TREE DOCTOR EXAM · SYSTEMATIC REFERENCE V6.0.1

各論 第6章 樹木と菌類のかかわり

収録18問。ワイド画面では左に問題、右に正答・解説を表示し、狭い画面では縦方向に読み進められます。

各論 第6章 樹木と菌類のかかわり

各問題のランク・深度は詳細分析の正本です。学習状態は明示的に選択してください。

各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
B深度III手引き 各論6章・1節・1H30-23B|全体整理型

01真核生物と原核生物

問題

次のア~オを、真核生物と原核生物に分類した組み合わせのうち、正しいのはどれか。

ア)Rhizobium leguminosarum(根粒菌の1種)
イ)Saccharomyces cerevisiae(酵母)
ウ)Escherichia coli(大腸菌)
エ)Armillaria mellea(ナラタケ)
オ)Bursaphelenchus xylophilus(マツノザイセンチュウ)

  1. 真核生物:ア、イ、ウ、エ 原核生物:オ
  2. 真核生物:ア、イ、ウ 原核生物:エ、オ
  3. 真核生物:イ、エ、オ 原核生物:ア、ウ
  4. 真核生物:エ、オ 原核生物:ア、イ、ウ
  5. 真核生物:オ 原核生物:ア、イ、ウ、エ
H30-23手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解3

酵母、ナラタケ、マツノザイセンチュウは真核生物。根粒菌と大腸菌は原核生物である。

基本解説

原核生物と真核生物の違いは、体の大きさや単細胞かどうかではなく『細胞内の構造』

生物の細胞は、大きく原核細胞と真核細胞に分けられます。原核細胞にはDNAを膜で囲んだ核がなく、細菌と古細菌が該当します。真核細胞には核があり、ミトコンドリアなど膜で囲まれた細胞小器官をもちます。植物、動物、菌類などは真核生物です。単細胞の酵母は真核生物で、微小な線虫も動物なので真核生物です。『小さい』『単細胞』『菌という名前』だけでは原核か真核かを決められません。

設問の五生物を分類する
生物生物群原核・真核判断理由
Rhizobium leguminosarum(根粒菌)細菌原核細菌には膜で囲まれた核がない
Saccharomyces cerevisiae(酵母)菌類真核単細胞だが菌類で核をもつ
Escherichia coli(大腸菌)細菌原核代表的な細菌
Armillaria mellea(ナラタケ)菌類真核担子菌類に属する菌類
Bursaphelenchus xylophilus(マツノザイセンチュウ)動物(線形動物)真核微小でも多細胞動物
ひっかけを避ける
  • 『菌』という日本語は細菌にも菌類にも使われるが、細菌は原核、菌類は真核である。
  • 酵母は単細胞なので細菌に見えやすいが、核をもつ菌類である。
  • 線虫は病原体として扱われても細菌や菌類ではなく、動物である。

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
A深度II手引き 各論6章・1節・1H30-24B|全体整理型

02担子菌類による樹木病害

問題

次の樹木病害のうち、病原が担子菌門に属するのはどれか。

  1. 五葉マツ類発疹さび病
  2. クリ胴枯病
  3. ニレ立枯病
  4. カラマツ先枯病
  5. マツ・カラマツつちくらげ病
H30-24手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解1

五葉マツ類発疹さび病の病原であるさび病菌は担子菌門に属する。

基本解説

さび病=担子菌を最初の固定点にする

試験で押さえる事項
  • 担子菌には、さび病菌、もち病菌、多くの木材腐朽菌などが含まれる。
  • 炭疽病、胴枯病、立枯病、先枯病などには子のう菌に属する病原が多い。
  • 病名の語尾だけで完全に分類できないため、代表病害を菌群とセットで覚える。

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
B深度III手引き 各論6章・1節・1R1-21B|全体整理型

03植物の病気の原因

問題

次は、植物の病気の原因に関する記述であるが、文中のA~Dの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。
植物の病気を引き起こす原因には、発病に最も大きな役割を果たしている一次的原因である主因と、発病を助長する環境要因などの(A)が存在する。また、病気にかかるには植物自身がもつ病気にかかりやすい性質があり、植物の種や栽培品種によって病気の程度は大きく異なる。これは(B)と呼ばれる。(A)の例として、マツ類材線虫病では(C)が、カラマツ先枯病では(D)があげられる。

  1. (A)誘因 (B)素因 (C)土壌の酸性化 (D)陰湿な環境
  2. (A)誘因 (B)素因 (C)夏季の高温や少雨 (D)陰湿な環境
  3. (A)誘因 (B)素因 (C)夏季の高温や少雨 (D)強風
  4. (A)素因 (B)誘因 (C)土壌の酸性化 (D)陰湿な環境
  5. (A)素因 (B)誘因 (C)夏季の高温や少雨 (D)強風
R1-21手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解3

発病を助長する環境要因が誘因、宿主がもつ病気へのかかりやすさが素因。マツ材線虫病では夏季の高温・少雨、カラマツ先枯病では強風が誘因となる。

基本解説

発病は、直接原因だけでなく『病原・宿主・環境』が重なることで起こる

樹木に病原体が存在しても、必ず同じ程度に発病するとは限りません。発病を考える基本は、病原体などの直接原因、病気にかかりやすい宿主、発病を助ける環境が同時にそろうことです。これを病害三角形として整理すると、病原体の防除だけでなく、樹勢や土壌、水分、風などを改善する意味が理解できます。

