TREE DOCTOR EXAM · SYSTEMATIC REFERENCE V6.0.1

各論 第10章 樹木の総合診断

収録4問。ワイド画面では左に問題、右に正答・解説を表示し、狭い画面では縦方向に読み進められます。

各論 第10章 樹木の総合診断

各問題のランク・深度は詳細分析の正本です。学習状態は明示的に選択してください。

各論 第10章 樹木の総合診断第3節・1|概況調査
C深度II手引き 各論10章・3節・1R3-18A|選択肢別判定型

01樹木の異常な形態・状態

問題

樹木の異常な形態や状態に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 常緑樹の葉がクロロシスを呈して短期間に落葉する現象を異常落葉という。大気汚染による可視被害の一つである。
  2. 太い枝が自然に折れたり人為的に切ったりした後に、切り口を覆うように形成される樹皮を入り皮という。入り皮が切り口の全面を覆うまでは病害虫が侵入しやすい。
  3. 仮道管のキャビテーションが原因で、軸方向に長く樹皮が盛り上がるように肥大した状態を蛇下がりという。道管ではキャビテーションが発生しないので、広葉樹に蛇下がりは見られない。
  4. 水分不足により葉や葉柄の細胞が膨圧を失って葉が緑色のまま垂れる現象を萎凋という。マツ材線虫病に侵されたマツなどで顕著に見られる。
  5. 自身の幹や根に巻きつくように伸びている根を巻き根という。そのまま肥大成長すると互いの形成層を締め付けるようになり成長が妨げられたり、病原体の侵入口になったりする。
R3-18手引き 各論10章・3節・1|概況調査
設問上の正解5

巻き根は幹や他の根へ巻き付くように伸び、肥大すると形成層・師部を圧迫して成長を妨げ、接触部の傷から病原体が侵入することもある。

  1. ×
    選択肢1

    異常落葉は樹種ごとの通常の落葉時期・葉齢から外れて葉を失う現象であり、常緑樹のクロロシス後の短期落葉や大気汚染被害だけに限定されない。

    樹種、季節、葉齢、落葉量を基準状態と比較して異常かを判定する。
  2. ×
    選択肢2

    切口の外周から形成されて傷を覆うのは巻き込み組織・カルスであり、入り皮ではない。入り皮は狭い分岐部へ樹皮が挟み込まれた構造である。

    傷の閉鎖組織と、枝の付着を弱める入り皮を区別する。
  3. ×
    選択肢3

    蛇下がりを仮道管のキャビテーションだけで説明し、道管ではキャビテーションが起こらず広葉樹に生じないとする点が誤りである。

    症状名、組織の水分通導障害、原因候補を分け、針葉樹・広葉樹の組織差だけで断定しない。
  4. ×
    選択肢4

    萎凋が膨圧低下で葉や葉柄が垂れる現象という前半はよいが、針葉が硬いマツ材線虫病ではこの外観が顕著とは限らず、診断を萎凋だけに依存できない。

    樹脂流出停止、針葉の変色、枝葉の水分状態などを併せて確認する。
  5. ○
    選択肢5

    巻き根は幹や他の根の周囲を回り、肥大に伴って形成層・師部を圧迫し、成長阻害や接触部の傷・病原体侵入を招くことがある。

基本解説

異常形態は、見た目だけでなく発生機序まで確認する

試験で押さえる事項
  • 異常落葉は通常の季節・葉齢から外れた落葉。常緑樹のクロロシスと短期落葉だけを定義としない。
  • 太枝の切口を外周から覆う組織はカルス・巻き込み組織として整理し、『入り皮』ではない。入り皮は分岐部へ樹皮が巻き込まれた構造。
  • 蛇下がりは樹皮表面に蛇行状の隆起・亀裂が現れる症状名で、仮道管キャビテーションだけを原因とし、広葉樹では起こらないとする説明は誤り。
  • 萎凋は細胞の膨圧低下で葉が垂れる現象だが、マツ材線虫病の初期診断をこの外観一つへ限定しない。
用語を押さえる
巻き根
幹・根鉢・他根の周囲を周回する根。コンテナ育苗や狭い植穴で生じやすい。
入り皮
狭い分岐角などで樹皮が枝幹の接合部へ巻き込まれ、木部同士の強い連結を妨げる構造。

樹木医の手引き 第4版 p.571 ES版 80頁

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各論 第10章 樹木の総合診断第4節・2|材料採取及び直接観察による機器診断
AA深度IV手引き 各論10章・4節・2R3-20B|全体整理型

