44%
  5. (A)81% (B)55% (C)20%
R4-03手引き 各論4章・1節・5|森林の発達段階と機能との関係
設問上の正解1

設問の基準時点では、国土の約66%が森林、森林の約41%が人工林、人工林面積の樹種構成でスギが約44%である。

基本解説

森林統計は、三つの比率を一組で保持する

整理表
指標設問の値分母
森林率66%国土面積
人工林率41%森林面積
人工林中のスギ44%人工林面積
試験で押さえる事項
  • 同じ『%』でも分母が違う。66×41×44%といった連続計算を問う問題ではない。
  • 統計値は2017年3月末現在。最新値ではなく、設問時点の資料として覚える。
  • 人工林の高齢級化は、利用期、再造林、管理不足などの論述論点へつながる。

樹木医の手引き 第4版 p.166 ES版 44-45頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・6|森林生態系と生物多様性
AA深度III手引き 各論4章・1節・6R1-05A|選択肢別判定型

15レッドリストと国内希少野生動植物種

問題

環境省が公表するレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)と国内希少野生動植物種一覧に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 国内希少野生動植物種に指定された種は、販売や譲渡、採取、輸出入等が原則として禁止されることに加え、国による積極的な保護増殖事業もすべての種を対象に行われている。
  2. 国内希少野生動植物種として、2019年5月現在、樹木はムニンツツジやセキモンノキなど10種以上が掲載されている。
  3. レッドリスト2019において、絶滅(EX)あるいは野生絶滅(EW)として掲載される樹木はない。
  4. レッドリストで絶滅危惧Ⅰ類(CR、EN)として掲載された種は、国内希少野生動植物種と同様に販売や譲渡、採取、輸出入等が原則として禁止される。
  5. レッドリストのカテゴリーは野生個体数の減少が重要な評価項目となるため、レッドリスト2019では、造林樹種であるスギとヒノキも絶滅危惧Ⅱ類(VU)として掲載されている。
R1-05手引き 各論4章・1節・6|森林生態系と生物多様性
設問上の正解2

選択肢2。設問時点(2019年5月)の国内希少野生動植物種には、ムニンツツジやセキモンノキなど10種以上の樹木が含まれていた。

  1. ×
    選択肢1

    国内希少野生動植物種には捕獲・採取、譲渡し、輸出入等の規制があるが、保護増殖事業が全指定種へ一律に実施されるわけではない。

    必要性の高い種について保護増殖事業計画を定めて実施する。
  2. ○
    選択肢2

    設問基準日の2019年5月時点では、ムニンツツジ、セキモンノキなど10種以上の樹木が国内希少野生動植物種に指定されていた。

  3. ×
    選択肢3

    レッドリスト2019には、絶滅(EX)または野生絶滅(EW)と評価された樹木も掲載されている。

    カテゴリーの有無は設問時点のレッドリストで確認する。
  4. ×
    選択肢4

    レッドリストは絶滅リスクの評価資料であり、CR・ENへの掲載だけで販売・採取等が一律に禁止されるわけではない。

    法的規制は種の保存法による国内希少野生動植物種指定等と区別する。
  5. ×
    選択肢5

    レッドリストは野生個体群の絶滅リスクを複数基準で評価する。造林利用が多いという事情だけでスギ・ヒノキがVUに掲載されたとの記述は誤りである。

    栽培・造林個体と野生個体群を区別し、実際の評価カテゴリーを確認する。
基本解説

レッドリストは『危険度の評価』、国内希少野生動植物種は『法律による指定』

希少種の問題では、科学的な評価と法的な規制を分ける。環境省レッドリストは、野生生物の絶滅リスクをカテゴリーで示す基礎資料である。国内希少野生動植物種は、種の保存法に基づく指定で、捕獲・採取、譲渡し、輸出入などが原則として規制される。

したがって『レッドリスト掲載=直ちに販売禁止』ではない。また、国内希少種に指定されたすべての種へ、同じ保護増殖事業が自動的に行われるわけでもない。

仕組み役割直接の法的規制
レッドリスト絶滅リスクを評価・公表掲載だけでは一律の禁止にならない
国内希少野生動植物種種の保存法に基づく指定捕獲・採取、譲渡し、輸出入等を原則規制
保護増殖事業計画必要な種の回復措置指定種すべてへ一律実施ではない
指定時点と保全手段

指定種数や対象種は改訂されるため、数値問題は基準年月を外さない。一方、『評価資料と法的指定は別』という制度構造は類題にも転用できる。

生息域内保全は本来の生息地と生態系を守る方法、生息域外保全は種子・苗木・クローン等を施設や別地点で保存する方法である。後者だけで本来の生息環境の保全を代替できるわけではない。

樹木医の手引き 第4版 p.168 ES版 45-46頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・6|森林生態系と生物多様性
B深度I手引き 各論4章・1節・6R1-09B|全体整理型

