TREE DOCTOR EXAM · SYSTEMATIC REFERENCE V6.0.1

各論 第9章 土壌の診断と対策

収録22問。ワイド画面では左に問題、右に正答・解説を表示し、狭い画面では縦方向に読み進められます。

各論 第9章 土壌の診断と対策

各問題のランク・深度は詳細分析の正本です。学習状態は明示的に選択してください。

各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・1|土壌のでき方と土壌生成因子
A深度III手引き 各論9章・1節・1R5-31A|選択肢別判定型

01地形と土壌

問題

地形と土壌に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 一般に扇状地では三角州と比較して土壌の透水性が低い。
  2. 沖積平野のような平坦な地形では土壌の水湿状態はほぼ一定である。
  3. 上昇斜面では下降斜面よりも残積土が浅い傾向にある。
  4. 水積土は礫の間に粘土が密に充填され、物理性はよくないことが多い。
  5. 台地上では浸食の影響で火山灰の堆積はみられない。
R5-31手引き 各論9章・1節・1|土壌のでき方と土壌生成因子
設問上の正解4

水積土では礫の間へ粘土・細粒物が密に充填されることがあり、孔隙の連続性が悪く、根の伸長・通気・排水に不利な場合が多い。

  1. ×
    選択肢1

    扇状地は一般に砂礫が多く、細粒物の多い三角州より透水性が高い。

    河川上流側の扇状地は粗粒で排水良好、河口側の三角州は細粒で水が停滞しやすいという傾向を押さえる。
  2. ×
    選択肢2

    沖積平野は平坦に見えても、自然堤防、後背湿地、旧河道などの微地形により土性・地下水位・水湿状態が異なる。

    数十cm~数mの標高差と微地形区分を根域の水分条件へ結び付ける。
  3. ×
    選択肢3

    上昇斜面と下降斜面では侵食・堆積・排水条件が異なり、上昇斜面の残積土が一律に浅いという関係ではない。

    斜面形による物質移動と土層厚の傾向を、現地の侵食・堆積状況と合わせて判断する。
  4. ○
    選択肢4

    水積土では、礫があってもその間を粘土などの細粒物が密に埋めると孔隙が連続せず、通気・透水・根の伸長に不利になることが多い。

  5. ×
    選択肢5

    安定した平坦な台地面では火山灰が保存・堆積し得る。浸食により必ず失われるわけではない。

    斜面の侵食部と、堆積物が残りやすい台地面を区別する。
基本解説

地形は、水の流れと土粒子の運搬・堆積を通じて根域の物理性を決める

土壌は、その場の岩石が風化して残る場合と、水・重力・風などで運ばれた物質が堆積してできる場合があります。地形を読むと、水が集まるか抜けるか、粗い礫が堆積するか細かな粘土がたまるか、表土が侵食されるか保存されるかを推定できます。平坦に見える土地でも数十cm~数mの微地形差が水湿状態を大きく変えます。

地形と土壌の基本関係
地形・土壌形成と物理性
扇状地河川が山地から出た場所で砂礫が多く堆積し、三角州より一般に透水性が高い
沖積平野自然堤防などの微高地と後背湿地で、土性・地下水位・水湿状態が異なる
水積土流水で運ばれた礫の隙間を粘土など細粒物が密に埋め、孔隙の連続性が悪い場合がある
台地安定した平坦面では火山灰が保存・堆積し得る

水積土に礫が多いからといって必ず排水良好とは限りません。礫の間が細粒の粘土で密に充填されると、水と空気の通路が途切れ、根の伸長、通気、透水に不利になります。粒径の種類だけでなく、隙間がどう連続しているかを見ることが重要です。

樹木医の手引き 第4版 p.513 ES版 74頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・3|わが国の森林土壌の分類
A深度III手引き 各論9章・1節・3H30-33B|全体整理型

02赤黄色土

問題

次は赤黄色土に関する記述であるが、文中のA~Eの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。

赤黄色土の色は結晶化の進んだ(A)に由来する。この土壌は、亜熱帯のような温暖・湿潤な環境下で長時間かけて生成されたと考えられている。そのため、我が国に分布する赤黄色土の大部分は(B)の間氷期に生成された古土壌であると言われている。一般に低山や丘陵の(C)傾斜地や高位段丘などに分布しており、風化が進んでいるので通気・透水性が(D)で、塩基類や腐植などに(E)。

  1. A:酸化鉄 B:洪積世(更新世) C:緩 D:不良 E:乏しい
  2. A:珪酸 B:洪積世(更新世) C:急 D:不良 E:富む
  3. A:酸化鉄 B:沖積世(完新世) C:急 D:良好 E:乏しい
  4. A:酸化鉄 B:洪積世(更新世) C:緩 D:良好 E:富む
  5. A:珪酸 B:沖積世(完新世) C:急 D:不良 E:乏しい
H30-33手引き 各論9章・1節・3|わが国の森林土壌の分類
設問上の正解1

赤黄色は結晶化の進んだ酸化鉄に由来し、日本の多くは更新世の間氷期に形成された古土壌。低山・丘陵の緩斜面や高位段丘に分布し、塩基・腐植に乏しい。

基本解説

赤黄色土は、温暖湿潤下の長期風化と酸化鉄の残留から理解する

温暖で湿潤な環境では、長い時間をかけて鉱物の風化と水による溶脱が進みます。塩基類やケイ酸などが失われる一方、鉄の酸化物が相対的に残り、結晶化の進んだ酸化鉄によって土は赤色~黄色を帯びます。鮮やかな色は養分が豊富な印ではなく、むしろ長期の風化と溶脱を示す場合があります。

形成過程
温暖湿潤条件で長期間風化する塩基類やケイ酸が降水で溶脱する酸化鉄が相対的に残り結晶化する赤色~黄色の土色が発達する塩基・腐植に乏しく、粘土化・緻密化で物理性も不良になり得る
日本の赤黄色土の要点
項目内容
色の由来結晶化の進んだ酸化鉄
形成時期多くは更新世(旧称・洪積世)の間氷期に形成された古土壌
分布地形低山・丘陵の緩斜面や高位段丘など、長く保存されやすい安定面
物理・化学性通気・透水性が不良となることがあり、塩基類・腐植に乏しい

樹木医の手引き 第4版 p.521 ES版 75頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・4|土壌断面調査と土壌診断
A深度II手引き 各論9章・1節・4H30-29A|選択肢別判定型

03土壌断面調査

問題

次のうち、土壌断面の調査に際しての留意点として、正しいのはどれか。

  1. 土壌断面の整形は、一般に深い方から地表へ向かって行う。
  2. 層位の深さは、一般にA₀層の表面を基準にして表示する。
  3. 土色帳による土色の判定は、一般に日陰より日向の方が適している。
  4. 野外土性の判定は、一般に調査時の水分状態のままの土壌試料で行う。
  5. 土壌構造の判定は、一般に層位から取り出した大きめの土塊を少しずつ崩して行う。
H30-29手引き 各論9章・1節・4|土壌断面調査と土壌診断
設問上の正解5

土壌構造は、層位から取り出した大きめの土塊を手で少しずつ崩し、自然に分かれる形・大きさ・発達程度を判定する。

  1. ×
    選択肢1

    深い方から整形すると、上部を削った土が下の観察面へ落ち、下層を汚してしまう。

    土壌断面は地表側から下方へ整形し、各層の自然な状態を保つ。
  2. ×
    選択肢2

    A₀層は厚さが場所により変動しやすいため、一般に鉱質土壌の表面を深さの基準とする。

    有機物層の厚さは別に記録し、鉱質土壌表面を0 cmとして層位深を測る。
  3. ×
    選択肢3

    直射日光下では明るさや色温度の影響が大きく、土色帳との比較が不安定になる。

    直射日光を避けた均一で明るい条件で、新鮮な土面と土色帳を比較する。
  4. ×
    選択肢4

    野外土性の触感判定は水分状態で粘着性・塑性が変わるため、採取時の水分のまま一律に行わない。

    少量ずつ加水して適切な湿りへ調整し、指触、粘り、ひも状成形のしやすさ等を比べる。
  5. ○
    選択肢5

    大きめの自然土塊を少しずつ崩し、自然に分かれる集合体の形、大きさ、硬さ、発達程度を観察するのが土壌構造の判定である。

基本解説

土壌断面は、自然の構造を壊さず、同じ条件で観察する

試験で押さえる事項
  • 断面整形は上部から下部へ慎重に行い、上層の土を下層面へ落として汚さない。
  • 層位深は通常、鉱質土壌表面を基準に測り、変動の大きいA₀層表面を0にしない。
  • 土色は直射日光を避け、均一な明るさで土色帳と比較する。
  • 野外土性は試料の水分を調整し、指触・塑性・粘着性を比較する。採取時水分のまま一律に判定しない。
用語を押さえる
土壌構造
土壌粒子が自然に集合してできる団粒・塊などの形態。人工的に砕いた粒の大きさとは違う。