02空洞幹の健全部断面積

問題

ある木の幹断面を調べたところ、外側は歪みのない直径20cmの円形で、内側に円形の空洞があり、円筒状に残っている健全な木部の厚さはどこも3cmであった。このとき、幹の断面積に占める健全な木部の面積の比として正しいのはどれか。

  1. 15%
  2. 28%
  3. 43%
  4. 51%
  5. 70%
R3-20手引き 各論10章・4節・2|材料採取及び直接観察による機器診断
設問上の正解4

正答は4、51%。幹半径は10cm、健全部の厚さが3cmなので空洞半径は7cm。外円から内円を引く。

基本解説

空洞のある幹は、厚さの割合ではなく『外円から内円を引いた円環の面積』で計算する

幹断面の外側が円、内側の空洞も同心円で、健全な木部厚が一定なら、残った健全部はドーナツ状の円環です。厚さ3cmを直径20cmで割った15%は長さの比であり、面積の比ではありません。面積は半径の二乗に比例するため、外円の面積から空洞円の面積を引き、外円全体で割ります。

51%を求める
  1. 外径20cmなので外半径Rは10cm。
  2. 健全部の厚さtは3cmなので、空洞半径rは10−3=7cm。
  3. 外円面積はπR²=100π、空洞面積はπr²=49π。
  4. 健全部面積は100π−49π=51π。
  5. 健全部率は51π÷100π=0.51=51%で、選択肢4。
類題に使える一般式
健全部率 = {R² − (R−t)²} ÷ R²
= 1 − (1−t/R)²
R:外半径、t:残存健全部の厚さ

ただし、断面積の51%が健全だから安全、49%が空洞だから危険と機械的に判断することはできません。曲げに対する抵抗は材が中心からどれだけ離れて分布するかの影響を強く受け、外周部の健全材は重要です。一方で、開口部、偏った空洞、亀裂、腐朽の進行、樹高と樹冠荷重、根系、風環境、倒壊時の被害対象も危険度を変えます。本問の計算値は診断材料の一つです。

現場評価で追加する情報
  • 空洞が同心円か偏在か、残存壁厚の最小値はいくらか。
  • 外周の健全部に開口・亀裂・腐朽があるか。
  • 樹冠の偏り、風荷重、幹の傾斜、根株腐朽があるか。
  • 倒れた場合に人・建物・道路へ被害が及ぶか。

樹木医の手引き 第4版 p.585 ES版 81頁

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各論 第10章 樹木の総合診断第5節|倒木危険度調査と危険度判定の実際
AA深度IV手引き 各論10章・5節H30-15A|選択肢別判定型

03風圧力の式

問題

樹冠が横風を受けたときの風圧力ωと風速Vとの関係は、樹冠の受風投影面積をA、樹冠を構成する枝葉の配置や表面性状などによって決まる抗力係数をC、空気の密度をρとしたときに、ω=CρAV²/2という式で表すことができる。この式に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 横風の風速が2倍になると、立木が横風から受ける力も2倍になる。
  2. 台風接近時など気圧が下がっているときは、風速が同じでも立木が横風から受ける力が大きくなる。
  3. 風速が同じならば、枝葉が風になびきやすい樹木のほうが、枝の曲がりにくい樹木よりも立木が横風から受ける力が小さい。
  4. 透かし剪定を行っても、風速が同じならば立木が横風から受ける力は理論上は変化しない。
  5. もし樹高と樹冠長に変化がなく風速が同じならば、落葉樹であっても立木が横風から受ける力は樹齢や季節に関わらず一定である。
H30-15手引き 各論10章・5節|倒木危険度調査と危険度判定の実際
設問上の正解3