主因・素因・誘因
用語意味例
主因発病に最も直接的で不可欠な一次原因病原菌、細菌、線虫など
素因宿主がもつ病気へのかかりやすさ樹種・品種、樹齢、遺伝的感受性、衰弱状態
誘因発病や進展を助長する環境条件高温・少雨、過湿、強風、傷害など

マツ類材線虫病では、マツノザイセンチュウが主因ですが、夏季の高温・少雨は水分状態を悪化させ被害を進める誘因になります。カラマツ先枯病では、強風が枝葉の傷や感染条件に関わる誘因として挙げられます。これらは病原体そのものではないため主因と呼ばず、宿主の遺伝的性質でもないため素因とも呼びません。

診断での考え方
どの病原体・原因が直接関与するかを確認する樹種・品種・樹齢・樹勢など宿主側の感受性を見る気象、土壌、水分、傷害など発病を助ける環境を調べる三者の重なりから発病と重症化を説明する

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
A深度III手引き 各論6章・1節・1R1-22B|全体整理型

04さび病菌

問題

次は、さび病菌に関する記述であるが、文中のA~Dの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。
さび病菌は(A)菌類に属する。樹木に寄生する菌種の大部分は異種寄生性であり、例えば、五葉マツ類発疹さび病菌の宿主はゴヨウマツ類と(B)、二葉マツ類こぶ病菌の宿主はアカマツやクロマツなどと(C)、ナシ赤星病菌の宿主はナシと(D)である。

  1. (A)子のう (B)スグリ類 (C)ナラ類 (D)ビャクシン類
  2. (A)子のう (B)スグリ類 (C)ビャクシン類 (D)ナラ類
  3. (A)子のう (B)ナラ類 (C)スグリ類 (D)ビャクシン類
  4. (A)担子 (B)スグリ類 (C)ナラ類 (D)ビャクシン類
  5. (A)担子 (B)ナラ類 (C)ビャクシン類 (D)スグリ類
R1-22手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解4

さび病菌は担子菌類。五葉マツ類発疹さび病はゴヨウマツ類とスグリ類、二葉マツ類こぶ病はマツ類とナラ類、ナシ赤星病はナシとビャクシン類を行き来する。

基本解説

さび病は、病原菌の分類と『二種類の宿主を渡る生活環』を一体で理解する

さび病菌は担子菌類に属する絶対寄生性の病原菌群です。多くの種は生活環の途中で複数の胞子型をつくり、樹木に寄生するものの多くは、生活環を完結するために異なる二種類の宿主を使います。これが異種寄生性です。一方の宿主だけで症状を観察しても、周辺にもう一方の宿主があれば感染源が維持されるため、病害診断と管理では宿主対を知る必要があります。

本問で覚える三つの宿主対
病害一方の宿主もう一方の宿主
五葉マツ類発疹さび病ゴヨウマツ類スグリ類
二葉マツ類こぶ病アカマツ・クロマツなどナラ類
ナシ赤星病ナシ類ビャクシン類
異種寄生性の基本像
宿主A上である胞子型が形成される胞子が宿主Bへ感染する宿主B上で別の胞子型が形成されるその胞子が再び宿主Aへ感染し、生活環がつながる

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
B深度III手引き 各論6章・1節・1R3-17B|全体整理型

05病原体に対する植物の防御反応

問題

次は病原体に対する植物の反応に関する記述であるが、文中のA~Dの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。
病原菌の攻撃に対する植物の防御反応として[A]の産生や過敏感反応が知られている。[A]は感染によって[B]に合成される抗菌性の[C]である。過敏感反応は感染部位の周辺で起きる自発的な[D]で、病原菌を感染部位に封じ込める効果がある。

  1. (A)ファイトアレキシン (B)恒常的 (C)一次代謝産物 (D)反応帯形成
  2. (A)ファイトアレキシン (B)誘導的 (C)二次代謝産物 (D)細胞死
  3. (A)エンボリズム (B)恒常的 (C)二次代謝産物 (D)抗原抗体反応
  4. (A)アレロパシー (B)恒常的 (C)一次代謝産物 (D)反応帯形成
  5. (A)アレロパシー (B)誘導的 (C)一次代謝産物 (D)抗原抗体反応
R3-17手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解2

ファイトアレキシンは感染刺激によって誘導的に合成される抗菌性の二次代謝産物。過敏感反応では感染部周辺の細胞が速やかに死に、病原体を局所へ封じ込める。

基本解説

植物の防御は、『抗菌物質をつくる』方法と『感染部を切り離す』方法をもつ

植物は移動して病原体から逃げられないため、表皮や細胞壁など常に備わる防御に加え、感染を認識した後に防御反応を誘導します。ファイトアレキシンは、感染や傷害などの刺激を受けて新たに合成・蓄積される低分子の抗菌性二次代謝産物です。生長や呼吸に直接必要な一次代謝産物ではなく、感染前から常に同じ量がある恒常的成分とも区別します。

二つの誘導防御
防御反応起こること病原体への効果
ファイトアレキシン産生感染後に抗菌性二次代謝産物を誘導合成する病原体の増殖や侵入を化学的に抑える
過敏感反応感染部周辺の細胞が速やかに局所的な細胞死を起こす生きた細胞を必要とする病原体への栄養供給と拡大を抑える
感染認識から封じ込めまで
植物細胞が病原体由来の刺激を認識する防御関連遺伝子と代謝経路が活性化するファイトアレキシンなどが感染部へ蓄積する必要に応じ局所的な細胞死が起こり、感染部を封じ込める