樹木医の手引き 第4版 p.526 ES版 75頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・5|土壌の物理的環境
A深度IV手引き 各論9章・1節・5H30-18B|全体整理型

04土壌三相の計算

問題

深さ50cmまで土壌を均質に詰めた大型プランターがある。この土壌の三相組成は固相40%、液相30%、気相30%だった。ここに時間雨量15mmのやや強い雨が降り続いた時、土壌が飽和して地表に水面が現れはじめるまでの時間として、正しいのはどれか。なお、プランターの内部形状は直方体で、排水穴からの溢流や表面からの蒸発はないものとする。

  1. 18分
  2. 60分
  3. 4時間
  4. 10時間
  5. 33時間20分
H30-18手引き 各論9章・1節・5|土壌の物理的環境
設問上の正解4

正答は4、10時間。飽和までに追加できる水は、土壌深50cmのうち気相30%に相当する15cm=150mmである。

基本解説

土壌三相の計算は、飽和時に『気相だけが液相へ置き換わる』と考える

土壌の体積は、土粒子が占める固相、水が占める液相、空気が占める気相の三つに分けられます。液相と気相を合わせた部分が孔隙です。本問の初期状態は固相40%、液相30%、気相30%なので、孔隙率は60%です。飽和とは孔隙がすべて水で満たされた状態であり、雨によって追加の水が入る余地は初めの気相30%です。固相40%が水へ置き換わるわけではありません。

降雨前と飽和時の三相
状態固相液相気相
降雨前40%30%30%
飽和時40%60%0%
変化変わらない+30ポイント−30ポイント
必要な水深と時間を求める
  1. 土壌深50cmを500mmへ直す。
  2. 気相30%を水で満たすため、必要水深は500mm×0.30=150mm。
  3. 時間雨量15mm/hがすべて土壌へ入るので、150mm÷15mm/h=10時間。
  4. したがって選択肢4となる。

樹木医の手引き 第4版 p.538 ES版 75-76頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・5|土壌の物理的環境
B深度III手引き 各論9章・1節・5H30-30B|全体整理型

05土壌構造

問題

次は土壌構造に関する記述であるが、文中のA~Eの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。

土壌粒子が自然条件下で、主に粘土鉱物などの(A)や腐植を結合物質として互いにくっついてできる土壌の集合体を土壌構造という。土壌構造の形成には、土壌の(B)の繰り返しや、土壌動物や根などの生物の活動が密接に関与する。一般に土壌が一時期強く乾燥するところでは(C)構造が、適潤なところでは(D)構造が、また常時湿潤なところでは壁状構造が見られることが多い。土壌構造の種類や発達の程度は土壌の(E)を指標するとともに、樹木の生育の良否と密接に関連する。

  1. A:一次鉱物 B:乾燥・湿潤 C:塊状 D:団粒状 E:母岩や母材
  2. A:二次鉱物 B:移動・堆積 C:塊状 D:細粒状 E:おかれている環境
  3. A:二次鉱物 B:乾燥・湿潤 C:堅果状 D:団粒状 E:おかれている環境
  4. A:一次鉱物 B:移動・堆積 C:堅果状 D:団粒状 E:母岩や母材
  5. A:二次鉱物 B:移動・堆積 C:堅果状 D:細粒状 E:母岩や母材
H30-30手引き 各論9章・1節・5|土壌の物理的環境
設問上の正解3

粘土鉱物などの二次鉱物と腐植が粒子を結び、乾燥・湿潤の反復や根・土壌動物の作用で構造が発達する。

基本解説

土壌構造は、粒子が結び付いた集合体と、その間にできる孔隙の形

砂・シルト・粘土などの土壌粒子が、粘土鉱物、腐植、根や微生物の分泌物などによって結び付いた集合体を土壌構造と呼びます。粘土鉱物は、母岩由来の一次鉱物が風化・変質して生じた二次鉱物で、表面積と電荷が大きく、粒子や養分を保持する働きがあります。乾燥と湿潤の反復、凍結融解、根の伸長、土壌動物の活動が集合体をつくり変えます。

水分環境と代表的な構造
環境代表的な構造読み取れること
一時期に強く乾燥堅果状構造乾湿反復の影響を受けた大きく硬い集合体
適潤団粒状構造大小の孔隙が共存し、通気・透水・保水の均衡がよい
常時湿潤・過湿壁状構造緻密で連続的となり、根の生育に不利になりやすい

構造は母材だけで決まるのではなく、その場所の水分状態、生物活動、攪乱、時間の影響を受けます。そのため構造の種類と発達程度は、土壌が置かれてきた環境を示す指標になります。樹木にとっては、根が伸びる隙間、水を保持する小孔隙、空気と排水を担う大孔隙がどう組み合わさるかが重要です。

樹木医の手引き 第4版 p.538 ES版 75-76頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・5|土壌の物理的環境
B深度III手引き 各論9章・1節・5R1-31B|全体整理型

06土壌構造

問題

次は、土壌構造に関する記述であるが、文中のA~Eの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。
土壌構造が発達すると、主に構造を構成する土壌(A)の集合体の内部に各種の小さい孔隙が、また集合体と集合体の間に各種の大きな孔隙が形成される。小さい孔隙は、(B)を貯留するなどして樹木の成長に寄与するし、大きな孔隙は、降雨の最中は浸透水の通り道となることもあるが、通常は空気の通路となる。このように様々なサイズの孔隙を持った構造が発達することにより、(C)がよく、かつ通気性もよいという樹木の土壌への相反した要求が満たされている。特にそれら二つの機能が共に高いのは(D)構造と(E)構造である。

  1. (A)粒子 (B)毛管水 (C)保水性 (D)団粒状 (E)塊状
  2. (A)有機物 (B)重力水 (C)透水性 (D)細粒状 (E)粒状
  3. (A)粒子 (B)重力水 (C)透水性 (D)団粒状 (E)塊状
  4. (A)有機物 (B)膨潤水 (C)保水性 (D)細粒状 (E)塊状
  5. (A)粒子 (B)毛管水 (C)透水性 (D)団粒状 (E)粒状
R1-31手引き 各論9章・1節・5|土壌の物理的環境
設問上の正解1

土壌粒子の集合体内部の小孔隙は毛管水を保持し、集合体間の大孔隙は排水・通気を担う。団粒状・塊状構造では大小孔隙が共存しやすい。

基本解説

良い土壌構造は、小孔隙で水を保ち、大孔隙で空気と排水を確保する

土壌粒子が集まって団粒や土塊をつくると、その集合体の内部には細かな孔隙が、集合体同士の間には大きな孔隙ができます。孔隙は総量だけでなく大きさの組合せが重要です。小孔隙は毛管力で水を保持し、大孔隙は降雨時の水路となり、排水後は空気の通路になります。水を保持する性質と、根の呼吸に必要な空気を供給する性質を同じ土壌で両立できます。

孔隙サイズと機能
孔隙降雨後の状態樹木への役割
小孔隙毛管力で水が残りやすい植物が利用できる毛管水の貯留
大孔隙重力水が比較的速く抜け、空気が入る排水・通気・根の伸長経路

重力水は大孔隙を通って排水される水で、長く貯留される中心ではありません。毛管水は粒子表面や小孔隙に保持され、根が利用できる主要な水です。ただし孔隙が細かすぎると水が強く保持されて利用しにくく、大孔隙だけではすぐ乾燥します。団粒状・塊状構造は大小孔隙が共存しやすく、保水性と通気性の均衡がよい構造です。

空欄の復元
  1. 集合体をつくる基本は土壌粒子なのでA=粒子。
  2. 小孔隙に保持されるのはB=毛管水。
  3. 通気性と両立させる相反的要求はC=保水性。
  4. 大小孔隙が発達するD=団粒状、E=塊状を選ぶ。

樹木医の手引き 第4版 p.538 ES版 75-76頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・5|土壌の物理的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・5R3-31A|選択肢別判定型

07土壌構造と透水性・保水性

問題

土壌構造と透水性や保水性との関係に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 粒状構造は乾燥した土壌の表層土壌にみられ、透水性に優れ、保水性に劣る。
  2. 堅果状構造は乾湿が繰り返される表層土壌にみられ、透水性と保水性のいずれも劣る。
  3. 団粒状構造は湿潤な表層土壌にみられ、透水性に優れ、保水性に劣る。
  4. 塊状構造は過湿な表層土壌にみられ、透水性に劣り、保水性に優れる。
  5. かべ状構造は過湿な下層土壌にみられ、透水性と保水性のいずれも劣る。
R3-31手引き 各論9章・1節・5|土壌の物理的環境
設問上の正解5