16日本固有の動物種

問題

次の動物種の組み合わせのうち、すべて日本固有種(日本のみに分布する生物学上の種 species)であるものとして、正しいのはどれか。

  1. ニホンカモシカ、ニホンリス、アカネズミ
  2. ニホンカモシカ、ニホンザル、クリハラリス
  3. ニホンジカ、ニホンザル、ニホンノウサギ
  4. ニホンジカ、ニホンリス、ニホンノウサギ
  5. クリハラリス、ニホンノウサギ、アカネズミ
R1-09手引き 各論4章・1節・6|森林生態系と生物多様性
設問上の正解1

ニホンカモシカ、ニホンリス、アカネズミは、いずれも種として日本に固有と整理される。

基本解説

固有種は、亜種名や『ニホン』という和名ではなく種の分布で判定する

試験で押さえる事項
用語を押さえる
固有種
自然分布が特定地域に限られる生物学上の種。固有亜種とは分類階級が異なる。

樹木医の手引き 第4版 p.168 ES版 45-46頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・6|森林生態系と生物多様性
AA深度I手引き 各論4章・1節・6R3-29B|全体整理型

17絶滅危惧樹種

問題

地球温暖化や森林の伐採等による森林の減少に対する危惧や生物多様性保全の重要性が認識されるようになって久しい。我が国では平成元年(1989年)より、絶滅の危機に瀕している種のリスト(レッドリスト)が公表されており、多くの植物種が絶滅の危機にあることが認識されてきている。次のうち、最新のレッドリスト(レッドリスト2020)で絶滅危惧種に指定されている樹種の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. オガサワラグワ、アカギ、セキモンノキ
  2. ヤツガタケトウヒ、エゾマツ、ケヤキ
  3. ムニンノボタン、タブノキ、ブナ
  4. ヤツガタケトウヒ、オガサワラグワ、ヤエヤマシタン
  5. コナラ、セキモンノキ、ヤエヤマシタン
R3-29手引き 各論4章・1節・6|森林生態系と生物多様性
設問上の正解4

ヤツガタケトウヒ、オガサワラグワ、ヤエヤマシタンはいずれもレッドリスト2020で絶滅危惧種に位置付けられる。

基本解説

正答三種を核に、普通種・外来種を除外する

分布域が狭い・個体群が小さい災害、開発、病害、外来種などの影響が種全体へ及びやすい絶滅リスクが高まる
整理表
学習上の区分樹種
正答として一組で記憶ヤツガタケトウヒ、オガサワラグワ、ヤエヤマシタン
希少種として注意セキモンノキ、ムニンノボタン
本問の除外手掛かりアカギ、エゾマツ、ケヤキ、タブノキ、ブナ、コナラ
試験で押さえる事項
  • アカギは小笠原では侵略的外来種として問題になる。『小笠原にある樹木=小笠原固有種』ではない。
  • 組合せ問題は、明らかな普通種を一つ見つければその肢を切れる。

樹木医の手引き 第4版 p.168 ES版 45-46頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・6|森林生態系と生物多様性
B深度II手引き 各論4章・1節・6R5-28C|重点誤答型

18世界自然遺産と固有種

問題

令和3年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」地域が世界自然遺産として登録され、令和5年7月現在、わが国の世界自然遺産は5か所である。次のわが国の世界自然遺産の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 知床は海氷ができる海洋の中で最も高緯度に位置し、この海氷がもたらす貧栄養な環境により、特異な海洋性生物が育まれている。
  2. 白神山地は青森県と岩手県の県境にまたがる山地帯の総称であり、東アジア最大規模のブナ林が分布している。
  3. 小笠原諸島は東京都にあり、動植物は、独自の進化の過程でアカギなどの固有種を生み出し、それらの多くが絶滅危惧種となっている。
  4. 屋久島は鹿児島県にあり、樹齢数千年を超えるヒノキなどの原生的な天然林が広がる優れた自然景観を有し、ヤクシマシャクナゲなどの固有種が生育している。
  5. 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島は、イリオモテヤマネコ、ノグチゲラ、アマミノクロウサギの生息・生育地となっている。
R5-28手引き 各論4章・1節・6|森林生態系と生物多様性
設問上の正解5

遺産地域全体には、奄美大島・徳之島のアマミノクロウサギ、沖縄島北部のノグチゲラ、西表島のイリオモテヤマネコが生息する。

注意すべき選択肢

1

知床は季節海氷が到達する海域として低緯度側に位置し、海氷由来の栄養が豊かな海洋生態系を支える。高緯度・貧栄養は逆。低緯度まで来る季節海氷/豊かな海と陸の連関、と整理する。