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
B深度III手引き 各論6章・1節・1R3-24B|全体整理型

06昆虫が媒介する樹木病原体

問題

樹木の病気の中には、昆虫により媒介されるものがある。次のA~Cの写真の昆虫が媒介する病気の病原体の組み合わせとして、正しいのはどれか。

R3-Q24の原本設問図版
原本から切り出した設問図版
  1. (A)Bursaphelenchus xylophilus (B)Ophiostoma ulmi (C)Raffaelea quercivora
  2. (A)Bursaphelenchus xylophilus (B)Raffaelea quercivora (C)Ophiostoma ulmi
  3. (A)Ophiostoma ulmi (B)Bursaphelenchus xylophilus (C)Raffaelea quercivora
  4. (A)Ophiostoma ulmi (B)Raffaelea quercivora (C)Bursaphelenchus xylophilus
  5. (A)Raffaelea quercivora (B)Ophiostoma ulmi (C)Bursaphelenchus xylophilus
R3-24手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解4

A=ニレ類を加害するキクイムシ類とOphiostoma ulmi、B=カシノナガキクイムシとRaffaelea quercivora、C=マツノマダラカミキリとBursaphelenchus xylophilusの対応である。

基本解説

媒介病害は、『宿主―媒介昆虫―病原体』の三点セットで覚える

昆虫媒介病害では、昆虫による食害だけで被害が成立するのではなく、昆虫が病原体を感染木から健全木へ運ぶことで病気が広がります。したがって、昆虫の形態同定、病原体名、宿主樹種、代表病害を一組にします。媒介昆虫の発生時期や侵入部位を知ることは、感染が起きる前に生活環を断つ防除にもつながります。

写真A~Cの対応
写真媒介昆虫病原体代表病害・宿主
Aニレ類を加害するキクイムシ類Ophiostoma ulmiニレ立枯病・ニレ類
BカシノナガキクイムシRaffaelea quercivoraナラ枯れ・ナラ類やカシ類
CマツノマダラカミキリBursaphelenchus xylophilusマツ材線虫病・マツ類
写真問題の解き方
  1. 体形からカミキリムシ型か小型のキクイムシ型かを大別する。
  2. 宿主や穿入痕など、写真と設問にある補助情報を使って媒介昆虫を特定する。
  3. 昆虫名から対応する病原体と病害を呼び出し、三組すべてを照合する。

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
B深度III手引き 各論6章・1節・1R4-22B|全体整理型

07感染時の細胞壁変化

問題

次は、植物組織に病原体が感染したときにみられることがある細胞壁の変化に関する記述である。文中のA~Dの空欄を埋める用語の組み合わせとして、正しいのはどれか。
植物組織に病原体が感染すると、感染部と健全部の境界では、細胞壁や中葉に[A]の蓄積がみられることがある(木化)。[A]はフェニルプロパノイド類が重合してできた高分子である。また、細胞壁に[B]の蓄積がみられることがある(コルク化)。[B]は健全な植物の周皮を構成する[C]の細胞壁に沈着している成分で、芳香族化合物と脂肪族化合物が重合した高分子化合物である。植物は[A]や[B]が蓄積した細胞壁で感染部を取り囲むことで、病原体の移動を[D]に防いでいる。

  1. (A)スベリン (B)リグニン (C)コルク組織 (D)化学的
  2. (A)スベリン (B)リグニン (C)コルク形成層 (D)物理的
  3. (A)スベリン (B)ヘミセルロース (C)コルク形成層 (D)物理的
  4. (A)リグニン (B)ヘミセルロース (C)コルク形成層 (D)化学的
  5. (A)リグニン (B)スベリン (C)コルク組織 (D)物理的
R4-22手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解5

感染境界でリグニンが蓄積すると木化、スベリンが蓄積するとコルク化が起こり、病原体の移動を物理的に制限する。

基本解説

感染部を囲む細胞壁は、木化とコルク化によって病原体の通路を狭める

病原体が組織へ侵入すると、植物は感染部と健全部の境界で細胞壁の性質を変え、病原体が外へ広がりにくい障壁をつくることがあります。木化ではリグニンが蓄積して細胞壁が強固になり、コルク化ではスベリンが蓄積して水や物質を通しにくくします。これは病原体を直接毒殺するというより、移動経路を物理的に遮断・遅延する防御です。

リグニンとスベリンを区別する
反応蓄積する成分成分の特徴防御上の働き
木化リグニンフェニルプロパノイド類が重合した高分子細胞壁や中葉を強固にし、侵入・分解に抵抗する
コルク化スベリン芳香族成分と脂肪族成分を含む高分子疎水性の障壁をつくり、水や病原体の移動を抑える

スベリンは感染時だけに現れる物質ではなく、健全な周皮の外側にあるコルク組織の細胞壁にも沈着しています。したがってCはコルク組織です。コルク形成層は細胞をつくる分裂組織であり、スベリンが厚く沈着した保護細胞層そのものとは区別します。

空欄を決める順序
  1. 『木化』からA=リグニンを確定する。
  2. 『コルク化』からB=スベリンを確定する。
  3. 健全周皮でスベリンが沈着するC=コルク組織を入れる。
  4. 壁で囲む作用なのでD=物理的とし、選択肢5を選ぶ。

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
A深度II手引き 各論6章・1節・1R4-23B|全体整理型