壁状構造は過湿な下層土壌に見られ、緻密で連続した土塊となるため、透水性・通気性が悪く、植物が利用できる水の保持も良好とはいえない。

  1. ×
    選択肢1

    粒状構造を乾燥表層に限ることはできず、良好な孔隙をもつ構造の保水性を一律に劣るともいえない。

    構造の名称だけでなく、大小孔隙の組合せから透水性と有効水保持を判断する。
  2. ×
    選択肢2

    堅果状構造は乾湿反復を受ける層でみられるが、表層に限定されず、透水性・保水性が常にともに劣るとするのは不正確である。

    硬く角張った土塊が根の伸長や水移動を妨げる場合がある構造として捉える。
  3. ×
    選択肢3

    団粒状構造は大小の孔隙が共存し、透水・通気だけでなく植物が利用できる水の保持にも優れる。

    団粒状構造は適潤な表層に発達し、透水・通気・保水の均衡がよい。
  4. ×
    選択肢4

    塊状構造を過湿な表層の構造と固定し、保水性に優れるとする組合せは適切でない。

    土塊の形・発達位置と、孔隙の連続性を別々に観察して物理性を評価する。
  5. ○
    選択肢5

    壁状構造は過湿な下層にみられる緻密で連続的な構造で、透水性が悪く、植物が利用できる水を適度に保持する性質にも劣る。

基本解説

土壌に水が多いことと、植物が使える水を適度に保持できることは同じではない

保水性は、単に土壌がぬれていることではなく、降雨後に植物が利用できる水を保持できる性質です。過湿な土壌は水で満たされていても、孔隙構造が緻密で空気が入らず、根にとって良好な保水・通気環境とはいえません。土壌構造問題では、見かけの水量と、有効水・排水・通気の機能を区別します。

代表的な土壌構造
構造みられやすい環境物理性
団粒状適潤な表層大小孔隙が共存し、透水・通気・保水の均衡がよい
堅果状乾湿反復を受ける層硬く角張る土塊となり、根の伸長や水移動を妨げる場合がある
壁状常時湿潤・過湿な下層緻密で連続し、透水性も植物に有効な保水性も不良
選択肢の形容を点検する
  • 団粒状構造を『透水性はよいが保水性は劣る』と片方だけにしない。
  • 壁状構造は過湿な下層にみられ、自由に水が通る構造ではない。
  • 過湿土では根が利用できる酸素が不足し、水があっても吸収機能が低下する。

樹木医の手引き 第4版 p.538 ES版 75-76頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・5|土壌の物理的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・5R3-33A|選択肢別判定型

08土壌の水湿状態

問題

土壌調査で判定される水湿状態に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 土を握った時に湿り気を感じない場合、水分張力はpF1.7以下に相当する。
  2. 土を握った時に湿り気を感じる場合、毛管移動停止点付近の水分が含まれる。
  3. 指で強く挟むと水がにじみ出す状態の土壌には、重力水と毛管移動水がいずれも含まれる。
  4. 握ると水がにじむ状態の土壌には、重力水が含まれない。
  5. 手に取ると水がしたたる状態の土壌には、毛管水しか含まれない。
R3-33手引き 各論9章・1節・5|土壌の物理的環境
設問上の正解2

土を握って湿り気を感じる状態は、毛管水の連続性が失われ始める毛管移動停止点付近の水分状態として整理する。

  1. ×
    選択肢1

    土が乾燥するほど水は強く保持され、水分張力とpFは高くなる。湿り気を感じない状態をpF1.7以下とはしない。

    pFが小さいほど湿潤、pFが大きいほど乾燥という方向を押さえる。
  2. ○
    選択肢2

    握って湿り気を感じる状態は、毛管水の連続移動が実質的に難しくなり始める毛管移動停止点付近として判定する。

  3. ×
    選択肢3

    強く挟んで初めて水がにじむ段階は主に毛管移動水を含む状態で、重力水まで含むと一律には判定しない。

    水が自然に排水される重力水と、毛管力で保持・移動する水を分ける。
  4. ×
    選択肢4

    握ると水がにじむほど湿潤な状態では、毛管移動水に加えて重力水を含む段階として扱う。

    にじみ方が強くなるほど含水状態が高まり、重力水の存在を考える。
  5. ×
    選択肢5

    手に取っただけで水がしたたる過湿状態では、毛管水だけでなく排水可能な重力水も多い。

    滴下する状態は気相が著しく少ない過湿状態として、根の酸欠も評価する。
基本解説

土の手触りは、水分量だけでなく水がどの強さで保持され、動けるかを推定する簡便法

土壌中の水は、重力で速やかに下へ動く重力水、毛管力で孔隙に保持される毛管水、粒子表面へ非常に強く結び付く水などに分けられます。土壌が乾くほど残った水は強く保持され、水分張力とpFは大きくなります。現地で土を握る判定は、この水の量と移動性を手触りから大まかに推定する方法です。

手触りと水分状態の方向
状態含まれる水の考え方
湿り気を感じない乾燥が進み水分張力は高い。pFが小さい状態ではない
握ると湿り気を感じる毛管水はあるが連続移動が難しくなり始める毛管移動停止点付近
強く挟む・握ると水がにじむより湿潤で、毛管移動水や条件により重力水を含む
手に取ると水がしたたる気相が少なく重力水も多い非常に湿潤な状態

同じ含水率でも、砂質土はさらりと感じ、粘土質土は粘りや湿りを強く感じるため、手触り判定には土性の影響があります。現地判定は根域の概況をつかむために用い、重要な診断では含水率、水分張力、三相組成、透水性などの測定で補います。

樹木医の手引き 第4版 p.538 ES版 75-76頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・5|土壌の物理的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・5R5-32A|選択肢別判定型

09土壌の物理的性質

問題

土壌の物理的性質に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 水分恒数は土壌が水を保持する力を水柱の高さで示したものである。
  2. 保水力の大きい土壌では有効水量も多い。
  3. 植物は重力水を利用できない。
  4. 一般に黒色土は褐色森林土よりも固相率が低い。
  5. 粗孔隙とは非毛管孔隙のことである。
R5-32手引き 各論9章・1節・5|土壌の物理的環境
設問上の正解4

黒色土の表層は火山灰・腐植の影響で軽く孔隙が多く、一般に褐色森林土の表層より固相率が低い。

  1. ×
    選択肢1

    水柱高などで表すのは水分張力やpFである。水分恒数は圃場容水量、毛管移動停止点、永久萎凋点など、生育・水移動上の節目となる水分状態をいう。

    水分恒数という状態名と、水を保持する強さを表す水分張力を区別する。
  2. ×
    選択肢2

    土壌が水を強く保持しても、その多くが根の吸えない水なら有効水量は増えない。

    有効水量は、根が利用可能な上限と下限の間の水量として考える。
  3. ×
    選択肢3

    重力水も排水されるまでの短時間は植物が利用し得る。ただし多すぎると気相を失わせて根の酸欠を招く。

    利用不能と断定せず、滞留時間と通気への悪影響を分けて考える。
  4. ○
    選択肢4

    黒色土の表層は火山灰由来の多孔質物質と腐植に富み、軽く孔隙が多いため、一般に褐色森林土より固相率が低い。

  5. ×
    選択肢5

    粗孔隙は比較的大きい孔隙を指し、非毛管孔隙だけでなく大きな毛管孔隙を含む整理がある。

    孔隙の大きさによる区分と、毛管力で水を保持するかによる区分を完全に同一視しない。
基本解説

土壌の水は、『保持できる量』と『根が利用できる量』を分けて考える

土壌は水を強く保持するほど植物に有利とは限りません。大きな孔隙から重力水が抜けた後の水分状態と、根が吸えなくなる永久萎凋点の間にある水が有効水量の基本です。粘土質土壌のように水を多く保持しても、粒子表面へ強く結び付いて根が使えない水が多ければ、有効水量は比例して増えません。短時間存在する重力水も根が全く利用できないわけではありませんが、多すぎると気相を失わせます。

用語を正確に分ける
用語意味
水分恒数圃場容水量、毛管移動停止点、永久萎凋点など、生育・水移動上の節目となる水分状態
水分張力・pF土壌が水を引き付ける強さを圧力や水柱高の対数で表す指標
粗孔隙比較的大きな孔隙。非毛管孔隙に限らず、大きな毛管孔隙を含む整理がある
有効水根が利用可能な範囲に保持された水

黒色土の表層は火山灰由来の多孔質物質と腐植を多く含み、軽くて孔隙に富むため、一般に褐色森林土の表層より固相率が低くなります。固相率が低いとは、同じ体積の中で土粒子が占める割合が小さく、液相と気相になり得る孔隙割合が大きいという意味です。

樹木医の手引き 第4版 p.538 ES版 75-76頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・6|土壌の化学的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・6H30-17A|選択肢別判定型