2

白神山地がまたがるのは青森県と秋田県で、岩手県ではない。青森・秋田/ブナ天然林を一組にする。

3

アカギは小笠原の固有種ではなく、侵略的外来種として問題になる。小笠原の固有性と、外来種による生態系影響を対にして覚える。

4

屋久島の長寿巨木はヒノキではなくスギ(屋久杉)。鹿児島県/屋久杉/垂直分布を結び付ける。

基本解説

世界自然遺産は、場所・生態系・代表種を一対一で整理する

整理表
遺産正しい軸典型的な誤り
知床季節海氷が到達する海域として低緯度側に位置し、豊かな海洋生態系を育む高緯度・貧栄養と逆転
白神山地青森県・秋田県、ブナ天然林秋田を岩手へ入替え
小笠原諸島島しょでの独自進化と高い固有性外来種アカギを固有種とする
屋久島長寿のスギを含む天然林スギをヒノキへ入替え
奄美・徳之島・沖縄島北部・西表島固有性の高い陸生生物各代表種の島を混同
試験で押さえる事項
  • 選択肢5は三種が全島に分布するという意味ではなく、四地域で構成される遺産全体について述べる。
  • 島しょの隔離→独自進化→固有種増加という因果と、外来種・生息地改変への脆弱性をつなげる。

樹木医の手引き 第4版 p.168 ES版 45-46頁

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各論 第4章 樹木・樹林の生態第1節・7|森林と地球環境保全
AA深度III手引き 各論4章・1節・7H30-04A|選択肢別判定型

19生態系サービス

問題

人々が生態系から受ける様々な利益は、生態系サービスと呼ばれている。森林の生態系サービスに関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 森林における大部分の生物種は資源として利用できないので、生物多様性の高さは、生態系サービスに影響しない。
  2. 森林による水源かん養機能とは、樹木の木部に水を貯めることなので、機能の高さは木材の蓄積量に比例する。
  3. 森林による二酸化炭素の吸収や酸素の供給は、地球の気候を緩和する代表的な生態系サービスのひとつである。
  4. スギやヒノキの人工林から得られる木材は、生態系サービスと関係がなく、人の産業活動による産物である。
  5. 生態系サービスは、大きなスケールで安定した生態系から提供されるため、人為的活動からの影響はほとんど受けない。
H30-04手引き 各論4章・1節・7|森林と地球環境保全
設問上の正解3

森林によるCO₂吸収・炭素固定や酸素供給は、気候や大気環境を調整する生態系サービスに含まれる。

  1. ×
    選択肢1

    直接資源利用されない生物種も、食物網、分解、受粉、環境変動への回復力を支え、生態系サービスの安定性に関与する。

    利用価値の有無だけで生物多様性の機能を評価しない。
  2. ×
    選択肢2

    水源かん養は木部への貯水ではなく、落葉層や森林土壌への浸透・一時貯留によって流出の急増や渇水を緩和する働きである。

    木材蓄積量ではなく、土壌構造、林床、地形、降雨条件等で評価する。
  3. ○
    選択肢3

    森林によるCO₂吸収・炭素固定や酸素供給は、気候・大気環境を調整する代表的な生態系サービスに位置付けられる。

  4. ×
    選択肢4

    人工林から得られる木材も、生態系が人へ提供する供給サービスである。

    人が管理する生態系から得る便益も生態系サービスに含まれる。
  5. ×
    選択肢5

    伐採、土地利用転換、管理放棄、汚染、外来種などの人為作用は、生態系サービスの量と質を大きく変える。

    生態系サービスは規模が大きくても人為影響から独立していない。
基本解説

生態系サービスは、生態系の働きを『人が受ける利益』の側から整理した概念

森林は木材を生産するだけでなく、気候を調節し、水や土壌を保ち、景観や学習の場を提供します。このように、生態系の構造と働きから人間が受ける多様な便益を生態系サービスと呼びます。自然林だけが対象ではなく、人が管理する人工林から得る木材も供給サービスです。また、直接利用しない生物種も食物網や分解、受粉、環境変動への回復力を支え得るため、生物多様性とサービスは無関係ではありません。

森林から得られる代表的なサービス
区分森林の例働きから利益まで
供給サービス木材、食料、薬用資源生物が生産した資源を人が利用する
調整サービス二酸化炭素吸収、気候緩和、洪水緩和、水質浄化、侵食防止生態系の調節作用が災害や環境変動を和らげる
文化的サービス景観、レクリエーション、教育、精神的価値森林との関わりが文化・健康・学習へ利益をもたらす
基盤となる働き一次生産、土壌形成、物質循環他のサービスが成り立つ基礎をつくる

水源かん養は、幹の木部に大量の水を貯めることではありません。落葉層や孔隙のある森林土壌へ雨水を浸透・一時貯留させ、急な表面流出を抑え、河川流量の変化や水質を緩和する働きです。森林の構造、土壌状態、管理、降雨条件によって機能の大きさは変わります。

樹木医の手引き 第4版 p.169 ES版 46-47頁

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