08子のう菌類・担子菌類と病害

問題

菌類に起因する病気の病原は、子のう菌類と担子菌類に属するものが多い。次のア~オの病気の病原を、子のう菌類と担子菌類に分類した組み合わせとして、正しいのはどれか。
ア)アオキ炭疽病
イ)カエデ類うどんこ病
ウ)五葉マツ類発疹さび病
エ)サクラ類てんぐ巣病
オ)ツツジ類もち病

  1. 子のう菌類:ア、イ、エ 担子菌類:ウ、オ
  2. 子のう菌類:ア、エ、オ 担子菌類:イ、ウ
  3. 子のう菌類:イ、エ 担子菌類:ア、ウ、オ
  4. 子のう菌類:イ、ウ、オ 担子菌類:ア、エ
  5. 子のう菌類:エ、オ 担子菌類:ア、イ、ウ
R4-23手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解1

子のう菌類はアオキ炭疽病、カエデ類うどんこ病、サクラ類てんぐ巣病。担子菌類は五葉マツ類発疹さび病、ツツジ類もち病である。

基本解説

病名を、子のう菌三つ・担子菌二つに仕分ける

整理表
菌群本問の病害
子のう菌類炭疽病、うどんこ病、サクラ類てんぐ巣病
担子菌類さび病、もち病
試験で押さえる事項
  • まず『さび病・もち病=担子菌』を固定し、残りを子のう菌へ置くと速い。
  • 病害名の語感ではなく、病原菌の系統分類を問う問題である。

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
C深度II手引き 各論6章・1節・1R5-01A|選択肢別判定型

09地衣類の共生・樹木への影響

問題

樹木の樹皮にはしばしばコケ類やウメノキゴケなどの地衣類が付着しているが、この地衣類に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 地衣類は、樹木から栄養分を吸収しているので、その樹木に深刻な被害を与える。
  2. 地衣類とは、菌類と、緑藻類やシアノバクテリアなどが共生関係を結んでできた複合体である。
  3. 地衣類は、シダ類やコケ類などと同様に、維管束をもつ。
  4. 地衣類は、光合成を行わないので、生育に光は必要ない。
  5. コケ類は、大気汚染の指標に用いられるが、地衣類は環境への適応性が高いので大気汚染の指標とならない。
R5-01手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解2

地衣類は菌類と、緑藻類またはシアノバクテリアなどの光合成生物が共生してできた複合体である。

  1. ×
    選択肢1

    地衣類は樹皮を主に付着基質として利用し、樹木から大量の養分を吸収する寄生者ではない。

    衰弱木で増えていても、付着を衰弱原因と即断せず光・湿度・樹皮状態を確認する。
  2. ○
    選択肢2

    地衣類は菌類と、緑藻類またはシアノバクテリアなどの光合成共生者が一体となった共生複合体である。

  3. ×
    選択肢3

    地衣類には根・茎・葉へ水や養分を運ぶ維管束がない。コケ類・シダ類と同一の分類群でもない。

    菌類主体の葉状体・樹枝状体・痂状体などとして理解する。
  4. ×
    選択肢4

    共生する緑藻類やシアノバクテリアが光合成を行うため、生育には光が必要である。

    光合成共生者が有機物を供給し、菌類が構造と水分保持等を担う。
  5. ×
    選択肢5

    地衣類は大気汚染物質を表面から取り込みやすく、種ごとの感受性差や分布を大気環境の指標として利用できる。

    環境への適応性が一律に高いのではなく、汚染への反応差が指標価値を生む。
基本解説

地衣類は一つの植物ではなく、菌類中心の共生複合体

光合成共生者が有機物を供給菌類が体の構造、水分保持、無機物獲得を担う一体となって樹皮・岩上などへ定着
試験で押さえる事項
  • 樹皮は付着基質であり、地衣類が樹木から大量の養分を吸って深刻な寄生害を起こすという理解は誤り。
  • 地衣類に維管束はない。コケ・シダと同じ分類群でもない。
  • 光合成共生者がいるため生育に光が必要。
  • 大気汚染への感受性を利用し、地衣類の分布や多様性が環境指標に使われる。

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
B深度IV手引き 各論6章・1節・1R5-23B|全体整理型

10真核生物系統樹における菌類

問題

下図は真核生物の系統樹であるが、1~5のうち菌類に該当するものとして、正しいのはどれか。

R5-Q23の原本設問図版
原本から切り出した設問図版
  1. 系統樹1
  2. 系統樹2
  3. 系統樹3
  4. 系統樹4
  5. 系統樹5
R5-23手引き 各論6章・1節・1|病害診断と防除のための基礎知識
設問上の正解5

菌類は動物と比較的近い共通祖先をもち、植物群とは別の系統に位置する。図では動物の近傍から分岐する5が菌類に当たる。

基本解説

系統樹は『横に近いもの』を探す図ではなく、共通祖先の分岐点を比較する図

系統樹は、生物群がどの共通祖先から分岐したかについての仮説を枝分かれで表します。枝の先端が現在の生物群、枝が合流する節が共通祖先です。二群の近縁度は、先端同士の紙面上の距離ではなく、枝を根元側へたどったときにどれだけ新しい節を共有するかで判断します。ある節から先の枝を回転させても系統関係は変わらないため、左右の並び順を暗記してはいけません。

番号の付いた系統樹を読む手順
  1. 図の根元側と枝先側を確認し、進化の向きを把握する。
  2. 既知の動物群の枝先から根元へ戻り、すぐ手前の共通分岐点を探す。
  3. その分岐点から分かれる姉妹側の大きな群を確認する。
  4. 植物群ではなく、動物と比較的新しい共通祖先をもつ枝にある番号5を菌類と判定する。