10pHの基礎

問題

水溶液の酸性度の指標であるpHに関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. pHは水素イオンの濃度を表わすものであり、例えばpH7はpH6より10倍量のH⁺イオンが溶存していることを意味する。
  2. 土壌のpHは水に懸濁したときのpHで表すが、同じ土壌を塩化カリウムの水溶液に懸濁すると、より低いpHを示す。
  3. コンクリートは水酸化カルシウムを含有しているので、空気に触れると強酸を生じ、土壌のpHが著しく低下して周囲の植物に悪影響を及ぼすことがある。
  4. アジサイの花弁は細胞の細胞基質のpHによって色が変わる。青い花色のアジサイでも、pH6以下の酸性雨が当たって、赤く変色することがある。
  5. 母材が同じ土壌で比べると、pHが低いと赤みが強く、pHが高いと彩度の低い土色を呈するが、有機物に富む土壌ではその違いを判別しにくい。
H30-17手引き 各論9章・1節・6|土壌の化学的環境
設問上の正解2

同じ土壌では一般にpH(KCl)がpH(H₂O)より低い。K⁺が土壌コロイド上の交換性H⁺・Al³⁺を液中へ追い出し、酸性が強く測定されるためである。

  1. ×
    選択肢1

    pHは1下がると水素イオン濃度が10倍になる。pH7の水素イオン濃度はpH6の10分の1である。

    pHが小さいほど酸性が強く、水素イオン濃度が高い。
  2. ○
    選択肢2

    KCl溶液ではK⁺が土壌コロイドに吸着したH⁺やAl³⁺を交換・溶出させるため、同じ土壌でも一般に水懸濁液より低いpHを示す。

  3. ×
    選択肢3

    コンクリート由来の水酸化カルシウムは強いアルカリ性を示し、周辺土壌のpHを上げる方向に働く。

    酸性化ではなくアルカリ化の影響として、根傷みや微量要素欠乏を考える。
  4. ×
    選択肢4

    アジサイの花色は主に根圏土壌のpHに伴うアルミニウムの溶解性・吸収性などに左右され、酸性雨が花弁へ直接作用して青から赤へ変えるという説明ではない。

    酸性側でアルミニウムを吸収しやすく青色系、アルカリ側で吸収しにくく赤色系になりやすい。
  5. ×
    選択肢5

    土色は母材、有機物、鉄の酸化・還元、水分状態などの影響が大きく、pHだけで赤色の鮮明さが一義的に決まるとはいえない。

    土色を酸化還元状態や有機物量と結び付け、pHとは別の診断項目として扱う。
基本解説

pHは対数尺度で、土壌では測定液によって見える酸性度が変わる

pHは水素イオン活量の負の常用対数で表されます。pHが1小さくなると水素イオンは約10倍、2小さくなると約100倍になります。したがってpH6はpH7より酸性が強く、水素イオンは約10倍です。数字の大小と酸性の強さが反対向きになるため、必ず『pH低下=H⁺増加』として確認します。

pHの関係
pH = −log₁₀[H⁺]
pH6のH⁺濃度はpH7の約10倍、pH5ならpH7の約100倍

土壌pHには、水へ懸濁して測るpH(H₂O)と、塩化カリウム溶液へ懸濁して測るpH(KCl)があります。K⁺が土壌コロイドの交換部位に保持されていたH⁺やAl³⁺と置き換わり、それらを溶液中へ出すため、一般に同じ土壌のpH(KCl)はpH(H₂O)より低く測定されます。水で見える現在の溶液酸性と、交換部位に潜む酸性の一部を引き出した値の違いです。

他の現象をpHだけで単純化しない
  • コンクリート由来の水酸化カルシウムはアルカリ性で、周辺土壌のpHを上げる方向に働く。
  • アジサイ花色は根圏pHがアルミニウムの可給性へ影響するなどの過程に関係し、酸性雨が花弁へ触れて直ちに赤くするものではない。
  • 土色は鉄の酸化状態、腐植、水分、母材などで決まり、pHだけで一律に決めない。

樹木医の手引き 第4版 p.544 ES版 76-77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・6|土壌の化学的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・6R1-29B|全体整理型

11土壌中のアルミニウムイオン

問題

次のうち、土壌に含まれているアルミニウム鉱物から毒性の強いアルミニウムイオンが溶解し、樹木の根に生育障害が多発する土壌として、正しいのはどれか。

  1. 強アルカリ性土壌
  2. 弱アルカリ性土壌
  3. 中性土壌
  4. 弱酸性土壌
  5. 強酸性土壌
R1-29手引き 各論9章・1節・6|土壌の化学的環境
設問上の正解5

土壌が強酸性になると、鉱物・交換部位に保持されていたアルミニウムがAl³⁺として溶出しやすくなり、根の伸長阻害などを起こす。

基本解説

アルミニウムは土壌に多くても、強酸性化して溶け出したときに根へ毒性を示す

アルミニウムは多くの土壌鉱物に含まれますが、中性付近では溶けにくい形で存在し、直ちに強い毒性を示すわけではありません。土壌が強く酸性化すると、鉱物や土壌コロイドの交換部位に保持されていたアルミニウムがAl³⁺などの活性な形で土壌溶液へ出やすくなります。根端は細胞分裂と伸長が盛んなため影響を受けやすく、根が短くなり、水・養分吸収が低下します。

強酸性化から生育障害まで
降雨・溶脱などでCa²⁺やMg²⁺などの塩基が減る土壌pHが低下する交換性・鉱物由来のAlが溶出しやすくなるAlが根端の細胞壁や膜、リン代謝などへ影響する根伸長が抑えられ、水・養分吸収と地上部生育が低下する
酸性土壌で同時に起こること
  • CaやMgなど塩基性陽イオンの不足が起こりやすい。
  • リンがアルミニウムや鉄と結び付き、植物が利用しにくくなることがある。
  • 樹種ごとに適正pHと耐性が違うため、pHだけで改良量を決めない。

樹木医の手引き 第4版 p.544 ES版 76-77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・6|土壌の化学的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・6R3-32A|選択肢別判定型

12土壌の化学的性質

問題

土壌の化学的性質に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 土壌のpH(H₂O)は、同じ土壌のpH(KCl)よりも低い。
  2. 土壌中の養分元素の多くは、水に溶けたイオンの状態で樹木に吸収される。
  3. 土壌有機物のC/N比は、有機物の分解に伴って高まる。
  4. CECは、土壌がどのくらいプラスに帯電しているかを表す指標である。
  5. 塩基飽和度が高い土壌は、有機物濃度に強く影響を受けている。
R3-32手引き 各論9章・1節・6|土壌の化学的環境
設問上の正解2

窒素、カリウム、カルシウムなど多くの養分元素は、土壌水に溶けたイオンの形で根に吸収される。

  1. ×
    選択肢1

    同じ土壌ではKClのK⁺が交換性H⁺やAl³⁺を溶出させるため、一般にpH(KCl)の方がpH(H₂O)より低い。

    通常はpH(H₂O)>pH(KCl)と覚える。
  2. ○
    選択肢2

    多くの養分元素は土壌溶液中の硝酸イオン、アンモニウムイオン、K⁺、Ca²⁺、リン酸イオンなどとして根に吸収される。

  3. ×
    選択肢3

    有機物の分解では炭素がCO₂として失われやすく、一般にC/N比は低下する。

    未分解で炭素に富む材料ほどC/N比が高く、分解の進行で低くなる方向を押さえる。
  4. ×
    選択肢4

    CECは土壌が正に帯電する程度ではなく、粘土・腐植等の負電荷部位が陽イオンを交換保持できる容量である。

    負電荷が多いほど、Ca²⁺、Mg²⁺、K⁺などを保持するCECが大きくなる。
  5. ×
    選択肢5

    塩基飽和度はCECのうち交換性Ca、Mg、K、Na等が占める割合で、有機物濃度だけに強く支配される指標ではない。

    CECと交換性塩基量の比として算出し、母材、溶脱、施肥、pH等も考慮する。
基本解説

根が直接取り込む養分は、土壌粒子そのものではなく土壌水に溶けたイオン

土壌には鉱物、有機物、交換部位、土壌水などさまざまな形で養分元素がありますが、根が直接吸収する中心は土壌溶液中のイオンです。窒素は主に硝酸イオンNO₃⁻やアンモニウムイオンNH₄⁺、カリウムはK⁺、カルシウムはCa²⁺、マグネシウムはMg²⁺、リンは主にリン酸イオンの形で根表面へ移動します。固体に保持された養分も、溶解・交換・分解を経て土壌溶液へ供給されて初めて吸収へつながります。

土壌中の貯蔵から根の吸収まで
鉱物・有機物・交換部位に養分が保持される風化、分解、イオン交換で土壌溶液へ放出されるイオンが水の流れや拡散、根の伸長によって根表面へ届く根の膜輸送体などを通って細胞内へ吸収される
他の選択肢に必要な基礎
用語正しい方向
pH(H₂O)とpH(KCl)同一土壌では一般にpH(H₂O)の方が高い
C/N比分解で炭素がCO₂として失われやすく、一般に低下する
CEC土壌の負電荷部位が陽イオンを交換保持できる容量
塩基飽和度CECのうち交換性Ca・Mg・K・Naなどが占める割合

