TREE DOCTOR EXAM · SYSTEMATIC REFERENCE V6.0.1

各論 第5章 農薬の適正使用

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各論 第5章 農薬の適正使用

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各論 第5章 農薬の適正使用1|農薬一般
C深度III手引き 各論5章・1R4-17C|重点誤答型

01殺虫剤の作用機序

問題

病害虫の化学防除に用いる農薬は、対象とする生物の生理作用を攪乱することで効果を現す。次のうち、殺虫効果をもつ薬剤として、正しいのはどれか。

  1. MDBA(メトキシジクロロ安息香酸)など、植物ホルモン作用を示す薬剤
  2. DCMU(ジウロン)など、光化学系Ⅱでの反応を阻害する薬剤
  3. ヘキサコナゾールなど、エルゴステロールの生合成を阻害する薬剤
  4. グルホシネートなど、グルタミン合成酵素の働きを阻害する薬剤
  5. ダイアジノンなど、アセチルコリンエステラーゼを阻害する薬剤
R4-17手引き 各論5章・1|農薬一般
設問上の正解5

ダイアジノンは有機リン系殺虫剤で、アセチルコリンエステラーゼを阻害し、昆虫の神経伝達を攪乱する。

注意すべき選択肢

2

光化学系IIは植物の光合成装置で、DCMU(ジウロン)は除草剤。植物特有の光合成を標的にする薬剤は除草剤へ分類する。

3

エルゴステロールは菌類の細胞膜成分で、ヘキサコナゾールは殺菌剤。菌類の膜形成阻害は殺菌作用と判断する。

4

グルタミン合成酵素を阻害するグルホシネートは植物の窒素代謝を乱す除草剤。酵素阻害という語だけで殺虫剤とせず、標的生物の代謝経路を見る。

基本解説

農薬は商品名ではなく、『どの生物のどの生理機構を止めるか』で分類する

農薬は対象生物の生命活動に必要な反応を妨げて効果を示します。殺虫剤、殺菌剤、除草剤の名称だけを暗記するより、標的が昆虫の神経、菌類の細胞膜、植物の光合成やアミノ酸代謝のどこにあるかを考えると分類できます。同じ『酵素阻害』でも、標的生物と経路が違えば用途も違います。

本問の薬剤と標的
薬剤・作用主な対象分類
MDBA:植物ホルモン様作用植物の成長調節を乱す除草剤
DCMU(ジウロン):光化学系II阻害植物の光合成を止める除草剤
ヘキサコナゾール:エルゴステロール生合成阻害菌類の細胞膜形成を妨げる殺菌剤
グルホシネート:グルタミン合成酵素阻害植物の窒素代謝を乱す除草剤
ダイアジノン:アセチルコリンエステラーゼ阻害昆虫の神経伝達を乱す殺虫剤
ダイアジノンが神経系へ作用する流れ
神経末端からアセチルコリンが放出される通常はアセチルコリンエステラーゼが速やかに分解する酵素が阻害されるとアセチルコリンが残る神経刺激が持続し、正常な運動や摂食ができなくなる

樹木医の手引き 第4版 p.185 ES版 51-52頁

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各論 第5章 農薬の適正使用1|農薬一般
C深度III手引き 各論5章・1R5-19B|全体整理型

02農薬希釈の計算

問題

ある農薬の400倍希釈液を20L用意しようとしたところ、計量時に目盛りを読み間違え、原液100mLに水を加えて20Lにした希釈液を作ってしまった。この希釈液の一部を計り取り、改めて水を加えて目的の希釈液を作る場合、計り取る希釈液の量と加える水の量として、正しいのはどれか。

  1. 間違って作った希釈液50mLに水20Lを加える。
  2. 間違って作った希釈液400mLに水16Lを加える。
  3. 間違って作った希釈液400mLに水20Lを加える。
  4. 間違って作った希釈液1Lに水19Lを加える。
  5. 間違って作った希釈液10Lに水10Lを加える。
R5-19手引き 各論5章・1|農薬一般
設問上の正解5

原液100mLを全量20Lにした液は200倍希釈。目標の400倍は濃度を半分にすればよいので、誤調製液10Lへ水10Lを加える。

基本解説

希釈計算は、倍率を直接足し引きせず『含まれる原液量』を保存して考える

400倍液とは、原液1に対して最終液量が400になる濃度です。希釈倍率が大きいほど薄いことに注意します。水を加えても農薬原液の量は変わらず、全体の体積だけが増えるので、濃度は体積に反比例します。本問では、まず誤って作った液の実際の倍率を求め、そこから目標濃度まで何倍に薄めるかを考えます。