菌類は細胞壁をもち動かないため植物に似て見えますが、光合成をせず、外部へ酵素を出して有機物を分解・吸収する従属栄養生物です。分子系統では、菌類は植物より動物に近い系統に位置し、動物・菌類などはオピストコンタという大きな系統群に含まれます。ただし、菌類が動物に含まれるわけではなく、それぞれ独立した系統です。

外見と系統を混同しない
群栄養の得方系統上の要点
植物主に光合成で有機物をつくる菌類・動物とは別の大きな系統
菌類外部消化後に有機物を吸収する動物と比較的新しい共通祖先をもつ
動物有機物を摂食し体内で消化する菌類の近縁側だが菌類とは別系統
系統樹で言えないこと
  • 枝先が右側にあるほど『進化している』とはいえない。すべて現生群なら同じ時間を経ている。
  • 枝の長さに尺度の説明がなければ、変化量や年代を勝手に読み取らない。
  • 近くに印刷された二群でも、共有する節が古ければ近縁とはいえない。

樹木医の手引き 第4版 p.227 ES版 56-57頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・2|葉・新梢部の病害
A深度II手引き 各論6章・1節・2H30-19B|全体整理型

11葉の病徴と病名

問題

植物の病名は病徴に基づいて決められることが多い。次のうち、主に葉に現れる病徴によって特徴づけられる病気として、正しいのはどれか。

  1. 赤衣病
  2. がんしゅ病(癌腫病)
  3. こうやく病(膏薬病)
  4. とうそう病(痘瘡病)
  5. 腐らん病(腐爛病)
H30-19手引き 各論6章・1節・2|葉・新梢部の病害
設問上の正解4

とうそう病(痘瘡病)は、葉に痘痕状・かさぶた状の病斑を生じることが病名の手掛かりとなる。

基本解説

病名を、症状が現れる器官へ戻す

整理表
病名主に連想する部位・病徴
とうそう病葉の痘痕状病斑
赤衣病・こうやく病枝幹表面を菌糸膜が覆う
がんしゅ病幹・枝・根などのこぶ状肥大
腐らん病幹・枝の樹皮壊死・腐敗
試験で押さえる事項
  • 病名だけで診断を確定せず、病徴、標徴、樹体全体、生育環境、発生経過を合わせて判断する。
用語を押さえる
病徴
病気に反応して植物側に現れる変色、萎凋、壊死、変形など。
標徴
菌糸、胞子、子実体など、病原体そのものが肉眼的に現れたもの。

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・2|葉・新梢部の病害
A深度II手引き 各論6章・1節・2R1-18B|全体整理型

12葉面の異常と病名

問題

次の写真は、葉の表面に異常が現われた常緑広葉樹の葉である。樹病の診断では病徴や標徴だけでなく樹体全体の様子や生育環境、履歴なども勘案して病名を判断すべきだが、この写真からわかる範囲で最も可能性が高い病名として、正しいのはどれか。

R1-Q18の原本設問図版
原本から切り出した設問図版
  1. そうか病
  2. うどんこ病
  3. 炭疽病
  4. 白斑病
  5. 小黒紋病
R1-18手引き 各論6章・1節・2|葉・新梢部の病害
設問上の正解2

写真では葉面に白い粉をまぶしたような菌叢が広がり、うどんこ病の可能性が最も高い。

基本解説

白い粉状被覆を、単なる退色と区別する

試験で押さえる事項
  • うどんこ病の典型は、葉面の白色~灰白色の菌糸・分生子。進行すると葉の黄化・早期落葉を伴うことがある。
  • 炭疽病や各種斑点病では、壊死性の褐色斑・黒点などが中心になりやすい。
  • 写真一枚だけでは確定診断に限界がある。葉裏、発生分布、拡大経過、顕微鏡観察を追加する。
用語を押さえる
菌叢
植物表面などで肉眼的に見える菌糸や胞子の集まり。

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第1節・2|葉・新梢部の病害
A深度III手引き 各論6章・1節・2R5-22A|選択肢別判定型

13うどんこ病

問題

うどんこ病に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 病原は担子菌門に属する菌類である。
  2. 病原は絶対寄生菌であり、人工培養ができない。
  3. 病原は異種寄生性であり、近くに中間宿主が生えていると被害が激しくなる。
  4. 罹病葉の表面に見られるうどん粉状のものは、葉に形成された病原の夏胞子堆である。
  5. 病原は主にカメムシなどの吸汁性昆虫により伝播される。
R5-22手引き 各論6章・1節・2|葉・新梢部の病害
設問上の正解2

うどんこ病菌は生きた宿主細胞から養分を得る絶対寄生菌で、通常の人工培地だけでは培養できない。

  1. ×
    選択肢1

    うどんこ病菌は子のう菌類に属し、担子菌類ではない。

    担子菌類のさび病菌と混同しない。
  2. ○
    選択肢2

    うどんこ病菌は生きた宿主細胞へ吸器を差し込んで養分を得る絶対寄生菌で、通常の無生物培地だけでは人工培養できない。

  3. ×
    選択肢3

    異なる中間宿主を必要とする異種寄生性は、うどんこ病菌一般の特徴ではない。

    異種寄生を典型とするさび病菌の生活環と区別する。
  4. ×
    選択肢4

    白いうどん粉状部分は葉面を伸びる菌糸と分生子などで、夏胞子堆ではない。

    夏胞子・夏胞子堆はさび病で用いる用語である。
  5. ×
    選択肢5

    うどんこ病菌は主に分生子等が風で飛散して伝播し、カメムシなどの吸汁性昆虫を必須の媒介者としない。

    胞子形成と風散布を基本経路として捉える。
基本解説

うどんこ病は、葉面の白い菌叢と『生きた宿主を必要とする』性質を結び付ける

うどんこ病では、葉や若い枝の表面に白いうどん粉を振ったような菌叢が現れます。白い部分は主に表面を伸びる菌糸と、多数形成された分生子です。病原菌は子のう菌類に属し、吸器を生きた宿主細胞へ差し込んで養分を得ます。このように生活と増殖に生きた宿主組織を必要とする菌を絶対寄生菌といい、通常の無生物培地だけで人工培養できません。