樹木医の手引き 第4版 p.544 ES版 76-77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・6|土壌の化学的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・6R4-30A|選択肢別判定型

13土壌の養分特性

問題

土壌の養分特性に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 鉱質土壌のC:N比は、農耕地、樹林地ともに10程度である。
  2. 鉱質土壌中の無機態窒素量は、土壌微生物の活動が活発な夏季に高くなる。
  3. 砂質土壌や未熟土の陽イオン交換容量(CEC)は、一般的に30~50cmolc/kg(センチモルチャージ毎キログラム)であることが多い。
  4. 塩基飽和度は、CECに対する全可給態養分の電荷合計の割合である。
  5. 土壌中のカリウム、カルシウム、マグネシウムは、養分吸収の際に互いに拮抗作用を及ぼし合う。
R4-30手引き 各論9章・1節・6|土壌の化学的環境
設問上の正解5

カリウム、カルシウム、マグネシウムは、土壌交換部位や根の吸収過程で相互に拮抗し、一つの過剰が他の吸収を抑えることがある。

  1. ×
    選択肢1

    樹林地土壌は未分解・難分解性有機物の影響を受け、農耕地よりC/N比が高い傾向があるため、双方を一律に10程度とはできない。

    土地利用と有機物の質・分解段階を考慮してC/N比を読む。
  2. ×
    選択肢2

    夏は無機化が進みやすい一方、植物の吸収、微生物による固定、降雨による溶脱も増えるため、無機態窒素量が必ず高くなるとはいえない。

    生成量だけでなく、吸収・固定・流亡を含む収支で季節変化を考える。
  3. ×
    選択肢3

    砂質土壌や未熟土は粘土・腐植が少なく、CECは一般に小さい。30~50 cmolc/kgという高値を典型としない。

    粘土・腐植が多いほどCECが大きく、砂質・未熟土ほど小さい。
  4. ×
    選択肢4

    塩基飽和度の分子は交換性Ca、Mg、K、Na等の電荷量であり、全ての可給態養分の合計ではない。

    交換性塩基量÷CEC×100で表す指標として理解する。
  5. ○
    選択肢5

    K⁺、Ca²⁺、Mg²⁺は交換部位や根の吸収過程で競合し、一元素の過剰が他元素の吸収を抑える拮抗作用を示すことがある。

基本解説

養分は多ければよいのではなく、同じ電荷をもつイオン同士の比率が吸収を左右する

カリウムK⁺、カルシウムCa²⁺、マグネシウムMg²⁺はいずれも陽イオンとして土壌の交換部位に保持され、根の吸収過程でも相互に影響します。ある一つを過剰に施すと、交換部位や根表面での競合を通じて他の吸収が抑えられ、土壌に元素が存在しても欠乏症状が出ることがあります。これが養分間の拮抗作用です。総量だけでなく比率を見る理由です。

選択肢に必要な養分化学
論点正しい整理
C/N比森林土壌は未分解・難分解性有機物の影響で、農耕地より高い傾向がある
無機態窒素微生物の生成だけでなく植物吸収、微生物固定、溶脱もあるため、夏に必ず最大とはいえない
CEC砂質土・未熟土では粘土・腐植が少なく一般に小さい
塩基飽和度CECに対する交換性Ca・Mg・K・Na等の電荷量の割合で、全可給態養分ではない
K・Ca・Mg互いに拮抗し、一元素の過剰が他元素の吸収低下を招き得る

樹木医の手引き 第4版 p.544 ES版 76-77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・6|土壌の化学的環境
A深度III手引き 各論9章・1節・6R5-33A|選択肢別判定型

14土壌の化学的性質

問題

わが国の土壌の化学的性質に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 硝酸化成作用が活発な土壌ではpHが低い。
  2. 同一土壌であればpH(H₂O)はpH(KCl)よりも高い。
  3. 土壌中の陽イオンで最も多いのはカリウムである。
  4. 一般に森林の表層土壌のC/N比は農耕地の表層土壌よりも低い。
  5. 根粒菌による窒素固定活性は肥沃な土壌ほど高い。
R5-33手引き 各論9章・1節・6|土壌の化学的環境
設問上の正解2

同一土壌では、KClが交換性Alなどを溶液中へ出すため、pH(KCl)はpH(H₂O)より通常0.5~1程度低くなる。

  1. ×
    選択肢1

    硝酸化成は強酸性条件では一般に抑えられ、活発さを単純に低pHの指標とはできない。反応に伴うH⁺生成で酸性化へ寄与することとは別である。

    微生物活性に適するpHと、硝酸化反応が土壌pHへ及ぼす影響を区別する。
  2. ○
    選択肢2

    同じ土壌ではKClのK⁺が交換性H⁺やAl³⁺を液中へ出すため、一般にpH(H₂O)の方がpH(KCl)より高い。

  3. ×
    選択肢3

    土壌の交換性陽イオンでは一般にカルシウムが大きな割合を占め、カリウムが常に最多ではない。

    Ca、Mg、K、Na等の量と塩基飽和度を土壌ごとに確認する。
  4. ×
    選択肢4

    森林表層土壌は未分解・難分解性有機物の影響で、農耕地表土よりC/N比が高い傾向にある。

    森林土壌はC/N比が高め、耕地は管理と分解により低めという一般傾向で整理する。
  5. ×
    選択肢5

    窒素固定は植物が光合成産物を供給する高コストな共生であり、土壌中の利用可能な窒素が豊富なら根粒形成・固定活性は抑えられる。

    窒素が乏しいと固定の利益が高まり、窒素が豊富だと植物は既存窒素を利用する。
基本解説

土壌化学は、pH測定法・交換性塩基・C/N比・共生コストを別々に確認する

同じ土壌でも、水で測るpH(H₂O)と塩化カリウム溶液で測るpH(KCl)は一致しません。K⁺が交換部位のH⁺やAl³⁺を液中へ押し出すため、一般にpH(KCl)の方が0.5~1程度低く、pH(H₂O)>pH(KCl)となります。測定法を示さずpH値だけを比較しないことが重要です。

残る選択肢の基礎
論点正しい方向
硝酸化成アンモニア態窒素を硝酸態へ変える微生物反応で、強酸性ほど活発という単純関係ではない
交換性陽イオン多くの土壌ではCaが大きな割合を占め、Kが常に最多ではない
森林土壌のC/N比農耕地表土より一般に高い
根粒菌の窒素固定植物が光合成産物を供給する高コストな共生で、土壌窒素が豊富なら抑えられる
土壌窒素と根粒形成の関係
土壌中の利用可能な窒素が少ない窒素固定による利益が炭素コストを上回る植物が根粒菌へ光合成産物を配分する土壌窒素が豊富になると、根粒形成・固定活性を抑える

樹木医の手引き 第4版 p.544 ES版 76-77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・7|土壌調査と土壌障害の診断ポイント
C深度III手引き 各論9章・1節・7R1-30B|全体整理型

15土壌侵食

問題

次は、地力保全や環境保全の面から問題とされている土壌侵食に関する記述であるが、文中のA~Dの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。
地表の攪乱等により草本層や(A)が消失すると、土壌が露出し直接雨に曝されるようになる。林外雨や林内雨等の雨滴の衝撃により地表の細かい土粒子が跳ね飛ばされると、小石等の周囲が削られ(B)が形成されたり、また、分散した細かい土粒子により地表に(C)が形成され、地表に達した降水が土壌に滲み込み難くなり、地表流が生じて土壌侵食が引き起こされる。土壌侵食では、肥沃な暗色表層が先ず失われるが、一般に淡色の母材層等から、主として(D)作用により再び標準的な暗色表層が形成されるためには、わが国の森林環境下では数百年程度必要とされている。

  1. (A)低木層 (B)雨裂 (C)ノジュール (D)生物的
  2. (A)A₀層 (B)土柱 (C)クラスト (D)生物的
  3. (A)A₀層 (B)雨裂 (C)ノジュール (D)生物的
  4. (A)A₀層 (B)土柱 (C)ノジュール (D)化学的
  5. (A)低木層 (B)細溝 (C)クラスト (D)化学的
R1-30手引き 各論9章・1節・7|土壌調査と土壌障害の診断ポイント
設問上の正解2

草本層・A₀層が失われると雨滴が鉱質土壌を直撃し、土柱や表面クラストが形成され、浸透低下→地表流→侵食へ進む。暗色表層の再形成には主に生物作用と長い時間が必要である。

基本解説

土壌侵食は、地表被覆の消失が浸透低下と地表流を連鎖的に引き起こす

森林の地表では、草本層とA₀層が雨滴の衝撃を弱め、鉱質土壌を保護します。A₀層は落葉・落枝とその分解物からなる有機物層です。伐採、踏圧、裸地化などでこの被覆が失われると、雨滴が土粒子を直接たたき、細粒子を飛散させます。侵食は斜面を流れる水だけで始まるのではなく、雨滴による表面構造の破壊から始まります。