誤調製液から400倍液を作る
  1. 原液100mL=0.1Lを最終20Lにしたので、20÷0.1=200倍液である。
  2. 200倍液を400倍液にするには、濃度を1/2、すなわち体積を2倍にする。
  3. 誤調製液10Lには原液50mL相当が含まれる。
  4. そこへ水10Lを加えて全量20Lにすれば、20L÷0.05L=400倍となる。
濃度保存の式
希釈前の濃度 × 取り出す液量 = 希釈後の濃度 × 最終液量
200倍液の濃度は原液の1/200、400倍液は1/400なので、同じ原液量なら最終体積は2倍

樹木医の手引き 第4版 p.185 ES版 51-52頁

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各論 第5章 農薬の適正使用3|樹木の主な病害虫と農薬による防除
A深度II手引き 各論5章・3R1-15A|選択肢別判定型

03微生物農薬

問題

微生物農薬に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 微生物農薬とは微生物の代謝産物から農薬の薬効成分を精製して製剤したもので、化学的に合成した場合より不純物に富むが、周辺環境への悪影響が少ないとされている。
  2. 昆虫類を防除対象とする微生物農薬の研究も進められているが、現在までに農薬登録されて市販されている微生物農薬は殺菌剤だけである。
  3. 一般に安定した防除効果が得られるが速効性はなく、防除対象に対する選択性が低い。
  4. 化学合成した農薬に比べると薬剤抵抗性が発生しやすいので、散布の繰り返し回数の制限が厳しい。
  5. 化学合成した農薬と同様に、容器には物理的化学的性状や最終有効年月が表示されている。
R1-15手引き 各論5章・3|樹木の主な病害虫と農薬による防除
設問上の正解5

微生物農薬も登録農薬であり、容器には性状や有効期限など、適正使用・品質管理に必要な表示がある。

  1. ×
    選択肢1

    微生物農薬は、細菌・糸状菌・ウイルスなど防除作用をもつ微生物そのものを有効成分として利用するものが中心である。

    微生物の代謝産物を精製した化学物質だけを指す定義ではない。
  2. ×
    選択肢2

    昆虫病原細菌・糸状菌・ウイルス等を利用した殺虫用の微生物農薬も登録・市販されている。

    微生物農薬には殺菌用途と殺虫用途の双方がある。
  3. ×
    選択肢3

    微生物農薬は一般に標的選択性が高い一方、温度・湿度・紫外線等の影響を受け、効果が常に安定するとは限らない。

    速効性・安定性・選択性を化学農薬と同じ前提で扱わない。
  4. ×
    選択肢4

    微生物農薬は作用が多面的な場合もあり、化学合成農薬より薬剤抵抗性が必ず発生しやすいとはいえない。

    抵抗性リスクは有効成分・作用機構・使用法ごとに評価する。
  5. ○
    選択肢5

    登録農薬として品質と適正使用を管理するため、容器には物理的化学的性状や最終有効年月等が表示される。

基本解説

微生物そのものを有効成分として使う農薬

試験で押さえる事項
  • 微生物の代謝産物を精製しただけの薬剤とは区別し、生きた細菌・糸状菌・ウイルス等を利用する製剤が中心。
  • 殺菌用途だけでなく、昆虫病原微生物などを利用する殺虫用途の製品もある。
  • 一般に標的選択性が高く、環境条件の影響を受けやすいため、効果の速さ・安定性は化学農薬と同じとは限らない。
  • 作用点が多様で、化学合成農薬より抵抗性リスクが必ず高い、という説明は不適切。
用語を押さえる
微生物農薬
防除作用をもつ微生物を有効成分として利用する農薬。生物農薬の一群。

樹木医の手引き 第4版 p.203 ES版 53頁

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各論 第5章 農薬の適正使用3|樹木の主な病害虫と農薬による防除
A深度III手引き 各論5章・3R3-19A|選択肢別判定型

04病害虫防除とIPM

問題

樹木の病害虫の蔓延を防ぎ、被害を軽減するさまざまな手法が開発されてきた。病害虫の防除方法に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。

  1. 剪定による風通しの改善や土壌耕起などによって病害虫にとって望ましくない環境条件に改変する方法を物理的防除という。
  2. 防除対象の病害虫と競争関係あるいは拮抗関係にある生物種を移入し増殖を促す方法を耕種的防除という。
  3. 育種や形質転換技術によって種特性を改変することで被害を回避・軽減する方法を生物的防除という。
  4. 天然物や化学合成農薬などの化学物質によって病害虫の加害を回避・制御する方法を化学的防除という。
  5. 病害虫を従前の手段で除去することなく生態系の一部として保全・管理していく方法を総合的病害虫管理という。
R3-19手引き 各論5章・3|樹木の主な病害虫と農薬による防除
設問上の正解4