似た病害用語を区別する
項目うどんこ病混同しやすいもの
分類子のう菌類さび病菌は担子菌類
白い粉状物菌糸・分生子など夏胞子堆はさび病で使う用語
生活様式絶対寄生一般的な腐生菌のように培地だけで増殖しない
伝播主に胞子が風などで飛散吸汁性昆虫の媒介を必須としない
診断時の見方
  • 白色菌叢の分布、葉の変形・黄化、宿主樹種を確認する。
  • 白い付着物をすべてうどんこ病と決めず、害虫の分泌物や汚れなども除外する。
  • 病原菌が生きた細胞へ依存するため、感染組織の状態と宿主の生育段階が発病へ関わる。

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第2節・1|腐朽病害のメカニズム
AA深度III手引き 各論6章・2節・1H30-22A|選択肢別判定型

14木材の変色と腐朽

問題

木材の変色と腐朽に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 生立木の心材に達するような傷がつけられると、還元作用により心材部に変色が発生する。
  2. 木材の辺材部が青~青緑~黒色に変色する青変現象は、特定の菌類が材内でメラニン系の色素を生産するために起こる。
  3. 青変を起こす菌類は、辺材のセルロースやリグニンを主な栄養源として成長する。
  4. 木材の腐朽型は樹種に特有の性質で、1つの樹種が異なる型の腐朽を起こすことはない。
  5. 白色腐朽が進むと腐朽材は全体にもろくなって粉状になり、褐色腐朽が進むと腐朽材は繊維状になる。
H30-22手引き 各論6章・2節・1|腐朽病害のメカニズム
設問上の正解2

青変は、辺材内で菌が増殖し、菌糸のメラニン系色素などによって青~青緑~黒色に見える現象。強度を担う細胞壁を主に分解する腐朽とは区別する。

  1. ×
    選択肢1

    傷周辺の材変色には酸化反応や樹木の防御反応などが関与し、還元作用による心材変色と一律には説明できない。

    変色の位置・色・傷との関係を確認し、化学変化と腐朽を区別する。
  2. ○
    選択肢2

    青変は特定菌が辺材内で増殖し、菌糸に形成されたメラニン系色素などにより青色から黒色に見える現象である。

  3. ×
    選択肢3

    青変菌は辺材の糖類等を利用し、セルロースやリグニンを主に分解して強度を低下させる腐朽菌とは異なる。

    変色と細胞壁分解による腐朽を分ける。
  4. ×
    選択肢4

    腐朽型は樹種だけで固定されず、侵入した菌の酵素系や材の状態によって異なる。一樹種に複数型の腐朽が起こり得る。

    樹種名ではなく、菌種と分解された材成分から腐朽型を判断する。
  5. ×
    選択肢5

    記述は白色腐朽と褐色腐朽の材質を逆にしている。白色腐朽は白っぽく繊維状、褐色腐朽は褐色で立方状に割れ、もろく粉状になりやすい。

    リグニンまで分解する白色腐朽と、セルロース等を主に失う褐色腐朽を対応させる。
基本解説

材が色づいたことと、細胞壁が分解され強度が落ちたことを分ける

木材の変色と腐朽は同じではありません。変色は色素や化学反応によって材色が変わる現象で、直ちに主要な細胞壁成分が失われたとは限りません。腐朽は、菌がセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを酵素で分解し、材の物理的性質や強度を低下させる現象です。診断では、色だけで空洞や危険度を決めず、硬さ、割れ方、範囲などを確認します。

青変・白色腐朽・褐色腐朽
現象主な仕組み材の特徴
青変辺材内の特定菌がつくるメラニン系色素などで青~黒く見える主に辺材の糖類などを利用し、細胞壁を大きく分解する腐朽とは区別する
白色腐朽セルロース等に加えてリグニンを分解できる白っぽくなり、繊維状になりやすい
褐色腐朽セルロース・ヘミセルロースを主に分解し、褐色のリグニンが相対的に残る褐色で、立方状に割れ、もろく粉状になりやすい
選択肢を判断する基礎
  • 傷の周囲の変色には酸化や樹木の防御反応などが関わり、単純な還元作用とはしない。
  • 青変菌はセルロースやリグニンを主栄養源として大きく破壊する腐朽菌とは異なる。
  • 腐朽型は樹種だけで固定されず、侵入した菌の酵素系や材の条件によって変わる。
  • 白色腐朽と褐色腐朽の材の外観を逆にしない。

樹木医の手引き 第4版 p.281 ES版 60頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第2節・1|腐朽病害のメカニズム
AA深度III手引き 各論6章・2節・1R3-21A|選択肢別判定型