被覆消失から表土流亡まで
草本層・A₀層が消失する雨滴衝撃で細粒子が跳ね飛ばされる小石の下だけが保護され、周囲が削れて土柱ができる分散した細粒子が孔隙をふさぎ、表面クラストができる浸透能が低下し、地表流が増える養分と腐植に富む暗色表層から先に流亡する
用語の意味
用語意味
土柱小石などに雨滴から守られた部分だけが柱状に残った微地形
クラスト分散した細粒子が地表を薄く目詰まり・固結させた層
暗色表層腐植の供給と土壌生物・根の活動で発達する肥沃な表層

失われた暗色表層は、落葉供給、分解、土壌動物の混和、根の更新など主に生物作用を通じて再形成されます。母材層から標準的な表層が発達するには非常に長い時間がかかるため、流出後の復元より地表被覆を守る予防が重要です。

樹木医の手引き 第4版 p.550 ES版 77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・7|土壌調査と土壌障害の診断ポイント
C深度III手引き 各論9章・1節・7R1-33A|選択肢別判定型

16土壌分析に用いる用語

問題

次の土壌分析等に使用される用語に関する記述のうち、正しいのはどれか。

  1. C/N比とは、炭素率のことで、有機物等に含まれている炭素量と窒素量の比率であり、この比が高い有機物ほど微生物による分解が早い。
  2. pFとは、水が土壌に引きつけられている圧力を水柱の高さ(cm)で求め、これを対数で表示したものであり、土壌が乾燥するほどこの値が小さくなる。
  3. ORPとは、酸化還元電位のことで、ある酸化還元反応系における電子のやりとりの際に発生する電位のことであり、土壌の還元状態がすすむほどこの電位が低下する。
  4. pHとは、水素イオン指数のことで、酸性からアルカリ性の間に0~14の目盛りをつけて、酸・アルカリの度合いをその数字で表すもので、数字が大きいほど酸性度が強い。
  5. CECとは、陽イオン交換容量のことで、一定量の土壌等が陽イオンを吸着・保持する能力の大きさを示すもので、一般に粘土質な土壌より砂質な土壌ほどこの値が大きい。
R1-33手引き 各論9章・1節・7|土壌調査と土壌障害の診断ポイント
設問上の正解3

ORPは酸化還元電位で、土壌が還元状態へ進むほど一般に値が低下する。過湿・酸欠土壌の評価に用いる。

  1. ×
    選択肢1

    C/N比が高い有機物は窒素が相対的に少なく、微生物が利用できる窒素が制限されるため、一般に分解や窒素無機化が遅い。

    C/N比=炭素量÷窒素量と、値が高いほど一般に分解が遅いという方向を一組にする。
  2. ×
    選択肢2

    pFは水を引き離すのに必要な吸引圧を水柱高の常用対数で表すため、乾燥して水が強く保持されるほど大きくなる。

    湿潤でpFは小さく、乾燥でpFは大きい。
  3. ○
    選択肢3

    ORPは酸化還元電位で、酸素が乏しく還元状態が進むほど一般に低下する。過湿・酸欠土壌の評価に用いられる。

  4. ×
    選択肢4

    pHは水素イオン活量の負の対数であり、数値が小さいほど酸性が強い。

    pHが1下がると水素イオン濃度は約10倍になる。
  5. ×
    選択肢5

    CECは負電荷部位が陽イオンを交換保持できる容量で、粘土・腐植の少ない砂質土では一般に小さい。

    粘土質・腐植質ほどCECが大きく、砂質ほど小さいという基本傾向を押さえる。
基本解説

土壌分析用語は、定義だけでなく『値がどちらへ動くか』まで一組にする

土壌分析の選択肢は、用語の定義前半を正しく書き、最後の『高いほど』『低いほど』だけを逆にすることがあります。各指標について、何を測るか、値が上がると土壌状態がどう変わるか、樹木にどんな意味があるかの三点をそろえます。

五つの指標と値の方向
指標意味値が高い・低いとき
C/N比有機物中の炭素量÷窒素量高いほど窒素が相対的に少なく、一般に微生物分解や窒素無機化が遅い
pF水を土壌から引き離すのに必要な吸引圧を水柱cmの対数で表す乾燥し水が強く保持されるほど大きい
ORP酸化還元反応系の電子授受に伴う電位酸素が乏しく還元状態が進むほど低下する
pH水素イオン活量の負の対数数値が小さいほど酸性が強い
CEC陽イオンを交換吸着・保持できる容量一般に粘土や腐植が多いほど大きく、砂質土では小さい

ORPが低下する還元状態は、過湿で酸素の供給が少なく、微生物が別の物質を電子受容体として使う状況で進みます。根の酸素不足に加え、鉄やマンガンなどの化学形態変化、有害な還元生成物が問題になることがあります。したがって選択肢3は定義と値の方向が一致します。

樹木医の手引き 第4版 p.550 ES版 77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第1節・7|土壌調査と土壌障害の診断ポイント
C深度IV手引き 各論9章・1節・7R4-29A|選択肢別判定型

17土壌障害

問題

土壌障害に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 根系が分布する土壌の一部が過踏圧により堅密化した場合であっても、樹木全体の成長阻害の原因となる。
  2. 盛土害で樹木に生じる症状は過湿害と共通しており、対策として下層土壌の透水性を良好にすることが最も重要である。
  3. 乾燥害は下層土壌が堅密な土壌であれば起こらない。
  4. 高濃度のカドミウムやクロムなどの重金属や農薬類を含む土壌は薬剤で無害化しなくてはならない。
  5. 過湿害は土壌の通気性の良否にかかわらず土壌水分が多くなれば発生する。
R4-29手引き 各論9章・1節・7|土壌調査と土壌障害の診断ポイント
設問上の正解1

根域の一部が過踏圧で堅密化すると、その区間で根の伸長、酸素供給、水の浸透が阻害され、樹木全体の成長低下につながり得る。

  1. ○
    選択肢1

    主要な吸収根のある一部が堅密化するだけでも、根の伸長、酸素供給、水の浸透が制限され、樹木全体の吸水・養分吸収のボトルネックになり得る。

  2. ×
    選択肢2

    盛土害は過湿に似た酸欠症状だけでなく、根元埋没、土圧、既存根へのガス交換阻害などを伴う。下層透水性の改善だけを最重要とするのは不十分である。

    盛土厚、根元埋没、土性、排水、通気、既存根位置を調べ、原因ごとに対策する。
  3. ×
    選択肢3

    下層土が堅密だと根が深く伸びられず、利用できる土壌水の範囲が狭くなるため、むしろ乾燥害が起こりやすくなる。

    表層の保水と下層への根系発達の双方を確認する。
  4. ×
    選択肢4

    汚染土壌の処理は薬剤による無害化に限られず、物質・濃度・範囲に応じて掘削除去、封じ込め、洗浄、安定化等を選ぶ。

    汚染物質の性質と土地利用を調査し、法令・専門評価に基づく処理法を選定する。
  5. ×
    選択肢5

    過湿害の本質は根圏の酸素不足である。水分が多くても気相と酸素供給が保たれる条件では、同じ程度の障害が必ず生じるわけではない。

    含水量だけでなく、気相率、透水性、滞水時間、根の呼吸状態を評価する。
基本解説

土壌障害は、根域全体の平均ではなく『最も機能を制限する層・場所』を探す

樹木の根系は均一な土の中へ同じ密度で広がるわけではありません。歩道、園路、駐車、工事車両などの踏圧で根域の一部が堅密化すると、大孔隙がつぶれ、その場所では空気と水の移動、根の伸長が同時に妨げられます。根域の残りが健全でも、主要な吸収根が集中する場所や、水・酸素の通り道が遮断されれば、樹木全体の水・養分供給のボトルネックになり、樹冠の成長低下や枝枯れへつながります。

過踏圧が樹冠へ影響するまで
荷重で土壌粒子が詰まり、大孔隙が減る浸透・排水・酸素拡散が低下する根の呼吸と根端伸長が抑えられる有効根域と吸水・養分吸収能力が縮小する葉量・新梢成長が低下し、乾燥時の余裕が小さくなる
土壌障害を単一原因にしない
障害・条件診断で見ること一つの対策だけでは足りない理由
盛土害根元の埋没深、土性、ガス交換、停滞水、既存根の位置下層の透水改善だけで、根元埋没や酸素拡散阻害は解消しない
乾燥害根域深、保水性、表面被覆、灌水、堅密層下層が堅密だと根が浅くなり、むしろ乾燥に弱くなる
汚染土壌物質、濃度、範囲、移動性、土地利用掘削、封じ込め、洗浄、安定化など選択肢があり、薬剤処理だけではない
過湿害気相率、酸素、透水、滞水時間、根の状態水分量が多くても通気・酸素供給が保たれれば同じ被害にはならない
現場診断の進め方
  1. 施工・踏圧・盛土・排水変更の履歴を聞き取る。
  2. 根域を平面だけでなく深さ別に区切り、硬度、三相、透水、含水、臭気を測る。
  3. 細根の分布、色、弾力、腐敗を土壌条件と対応させる。
  4. 樹冠症状がいつ・どの方向から現れたかを根域の障害分布と重ねる。
  5. 原因層を特定してから、通気・排水・保水・踏圧防止などを選ぶ。