天然物または化学合成農薬などの化学物質で病害虫を回避・制御するのが化学的防除である。

  1. ×
    選択肢1

    剪定による通風改善や土壌耕起は、栽培・管理環境を病害虫に不利に変える耕種的防除である。

    物理的防除は捕殺、遮断、熱、光・色の利用など物理作用を直接使う。
  2. ×
    選択肢2

    競争・拮抗・捕食・寄生などの生物間相互作用を利用する方法は生物的防除である。

    天敵や拮抗微生物の導入・増殖は生物的防除に分類する。
  3. ×
    選択肢3

    育種や形質転換で宿主の抵抗性を高める方法は抵抗性品種の利用であり、天敵を使う生物的防除とは区別する。

    病害虫側ではなく宿主側の遺伝的性質を利用する防除である。
  4. ○
    選択肢4

    天然物由来か化学合成かを問わず、化学物質の作用で病害虫を回避・制御する方法は化学的防除である。

  5. ×
    選択肢5

    IPMは病害虫を単に除去せず保全する考えではなく、発生を監視し複数手段を統合して被害を許容水準以下に管理する。

    防除要否の判断、手段の統合、効果確認を含む管理体系である。
基本解説

防除法は、何を操作して被害を下げるかによって分類する

病害虫防除には、環境や栽培管理を変える方法、物理的に遮断・除去する方法、天敵や拮抗微生物を使う方法、農薬などの化学物質を使う方法、抵抗性品種を使う方法があります。名称を覚えるときは、使う道具ではなく『病害虫・宿主・環境のどこへ働きかけるか』を分類軸にします。剪定は刃物を使っても、通風改善を目的とするなら耕種的防除として扱います。

防除法の整理
防除法働きかける対象例
耕種的防除栽培・管理環境通風を改善する剪定、適正施肥、健全苗、罹病残渣の処理
物理的防除害虫・病原体を物理的に遮断・除去捕殺、ネット、熱、光や色の利用
生物的防除生物間相互作用捕食者、寄生蜂、拮抗微生物、微生物農薬
化学的防除化学物質による生理作用殺虫剤、殺菌剤、天然物由来または合成化学物質
抵抗性利用宿主の遺伝的性質抵抗性品種の選択・育種

IPM(総合的病害虫管理)は、病害虫を一匹・一胞子も残さず除去する考えではありません。発生を監視し、防除が必要な水準かを判断し、複数の方法を組み合わせ、人の健康、環境、生態系、費用への影響を抑えながら被害を許容水準以下へ管理する考え方です。『除去せず保全するだけ』という選択肢5では、監視・判断・統合という核心が抜けます。

樹木医の手引き 第4版 p.203 ES版 53頁

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各論 第5章 農薬の適正使用3|樹木の主な病害虫と農薬による防除
A深度II手引き 各論5章・3R5-09B|全体整理型

05害虫の天敵

問題

捕食者や寄生者などの天敵は害虫の密度を減らすことが期待される。次のうち、害虫の天敵とされているものの組み合わせとして、正しいのはどれか。

  1. ルリチュウレンジ、ハサミムシ、Fusarium属菌
  2. モンクキバチ、ラクダムシ、Raffaelea属菌
  3. オオスカシバ、ゴマフボクトウ、サビマダラオオホソカタムシ
  4. クスサン、オオコクヌスト、クロアリガタバチ
  5. ウバタマコメツキ、ウマノオバチ、Beauveria属菌
R5-09手引き 各論5章・3|樹木の主な病害虫と農薬による防除
設問上の正解5

ウバタマコメツキ、ウマノオバチ、Beauveria属菌はいずれも害虫密度の低下に寄与する天敵側として整理できる。

基本解説

天敵は、捕食者・寄生者・昆虫病原微生物に分ける

整理表
天敵の型本問の例作用
捕食者ウバタマコメツキなど幼虫等が他の昆虫を捕食する。
寄生者・捕食寄生者ウマノオバチ穿孔性昆虫の幼虫などへ産卵し、寄主を死に至らせる。
昆虫病原菌Beauveria属菌体表から感染し、昆虫を発病・死亡させる。
試験で押さえる事項

樹木医の手引き 第4版 p.203 ES版 53頁

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