15樹木の腐朽病害

問題

樹木の腐朽病害に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 生立木の腐朽病害は、心材腐朽はまれで、辺材腐朽がよくみられる。
  2. 生立木における腐朽の進展は、辺材腐朽では軸方向よりも接線方向の方が早く、心材腐朽ではその逆である。
  3. 白色腐朽は針葉樹に多く発生し広葉樹での発生は少なく、褐色腐朽は広葉樹に多く発生し針葉樹での発生は少ない。
  4. 針葉樹の辺材腐朽では溝腐症状を呈することがあり、その病原菌としてチャアナタケモドキやモミサルノコシカケが知られている。
  5. 街路樹や公園の樹木の幹折れや根返りを引き起こす心材腐朽菌として、チャカイガラタケやナラタケが知られている。
R3-21手引き 各論6章・2節・1|腐朽病害のメカニズム
設問上の正解4

針葉樹の辺材腐朽では溝腐症状を呈することがあり、チャアナタケモドキやモミサルノコシカケが病原として知られる。

  1. ×
    選択肢1

    生立木では、枯枝跡や傷口等から菌が侵入して進む心材腐朽も一般的にみられる。

    心材腐朽・辺材腐朽・根株腐朽を侵入部位と症状で区別する。
  2. ×
    選択肢2

    腐朽の進展方向は、心材・辺材という区分だけで軸方向と接線方向が機械的に逆転するものではない。

    菌種、材組織、侵入口、水分条件等を含めて判断する。
  3. ×
    選択肢3

    一般的傾向は記述と逆で、白色腐朽は広葉樹で多く、褐色腐朽は針葉樹で比較的多い。

    腐朽型は分解酵素と基質の関係で理解し、樹種だけで絶対視しない。
  4. ○
    選択肢4

    針葉樹の辺材腐朽では縦溝状の溝腐症状を示すことがあり、チャアナタケモドキやモミサルノコシカケが病原として知られる。

  5. ×
    選択肢5

    チャカイガラタケは幹枝腐朽、ナラタケは根株腐朽の代表であり、両者を心材腐朽菌として同列には扱えない。

    菌名を腐朽部位・倒壊形式と結び付ける。
基本解説

腐朽病害は、菌名だけでなく『どの部位が腐るか』で整理する

生立木の腐朽は、幹や枝の内部にある心材が腐る心材腐朽、生きた辺材側が腐る辺材腐朽、根や根株が腐る根株腐朽などに分けられます。侵入口、進展方向、外観症状、倒壊形式が異なるため、すべてを『幹の中が腐る病気』としてまとめません。心材腐朽も生立木で一般にみられ、枯枝跡や傷などから侵入することがあります。

部位による整理
型主な腐朽部位診断上の意味
心材腐朽幹・枝内部の心材外観が健全でも内部空洞や残存壁厚を評価する
辺材腐朽樹皮に近い機能材外面の陥没・溝・形成層障害などが出ることがある
根株腐朽根と地際部根返りや根元折れに関わり、地上部だけでは把握しにくい

針葉樹の辺材腐朽では、腐朽部が幹の縦方向に溝状となる溝腐症状を示すことがあります。チャアナタケモドキやモミサルノコシカケが病原として知られるため、選択肢4が正しい記述です。白色腐朽は広葉樹で多く、褐色腐朽は針葉樹で比較的多い傾向があり、選択肢3は逆です。

一律な進展方向を決めない
  • 腐朽の進み方は、心材・辺材という区分だけで軸方向と接線方向が自動的に逆になるわけではない。
  • 菌種、材組織、水分、侵入口などを合わせて判断する。
  • チャカイガラタケの幹枝腐朽と、ナラタケの根株腐朽を同じ心材腐朽菌として扱わない。

樹木医の手引き 第4版 p.281 ES版 60頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第2節・1|腐朽病害のメカニズム
AA深度III手引き 各論6章・2節・1R4-25A|選択肢別判定型

16生立木の腐朽病害

問題

次の生立木の腐朽病害に関する記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 腐朽病害の原因となる菌の多くは子のう菌門に属するが、一部は担子菌門のクロサイワイタケ目に属する。
  2. 子のう胞子や担子胞子により腐朽病が広がった場合、新たな被害木からは同じ遺伝子型の菌が検出される。
  3. 日本の主要造林樹種の中では、ヒノキが最も腐朽病の被害を受けやすい。ヒノキの腐朽病の主な病原菌は、ハナビラタケ、レンゲタケ、チウロコタケモドキである。
  4. 非赤枯性溝腐病は、チャアナタケモドキにより引き起こされる幹の辺材腐朽病である。スギの品種であるサンブスギが本病に感受性である。
  5. 南根腐病は、マツノネクチタケにより引き起こされる根株腐朽病である。被害は南西諸島に広く発生しており、近年では九州の人工林に被害が拡大している。
R4-25手引き 各論6章・2節・1|腐朽病害のメカニズム
設問上の正解4