樹木医の手引き 第4版 p.550 ES版 77頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第2節・3|土壌改良方法
A深度IV手引き 各論9章・2節・3H30-31B|全体整理型

18過湿土壌への有機物すき込み

問題

次は過湿土壌への有機性物質の鋤込みによって引き起こされる弊害に関する記述であるが、文中のA~Eの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。

(A)などの有機性物質を土壌に鋤き込むと、微生物などの活動の(B)な活性化が引き起こされるので、一般に(C)の良い適潤性の土壌では理学性や化学性などが向上する。しかし(C)が不良な過湿土壌では、微生物などの活動により(D)の消費が進むので、土層内部は(D)が欠乏して還元状態となり、微生物相が(E)へと遷移し、樹木の根腐れなどが引き起こされる。

  1. A:腐葉土 B:一時的 C:保水性 D:養分 E:好気的なものから嫌気的なもの
  2. A:草木灰 B:持続的 C:通気性 D:酸素 E:嫌気的なものから好気的なもの
  3. A:腐葉土 B:持続的 C:保水性 D:養分 E:嫌気的なものから好気的なもの
  4. A:腐葉土 B:持続的 C:通気性 D:酸素 E:好気的なものから嫌気的なもの
  5. A:草木灰 B:一時的 C:通気性 D:養分 E:好気的なものから嫌気的なもの
H30-31手引き 各論9章・2節・3|土壌改良方法
設問上の正解4

腐葉土などの有機物は、通気性のよい適潤土では有効だが、過湿土では微生物活動が酸素を消費し、還元化・嫌気化を進めて根腐れを招くことがある。

基本解説

有機物は万能な改良材ではなく、過湿土では微生物の酸素消費を増やす負荷になる

腐葉土などの有機物を土壌へ混ぜると、微生物に炭素源とエネルギー源が供給され、分解活動が持続的に活発になります。通気性がよい適潤土では、分解に必要な酸素が孔隙を通じて補給され、腐植形成、団粒化、保水・保肥性の改善などの効果が期待できます。しかし過湿土では孔隙が水で満たされ、空気中から酸素が拡散する速さが非常に遅くなっています。この状態で分解しやすい有機物を加えると、微生物の酸素需要だけが増え、供給が追いつきません。

過湿土で有機物が根腐れを助長する流れ
腐葉土などを鋤き込み、微生物の基質が増える好気性微生物が有機物を分解し、酸素を消費する水で満たされた孔隙では大気からの酸素補給が遅い土層内が酸素欠乏となりORPが低下する微生物相が好気性中心から嫌気性中心へ移る根呼吸の阻害と有害な還元生成物により細根が壊死・腐敗する
同じ有機物でも結果を分ける条件
条件適潤・通気良好過湿・通気不良
酸素供給微生物消費を補給しやすい水中拡散が遅く供給不足
微生物相好気性分解が続きやすい嫌気性の代謝へ移行
根への結果構造・化学性改善が期待できる酸欠・還元物質・根腐れの危険
空欄の因果
  • A=腐葉土、B=持続的、C=通気性。
  • 消費され欠乏するD=酸素。
  • 微生物相はE=好気的なものから嫌気的なものへ遷移し、選択肢4となる。

樹木医の手引き 第4版 p.561 ES版 78頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第2節・3|土壌改良方法
B深度III手引き 各論9章・2節・3R1-17A|選択肢別判定型

19リン酸の性質と施肥

問題

肥料の三大要素の一つであるリン酸に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. リン酸はPという記号で表される元素で、有機態リンに区分されるリン酸化合物を植物は主に吸収する。
  2. リン酸は土壌母材にはほとんど含まれていない元素なので、多くの植物は大気中から直接あるいは共生微生物を介して、体内に取り込んでいる。
  3. 火山灰を母材とする土壌はリン酸吸収係数が小さいので、肥料としてリン酸を施用した場合の肥効が高い。
  4. リン酸は、葉緑素や遺伝子(DNA)、リグニンなどの構成元素であり、樹木の場合、幹の木部に比較的高濃度で含まれる。
  5. 養分としてのリン酸が欠乏すると、古い葉から葉色の暗緑色化や落葉などの可視症状が現われたり、細根の発達が不良になったりする。
R1-17手引き 各論9章・2節・3|土壌改良方法
設問上の正解5

リン酸が欠乏すると、古い葉の暗緑色化、場合によって紅紫色化・落葉、細根発達不良などが現れる。

  1. ×
    選択肢1

    Pは元素としてのリンの記号であり、植物は主に土壌溶液中の無機リン酸イオンを根から吸収する。有機態リン酸化合物をそのまま主に吸収するわけではない。

    元素リン、リン酸化合物、根が吸収する無機リン酸イオンを区別する。
  2. ×
    選択肢2

    リンは土壌母材にも含まれ、風化や有機物分解で供給される。窒素のように大気中の分子を直接または固定微生物を介して得る元素ではない。

    母材の風化、有機物の無機化、施肥、菌根による吸収補助をリン供給経路として捉える。
  3. ×
    選択肢3

    火山灰土壌は活性Al・Feがリン酸を強く固定するためリン酸吸収係数が大きく、施したリン酸の肥効は低下しやすい。

    吸収係数が大きいほど土壌に固定され、植物が利用しにくくなる。
  4. ×
    選択肢4

    リンはDNA・RNA、ATP、リン脂質などに重要だが、葉緑素やリグニンの中心的構成元素ではなく、幹木部に特に高濃度で蓄積するともいえない。

    リンをエネルギー移動、核酸、細胞膜、活発な生長組織と結び付ける。
  5. ○
    選択肢5

    リンは体内で再移動しやすいため、欠乏症状は古葉から出やすく、暗緑色化、場合による紅紫色化・早期落葉、細根発達不良などを生じる。

基本解説

リンはエネルギー移動と遺伝情報に不可欠だが、土壌では固定され利用しにくくなる

リンはATPなどのエネルギー代謝、DNA・RNAなどの核酸、細胞膜のリン脂質に必要な元素です。植物は主に土壌溶液中の無機リン酸イオンとして根から吸収します。大気中のリンを直接吸収するのではなく、母材の風化、有機物の分解、施肥などから土壌溶液へ供給されます。葉緑素やリグニンの中心的な構成元素ではありません。

火山灰土壌では活性の高いアルミニウムや鉄の表面へリン酸が強く吸着・反応し、植物が使いにくい形になります。これをリン酸固定といい、リン酸吸収係数は大きくなります。施肥した量が多くても、すぐ根へ届く有効態が多いとは限らないため、土壌pH、固定能、根系、菌根などを合わせて考えます。

リン欠乏の現れ方
項目特徴
症状が出やすい葉リンは体内で再移動しやすいため、古い葉から現れやすい
葉色暗緑色化し、植物によっては紅紫色化や早期落葉がみられる
根系・生育細根発達、分げつ・開花・成熟などが不良になることがある

樹木医の手引き 第4版 p.561 ES版 78頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第2節・3|土壌改良方法
A深度II手引き 各論9章・2節・3R1-32A|選択肢別判定型

20土壌改良材

問題

次の土壌改良材に関する記述のうち、正しいのはどれか。

  1. ロックウールは、玄武岩等の岩石や製鉄所から出る溶解スラグを高温で溶解し生成した人造鉱物繊維であり、主に土壌の化学性の改良に用いられる。
  2. 苦土石灰は、ドロマイト(苦灰岩)を熱して砕いたもので、炭酸カルシウムや酸化マグネシウムを主成分とし、主に土壌の物理性の改良に用いられる。
  3. けいそう土焼成粒は、珪藻の殻の堆積物である珪藻土を造粒して焼成したもので、主に土壌の化学性の改良に用いられる。
  4. バーミキュライトは、ひる石等の雲母系鉱物を高温で焼成したもので、主に土壌の物理性の改良に用いられる。
  5. パーライトは、主にガラス質の火山岩を高温で熱処理して生成される人工発泡体であり、主に土壌の化学性の改良に用いられる。
R1-32手引き 各論9章・2節・3|土壌改良方法
設問上の正解4