選択肢3。枝葉が風下へなびくと、実効的な受風投影面積Aや抗力係数Cが小さくなり、同じ風速でも風荷重が小さくなり得る。

  1. ×
    選択肢1

    風荷重は風速Vの2乗に比例するため、他条件が同じなら風速が2倍で力は4倍になる。

    式のV²を確認し、比例と二乗比例を区別する。
  2. ×
    選択肢2

    気圧低下時は一般に空気密度ρも低下する方向で、同じ風速なら風荷重が大きくなるとはいえない。

    ρが小さくなれば、他条件一定で風荷重も小さくなる。
  3. ○
    選択肢3

    枝葉がなびくと樹冠が流線化し、実効受風面積Aや抗力係数Cが低下するため、同じ風速でも受ける力が小さくなり得る。

  4. ×
    選択肢4

    透かし剪定は葉量・枝配置を変え、受風投影面積Aや抗力係数Cを変化させるため、理論上も荷重は不変ではない。

    剪定効果をAとCで説明し、切断傷や再成長等の別リスクも評価する。
  5. ×
    選択肢5

    樹高と樹冠長が同じでも、葉量、樹冠密度、落葉、枝の柔軟性によりAとCは変化する。

    落葉樹では特に着葉期と落葉期で受風面積が異なる。
基本解説

風荷重式は、各変数が樹冠でどう変わるかを読む

風荷重は ω=CρAV²/2 で近似する。Vは風速、Aは風向に直角な樹冠の投影面積、Cは樹冠形状や風の抜けやすさを表す抗力係数、ρは空気密度である。数字を代入するだけでなく、現実の枝葉の変形がAとCを変える点を読む。

ω=CρAV²/2 | Vが2倍なら、他条件一定でωは4倍
変数樹木での意味増減の読み方
V風速二乗に比例
A受風投影面積落葉・透かし・なびきで変化
C抗力係数風を受け流すほど低下し得る
ρ空気密度密度が小さければ荷重も小さい
変数を一つずつ動かす

風速だけが2倍なら荷重は4倍。落葉でAが0.5倍、枝葉の再配置でCが0.7倍なら、同じ風速でも荷重は0.35倍になる。

透かし剪定で荷重を減らせても、過度な剪定は大きな傷や徒長枝の再成長を招く。力学式だけで剪定量を決めない。

樹木医の手引き 第4版 p.597 ES版 82-83頁

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各論 第10章 樹木の総合診断第5節|倒木危険度調査と危険度判定の実際
AA深度IV手引き 各論10章・5節R5-17C|重点誤答型

04横風による幹折れの力学

問題

下図は、樹木が横風を受けて右側の木が幹折れを起こす様子を模式的に示している。次のうち、右側の木のほうが左側の木より幹折れを起こしやすいことの物理学的な説明として、正しいのはどれか。ただし、樹冠の大きさは同一とする。

R5-Q17の原本設問図版
原本から切り出した設問図版
  1. 風荷重が風速の二乗に比例するため。
  2. 風荷重が気圧に比例するため。
  3. 曲げモーメントが風荷重に比例するため。
  4. 曲げモーメントが風心からの距離に比例するため。
  5. 幹の曲げ強度が直径の3乗に比例するため。
R5-17手引き 各論10章・5節|倒木危険度調査と危険度判定の実際
設問上の正解4

選択肢4。右の木は破断候補位置から風心までの距離Lが長く、同じ風荷重Fでも曲げモーメントM=F×Lが大きい。

注意すべき選択肢

1

風荷重が風速の2乗に比例すること自体は正しいが、両木が同じ風を受ける図の左右差を説明しない。図で左右異なる変数を先に探す。

3

曲げモーメントが風荷重Fに比例するのも一般論として正しいが、樹冠が同一でFが同じなら左右差にならない。本図ではFでなく風心距離Lの差がMの差を生む。

5

幹径と曲げ強度は抵抗側の論点であり、本図が示す荷重側の左右差ではない。荷重側F・Lと、抵抗側の幹径・材質・欠損を分ける。

基本解説

幹を折る作用は、風の力だけでなく『作用点までの距離』で増幅される

樹冠全体に分布する風荷重は、代表点である風心に合力Fが作用すると考えられる。幹のある断面を回そうとする作用は、Fと、その断面から風心までの距離Lを掛けた曲げモーメントM=F×Lで表す。同じ力でも、長いてこの先へかかるほど曲げ作用が大きい。

曲げモーメント M = 風荷重 F × 破断候補断面から風心までの距離 L
側主な要因本問での扱い
荷重側風速、樹冠面積、抗力係数、風心距離左右差は風心距離L
抵抗側幹径、材質、腐朽、空洞、亀裂条件が示されない限り左右差の根拠にしない
数値例と診断への接続

風荷重を1,000Nとすると、風心まで4mなら4,000N·m、7mなら7,000N·mとなる。力が同じでも右は1.75倍の曲げモーメントを受ける。

現場では、風心距離だけでなく、偏った樹冠、腐朽、空洞、亀裂、根系支持、周囲の風環境を合わせて評価する。

樹木医の手引き 第4版 p.597 ES版 82-83頁

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