01天然記念物の保護制度
樹木医は、国や地方公共団体が指定する天然記念物を診断・治療する機会が多い。天然記念物に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。
- 国の天然記念物は、文化財保護法により指定されており、地方公共団体の天然記念物であっても、この法律により指定を受けているため、全ての天然記念物の治療を行う場合は、国の許可が必要である。
- 天然記念物には、ハダカガヤ、カズクリ、シダレモミなどが指定されており、これらは、種子、花序、枝葉の突然変異体と考えられ、樹木の生理生態や遺伝的基礎を解明する材料としての価値もある。
- 天然記念物は、動物や植物が指定されており、地質や鉱物の指定はない。
- 樹木の天然記念物は、単木で指定されるのが一般的であり、天然林や複数の樹木といった集団で指定されているものはない。
- 植物分布の限界地では、生育条件が劣悪で対象となる植物が健全に生育していない場合が多いことから、天然記念物に指定されたものはない。
ハダカガヤ、カズクリ、シダレモミのような突然変異体は、希少性だけでなく、形態形成や遺伝を考える研究材料としても価値をもつ。天然記念物は単木だけを保護する制度ではない。
- ×選択肢1
地方公共団体指定の天然記念物は、各自治体の条例等に基づく。治療に国の許可が一律に必要となるわけではない。
指定主体と根拠法令を確認し、必要な許可・届出を個別に判断する。 - ○選択肢2
ハダカガヤ、カズクリ、シダレモミのような突然変異体は、希少性に加えて形態形成や遺伝を解明する研究材料としても価値をもつ。
- ×選択肢3
天然記念物の対象は動物・植物だけではない。地質・鉱物にも指定例がある。
天然記念物には動物、植物、地質・鉱物が含まれる。 - ×選択肢4
樹木関係の指定は単木に限らず、並木、樹叢、天然林など集団・地域を対象とするものもある。
単木から森林・群落まで、学術上の価値に応じて指定対象になり得る。 - ×選択肢5
分布の南限・北限などは、生物地理上の価値そのものが指定理由になり得る。
生育が厳しい限界地であっても、分布限界を示す重要な場所として指定されることがある。
基本解説
制度問題は『何を・誰が・どの法令で』に分解する
試験で押さえる事項
- 国指定の天然記念物は文化財保護法、地方公共団体指定は各自治体の条例等に基づく。地方指定だから国の許可が一律に必要、とはならない。
- 天然記念物の対象には動物・植物だけでなく、地質・鉱物も含まれる。
- 単木、並木、樹叢、原始林など、個体から集団・地域まで指定対象になり得る。
- 分布の南限・北限などは、生物地理上の価値そのものが指定理由になり得る。
用語を押さえる
- 現状変更
- 伐採、枝の切除、根の処置、掘削など、文化財の現在の状態を変える行為。診断・治療では指定区分と必要手続を先に確認する。
樹木医の手引き 第4版 p.29 ES版 7-8頁