非赤枯性溝腐病はチャアナタケモドキによるスギ幹の辺材腐朽病で、サンブスギが高い感受性を示す。

  1. ×
    選択肢1

    生立木の材質腐朽を起こす菌は担子菌類が中心である。また、クロサイワイタケ目は子のう菌類であり、記述は分類も逆である。

    材質腐朽菌は担子菌類を中心に整理し、子のう菌類のクロサイワイタケ目と区別する。
  2. ×
    選択肢2

    有性生殖で生じる担子胞子や子のう胞子は遺伝的組換えを経るため、親個体と同一の遺伝子型になるとは限らない。

    同一遺伝子型を増やす栄養繁殖・無性的増殖と、有性生殖による胞子形成を分ける。
  3. ×
    選択肢3

    ヒノキが他樹種より一律に最も材質腐朽を受けやすいとはいえず、列挙された菌と宿主・病害の対応にも誤りがある。

    樹種ごとの感受性は、腐朽菌、侵入部位、傷、立地条件との組合せで判断する。
  4. ○
    選択肢4

    非赤枯性溝腐病はチャアナタケモドキによる辺材腐朽で、サンブスギが特に被害を受けやすい。

  5. ×
    選択肢5

    南根腐病の病原菌をマツノネクチタケとする対応が誤りである。病名の似た根株腐朽病害を混同している。

    南根腐病はシマサルノコシカケによる病害として整理し、マツノネクチタケによる病害と区別する。
基本解説

非赤枯性溝腐病は、『病原菌・腐朽部位・宿主品種』を三点で固定する

木材腐朽菌の多くは、木材細胞壁の成分を分解する酵素をもつ担子菌類です。病害名を覚えるときは、菌の分類だけでなく、幹・辺材・根株のどこを腐らせるか、どの樹種や品種が感受性を示すかを一組にします。非赤枯性溝腐病では、幹の辺材が縦に腐朽して溝状の症状を生じる点が名称と診断をつなぎます。

正答を構成する三要素
要素本問での内容
病原菌チャアナタケモドキ
病害型スギ幹の辺材腐朽病である非赤枯性溝腐病
感受性品種スギ在来品種のサンブスギ
他の選択肢を切る基礎
  • 主要な生立木腐朽菌は担子菌類が多く、『多くは子のう菌』は逆である。
  • 子のう胞子や担子胞子は有性生殖で生じるため、別の感染木から必ず同じ遺伝子型が得られるわけではない。菌糸の栄養繁殖による同一クローンと区別する。
  • 主要造林樹種の腐朽感受性をヒノキが一律に最大とせず、病害ごとの宿主関係を見る。
  • 南根腐病の病原と分布について、マツノネクチタケによる病害と取り違えない。

同じ樹種内でも品種によって感受性が違う点は、遺伝的素因が病害発生に関わる例です。現場では病名だけで危険度を決めず、腐朽範囲、残存する健全部、樹冠荷重、周囲の被害対象を別に評価します。

樹木医の手引き 第4版 p.281 ES版 60頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第2節・4|主な腐朽病害
C深度II手引き 各論6章・2節・4R1-23B|全体整理型

17根株腐朽菌と幹枝腐朽菌

問題

次のうち、(A)根株腐朽を起こす菌種と、(B)幹や枝の腐朽を起こす菌種の組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. (A)カイガラタケ (B)シマサルノコシカケ
  2. (A)ツガサルノコシカケ (B)ナラタケ
  3. (A)ヒイロタケ (B)ベッコウタケ
  4. (A)ベッコウタケ (B)カワラタケ
  5. (A)ナラタケ (B)カイメンタケ
R1-23手引き 各論6章・2節・4|主な腐朽病害
設問上の正解4

ベッコウタケは根株腐朽を起こす代表菌、カワラタケは幹・枝や枯死材に生じる腐朽菌として整理する。

基本解説

菌名だけでなく、発生位置を診断情報として覚える

整理表
腐朽位置診断で見る場所本問の代表
根株腐朽地際、根張り、根頸部、根返り兆候ベッコウタケ
幹・枝腐朽傷口、剪定痕、枯枝、幹上部カワラタケ
試験で押さえる事項
  • 根株腐朽は外観から見えにくく、樹冠衰退や根元の子実体、根返り履歴を合わせる。
  • 子実体が出る位置は手掛かりだが、菌種同定と腐朽範囲をそれだけで断定しない。

樹木医の手引き 第4版 p.291 ES版 61頁

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各論 第6章 樹木と菌類のかかわり第2節・5|木材腐朽菌の観察と同定
C深度II手引き 各論6章・2節・5R4-24B|全体整理型

18木材腐朽菌の子実体写真

問題

次のA~Eは木材腐朽菌の子実体の写真であるが、コフキサルノコシカケとベッコウタケの写真の組み合わせとして、正しいのはどれか。

R4-Q24の原本設問図版
原本から切り出した設問図版
  1. コフキサルノコシカケ:A ベッコウタケ:D
  2. コフキサルノコシカケ:A ベッコウタケ:E
  3. コフキサルノコシカケ:B ベッコウタケ:C
  4. コフキサルノコシカケ:B ベッコウタケ:E
  5. コフキサルノコシカケ:C ベッコウタケ:D
R4-24手引き 各論6章・2節・5|木材腐朽菌の観察と同定
設問上の正解2

Aがコフキサルノコシカケ、Eがベッコウタケ。発生位置と子実体の質感・形を組み合わせて判定する。

基本解説

コフキは粉を吹く多年生棚状、ベッコウは根元のロゼット状

整理表
菌写真の識別キー診断上の注意
コフキサルノコシカケ幹に付く厚い棚状の多年生子実体。上面が胞子で粉を吹いたように見える幹・根株の白色腐朽と関係する
ベッコウタケ地際・根元に重なって広がる柔らかい子実体。若い時は黄褐色~橙褐色根株腐朽により根返り・地際破断の危険を高める
試験で押さえる事項
  • 写真は成熟度・湿潤状態・光で色が変わる。色だけでなく、硬さ、棚状かロゼット状か、発生位置を見る。
  • 子実体を除去しても材内菌糸と腐朽は消えない。危険度診断を別途行う。

樹木医の手引き 第4版 p.294 ES版 61頁

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