バーミキュライトはひる石などの雲母系鉱物を加熱膨張させた資材で、孔隙・保水・通気など主に物理性改善へ用いる。

  1. ×
    選択肢1

    ロックウールは人造鉱物繊維だが、主に孔隙、保水、通気など土壌の物理性改善に利用する。

    鉱物由来でも、化学反応ではなく繊維・孔隙構造を利用する資材として分類する。
  2. ×
    選択肢2

    苦土石灰はカルシウム・マグネシウムを供給し酸性土壌のpHを矯正する、主に化学性の改良材である。

    土を軽くする資材ではなく、pHと塩基組成を変える資材として扱う。
  3. ×
    選択肢3

    珪藻土焼成粒は多孔質の粒子により排水・通気等を改善するため、主用途は物理性の改良である。

    素材名ではなく、焼成粒が作る粗孔隙の働きで分類する。
  4. ○
    選択肢4

    バーミキュライトはひる石等を高温で加熱膨張させた軽量・多孔質資材で、保水や通気など主に物理性改善へ用いる。

  5. ×
    選択肢5

    パーライトは火山ガラスを加熱発泡させた多孔質資材で、主に排水・通気・保水など物理性を改善する。

    人工発泡体という製法と、物理性改良という用途を一組にする。
基本解説

土壌改良材は、原料より『物理性か化学性か』で分類する

整理表
資材主な役割
ロックウール人造鉱物繊維。保水・通気など物理性改善
苦土石灰pH矯正とCa・Mg供給。主に化学性改善
けいそう土焼成粒多孔質粒。排水・通気など物理性改善
バーミキュライト軽量・多孔質。保水性等の物理性改善。正答
パーライト火山ガラスの発泡体。排水・通気・保水など物理性改善

樹木医の手引き 第4版 p.561 ES版 78頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第2節・3|土壌改良方法
B深度III手引き 各論9章・2節・3R4-31A|選択肢別判定型

21養分の過剰・欠乏障害

問題

土壌の養分の過剰障害や欠乏障害に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 窒素、リン、カリウムの欠乏障害は老化した葉に現れやすい。
  2. 鉄の過剰障害によって植物によるマンガンの吸収能が低下する。
  3. 窒素の過剰障害によって樹木は病虫害に強くなるが、開花・結実しなくなる。
  4. カルシウムの過剰障害によってリン酸やマンガンの過剰障害が誘発される。
  5. カリウムの欠乏障害によって樹木の葉は黄色から褐色、さらに赤色に変化する。
R4-31手引き 各論9章・2節・3|土壌改良方法
設問上の正解1

窒素、リン、カリウムは植物体内で再移動しやすく、不足時には古葉から新しい組織へ回されるため、欠乏症状が老葉に現れやすい。

  1. ○
    選択肢1

    窒素・リン・カリウムは体内で再移動しやすく、不足すると古い葉から若い組織へ回されるため、欠乏症状が老葉に現れやすい。

  2. ×
    選択肢2

    鉄過剰で吸収が低下しやすい組合せとして重要なのはリンであり、マンガンとする記述は不適切である。

    元素間相互作用は『どの元素の過剰が、どの元素の欠乏を誘発するか』の方向まで覚える。
  3. ×
    選択肢3

    窒素過剰は軟弱徒長や組織の成熟遅延を招き、病虫害への抵抗性が低下する場合がある。開花・結実への悪影響も常に完全停止とは限らない。

    窒素過剰を徒長、耐性低下、生殖成長の遅れと結び付ける。
  4. ×
    選択肢4

    カルシウム等の過剰は拮抗やpH変化を通じて別元素の欠乏を誘発し得るが、リン酸やマンガンの過剰を誘発するという方向ではない。

    『過剰が別の欠乏を起こす』という養分拮抗の向きを確認する。
  5. ×
    選択肢5

    カリウム欠乏は古葉の葉縁から黄化・褐変・壊死が進むことが多いが、黄色から褐色、さらに赤色という一律の順序ではない。

    色だけでなく、古葉か新葉か、葉縁か葉脈間か、壊死の進み方を観察する。
基本解説

欠乏症状が古葉か新葉かは、元素を体内で再移動できるかによって決まる

養分が不足すると、植物は限られた元素を生長中の若い組織へ優先配分します。窒素、リン、カリウムは比較的再移動しやすく、古い葉に蓄えた養分を若葉へ転流できるため、古葉側から欠乏症状が現れやすくなります。カルシウムや鉄などは古い組織から再移動しにくく、不足時には新葉や生長点に症状が出やすいという対比が基本です。

移動性と症状位置
元素群体内移動性欠乏症状が出やすい場所
N・P・Kなど比較的高い古葉・老化葉
Ca・Feなど低い新葉・芽・生長点
過剰と欠乏をつなぐ
  • 鉄の過剰ではリンの吸収が低下し得る。本問の選択肢2は、低下する元素をマンガンへ入れ替えている。
  • 窒素過剰は軟弱徒長や組織の成熟遅延を招き、病虫害に必ず強くなるわけではない。
  • ある元素の過剰は、拮抗やpH変化を介して別元素の欠乏を誘発し得る。『別元素の過剰を誘発』と方向を逆にしない。
  • 葉色だけでは病害・根傷害・水分障害と区別できないため、症状位置、葉脈との関係、土壌・葉分析を合わせる。
  • カリウム欠乏では古葉の葉縁から黄化・褐変が進むことが多く、黄色→褐色→赤色という一律順序ではない。

樹木医の手引き 第4版 p.561 ES版 78頁

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各論 第9章 土壌の診断と対策第2節・3|土壌改良方法
A深度III手引き 各論9章・2節・3R4-32A|選択肢別判定型

22土壌改良材の効果

問題

土壌改良材の効果に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 黒曜石パーライトとロックウールは乾燥した土壌の改良に有効である。
  2. 珪藻土焼成粒や粘土鉱物焼成粒は過湿な土壌の改良に有効である。
  3. ピートモスには保肥力を高め、土壌の酸を中和する効果がある。
  4. ヤシガラ繊維には土壌の物理性とpHを改善する効果がある。
  5. モミ殻堆肥は保肥力を改善する効果が高い。
R4-32手引き 各論9章・2節・3|土壌改良方法
設問上の正解2

珪藻土焼成粒や粘土鉱物焼成粒は、多孔質で土中に粗孔隙をつくり、過湿土壌の排水・通気改善に用いられる。

  1. ×
    選択肢1

    黒曜石パーライトは主に排水・通気を改善する資材で、乾燥土へ一律に適するとはいえない。ロックウールの保水作用とも目的が異なる。

    乾燥、過湿、低通気のどれを直すかを診断し、資材を機能別に選ぶ。
  2. ○
    選択肢2

    珪藻土焼成粒や粘土鉱物焼成粒は多孔質で、土中に粗孔隙を作り、過湿土壌の排水・通気改善に用いられる。

  3. ×
    選択肢3

    ピートモスは保水・保肥性を高める酸性有機資材であり、土壌酸を中和する効果を主としない。

    酸性資材である点を踏まえ、pH矯正が必要なら別の資材と管理する。
  4. ×
    選択肢4

    ヤシガラ繊維は主に孔隙・保水・通気等の物理性を改善し、pH矯正を主効果とする資材ではない。

    有機繊維の構造を利用する物理性改良材として捉える。
  5. ×
    選択肢5

    モミ殻堆肥は主に通気・排水等の物理性改善に寄与し、保肥力の改善が特に高い資材とはいえない。

    腐熟度、粒径、分解性を確認し、保肥力目的の資材と区別する。
基本解説

土壌改良材は、商品名ではなく『どの孔隙・化学性を変えるか』で選ぶ

土壌改良材には、粗孔隙を増やして排水・通気をよくするもの、細孔や有機物を増やして保水・保肥性を高めるもの、pHを調整するものがあります。目的の異なる資材を一括して『土をよくするもの』と考えると、乾燥土へ排水材を入れたり、過湿土へ保水材を多量に入れたりする逆効果が起こります。まず障害が排水、保水、通気、保肥、pHのどこにあるかを診断します。

本問の資材と主な働き
資材主な性質・用途注意
珪藻土焼成粒・粘土鉱物焼成粒多孔質の粒子が粗孔隙をつくり、過湿土の排水・通気を改善排水先がなければ資材だけで解決しない
黒曜石パーライト軽量で排水・通気改善に使う乾燥土へ一律に適するとはしない
ロックウール空隙をもち保水にも用いられるパーライトと同じ効果に固定しない
ピートモス保水・保肥性を高める酸性有機資材酸を中和する資材ではない
ヤシガラ繊維・モミ殻堆肥主に物理性改善pH矯正や高い保肥力を主効果と決めつけない
過湿土改良の順序
  1. 滞水深、土性、硬盤、地下水位、排水先を確認する。
  2. 必要なら暗渠・勾配・根域高の確保など水の出口をつくる。
  3. 多孔質焼成粒などで粗孔隙と通気性を補う。
  4. 施工後の沈下・再締固め・水分と根の回復を監視する。

樹木医の手引き 第4版 p.561 ES版 78頁

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